ー龍達の宴ー

□ー約束ー
1ページ/4ページ

ドラゴンはゆっくりと人間の姿に戻った。

「お前は誰だ」

レバインの声に反応した。

「礼」
「何故そのような名前を知ってる」
「すまない…礼」

傍目から見たら、レバインより年下に見えるが…。

「レバイン!漣だよ。あんたの父さんだよ」

瑠宇の発言に、レバインは目を見開いた。

「なんだと?私の父親は死んだとジュニーから聞いたぞ」
「死んではいない。ただ俺は、200年戦争の後洗礼されたんだよ」
「じゃあ私の母親は?」

漣は瑠宇に例のクリスタルを渡すように言って、彼女はレバインに差し出した。

「美希は、自らクリスタルになったんだ。お前を守るためにな?」

レバインはためらわずにこう言った。

「その力を、和純に使っても構わないか?」
「その理由は?」
「生命力の増幅に使いたい」

すると漣は微笑んでうなずいた。

「もちろん構わない。それと今まで1人にしてすまなかったな?」
「………」

レバインは泣きそうになったがグッと堪えた。

漣は、レバインの肩をポンと叩いた。

「時間はない。だから急いで行け」

そしてレバイン達は、和純の元に向かった。

早速レバインはクリスタルを、和純の胸元にあてた。

クリスタルの波長と和純のオーラが同調していく。まるでクリスタルの光を和純が吸収していく。

「これは、美希とのオーラが完全にシンクロしてるからだ」
「え?」
「和純は、トニー一族、ジュニー一族。ダミアス一族。そしてデーモン一族の血を受け継いでる。だから彼は死んではいない。きっと、今…」


漣が言いかける前にレバインがこう言った。

「黒龍の意識交信を続けている。デーモン一族の波長まで合ってしまったから」

すると雅也が反論した。

「黒龍の性格からしたら、めっちゃ気難しいやっちゃやで?どない意識交信すんねん」
「だが、私の祖父もかなりの気難しさだった。つまり、和純はダークナイトと黒龍のオーラを見て同じ色だと判別した。だからためらわずに、意識交信が出来たのだ」
「それから地上に意識を戻すにはどうしたらいい?」

すると玲奈がこう言った。

「見た人間が納得するまで、意識交信は続きます。お父様もお母様の内層を見たときそう思ったと教えて下さった」
「つまり、和純に何か引っ掛かるものがあるんだな?」
「えぇ」

何に対しても興味を抱かない彼にしては、珍しいことだ。

「和純は優しいから、黒龍すらも…」

突然、純平が入ってきた。

「黒龍すらも、心の鍵を開いた。和純なら分かってくれると」
「じゃあ、彼の本当の正体は…」
「恐らく、酷く傷ついて何か暗い影を持つ人間。まるで、俊也のようにね」
「でも、俊也さんは春代さんがいたから…」
「あぁ俊也の唯一の救いは姉さんだった。黒龍はそれがたまらなく羨ましくて、妬ましくて、悔しかったんだろう」
「だからって殺す必要性はなかった」
「黒龍自身の理性はもう人欠片もない。ずっと闇に浸食されたままだから…」
「どうしてその話に詳しいんですか?純平さん」

すると、純平は雅也の方に向かってこう言った。

「かつての俺は、孤独だった幼い頃の俊也をずっと見捨てた。そして闇に浸食し、染まる彼が怖かった。そして、自分の心の闇が広がるのを感じた。なら一掃俺も闇に染まろうとした時もある。でも、俊也がそれを許してくれなかった。お前を巻き込むほど、依存していないって」
「じゃあ依存してたのは純平さんの方?」
「今となっては分からない。でも和純は、それでも黒龍の本当の気持ちを知りたがっている。かつて俺が俊也にそうしたときのように…」

温和な笑みを浮かべる純平の本当の姿を知った、レバインはただこう言った。

「あんたは、黒龍戦が終わっても報われないのか?」
「かもしれない。それに俺の家内もいない」
「じゃあずっと彷徨ってるのか?」
「そうだね。でもいずれ自分でケリをつける」

すると瑠宇が純平の肩を持ってこう言った。

「あんたのオーラ、和純に似てるよ。暗い影に見える希望の光。ずっと、探し続けていたのだろう」

純平はその言葉に目を見開いた。

「オーラだけでそれが読めるのか?」
「まあな。ずっと孤独だったのはお前の方かもしれない」
「何故それが言える?」
「黒龍の気持ちなど分からんが、奴の気持ちが分かるとしたら、そういうことだ」

純平から笑みが消えた。

「本当は、分かりたくなかった。でも必死で笑顔を装うことに疲れたんだ」
「だってあんたは優しい人間だから」


すると雅也が、和純を見てこう言った。

「和純!!」

固く閉じられた和純の瞳がゆっくりと開けられた。

そこにいた者全員が、彼の方に向いた。

「みんな…」
「待ってたぞ」
「瑠宇…」
「一時はどうなるかって思ったわよ兄さん」
「玲奈…」
「流石俺の見込んだ男や」
「大袈裟だよ雅也」


和純は、ゆっくりと体を起こした。

「心配掛けてごめん…」
「それは別に構わない。ただ1つ聞きたいことがある。和純は、いったいどこに行ってたんだ?」
「意識世界だよ。たくさんの人に会ってきた。でも、もう大丈夫」

するとレバインがこう言った。

「和純、もう一度戦ってくれないか」
「えぇ。そのつもりで目覚めたのですから」








緊急会議が開かれた。

「瑠宇は、空中から黒龍を攻撃すること。出来るだけ的確にな」
「うん」
「雅也と玲奈は、もう一度魔封陣を使ってくれ。なるべく長時間…」
「了解」

レバインは、一度間をおいてこう言った。

「和純」
「はい」
「ジョブカードを見せてくれ」

和純はカードを差し出した。

「レベル85…そんな短時間で?」

そこにいる誰もが驚いた。

「ジョイントするには、バランスを考えなければならない。じいちゃんがそう教えてくれたんです」
「分かった。だがジョイント出来る可能性は0に近い。それに常にトランスもできない」
「…諦めてはだめです。諦めては負けなんです。僕、レバインさんとなら出来る気がする」
「………そうだな。悪かった。その可能性を信じてみようか」
「えぇ」

いつしか戦いの中で彼等は固い絆で結ばれていた。







そして、和純と玲奈は衛と遼のところに行った。

「和純、玲奈…」
「父さん、母さん」
「酷なことばかりさせてすまない」

すると2人は否定した。

「これは僕らに与えられた使命なんだ。だから、それを真っ当するだけです」
「お母様。お父様…。私もう一度頑張ります。雅也君達と共に」
「あぁ、みな無事に帰って来られることを祈っている」
「玲奈、和純、今までごめんなさい。貴方達2人を引き裂く真似をして」
遼も衛もうなだれた。

「お顔をお上げになってください。私は、いえ私達はそんなこと気にしてなどいません。だけど、そんな顔されると切なくなります」
「僕達は確かに離れ離れになってた。でも、これからは力を合わせるよ。お母さん、僕らを生んでくれてありがとう。お父さん、今までずっとありがとう」
「あぁ、俺達もお前達が自分の子供であることを誇りに思うよ。だから、これからもよろしくな」「はい!!」





一方雅也は、幸次と景にこう言った。

「親父に言うんは、ちょっと恥ずかしいんやけど…」
「何やねん。はよ言えや」
「俺、この戦い終わったら、玲奈ちゃんのサポーターになるんや」
「じゃあ王位は継がんねんな?」

2人は暫くお互い視線を交わす。

そして雅也が、口を開いた。

「そや、だから景に継がせて?」
「お兄ちゃん!そんなこと急に言われても…」
「めちゃめちゃ急な話やな。でもそれは正気なんか?雅也」
「至極正気や。俺に王位なんか似合わん。せやから、景、頼んだで?親父のこと」
「………」
「ほんまにそれでえぇんか?」
「それでえぇから話しとるんや。じゃあな。景、親父とおふくろのこと頼んだで」

うつむく景を雅也は抱き締めた。

「お兄ちゃん…」
「酷なこと頼んでるようやけど、あんたならできる。俺は信じてるで」


雅也はそう言うと、景を離して足早に去った。

「ほんまあいつ誰に似たんやろ」
「お父さんだよきっと」




そして、5人は城を出て、玄関口で円陣を組んだ。

「今回で5人一緒に戦うのは最後かもしれん。でも俺は、夢叶えるために、戦うで!!」
「私もよ」
「平和になったら、またみんなで会おう!!」


すると、レバインが玲奈にこう言った。

「玲奈・・・」
「はい?」
「雅也を頼んだ。後・・・血筋を軽蔑してすまなかった」

玲奈は、微笑んで顔を横に振った。

「いいえ。私こそ、敬遠してごめんなさい。今はちゃんと仲間だって思います」
「ありがとう。そして和純」
「はい」

2人は瞳が合った。

「平和になったら。間違なく私は断罪の旅に行く。けどその旅を終えたら、もう一度勝負をしてくれないか?」
「はい。望むところです」



5人は離れて、白百合の花畑へ瞬間移動をした。





白百合の花畑に君臨する黒龍は、以前にも増して巨大化していた。

だが誰1人臆することなく突進んで身構えた。


「遅かったな。怖気づいて逃げ出したかと思ったぞ」
「ふふふ。逃げるにも逃げ出せない状況ですから」

和純は絶対不利の中不敵な笑みを浮かべている。

「そうか、死ぬためにここにわざわざ来たのか。気でも狂ったのかな?」
「違うで!」


雅也はそう言うと、巨大な魔封陣を描いた。

「私達の平和を、力ずくで貴方から取り戻しに来たのよ」

玲奈は、指を鳴らせた。

「瑠宇、和純、レバインあとは頼んだで!!」



玲奈と雅也の2人は、白百合の花畑の敷地全部を囲う巨大な魔封陣を発生させた。

その間に瑠宇は、トランスするため空中に浮かび上がった。

黒龍はわずかな隙を狙って、瑠宇のみ『超・重力』を放った。

しかし。レバインがその技を封じた。

「何?」
「お前の手なら、読めるぞ!!」
「ならこれはどうかな」

黒龍は、『ダークマグニチュード』を唱えた。

見る見るうちに、大地が揺れ上がり、亀裂は和純達に襲い掛かる。

すると、雅也と玲奈が同時に『魔封殺』を唱えて阻止した。

黒龍は、一度立ち止まった。

「攻撃を封じたところで貴様らの勝ち目はない」
「それはどうかな?」

黒龍の背後に純平がいた。

「純平さん!!」
「和純、レバイン、いまこそあの技を!!」
『はい』

2人は眼を閉じた。


黒龍は、空中を舞い上がり、瑠宇に攻撃した。


だが、瑠宇はすでにトランスして銀龍になった。

(ここで負けるわけにはいかない!!)

黒龍は容赦なく瑠宇に暗黒玉を放射する。

瑠宇は、瞬時に交わしていく。

しかし、その瞬間だった。黒龍の瞳が血の色に滲み、辺りがさらに闇夜に包まれた。

通常の龍だと即死する霊気に、瑠宇は懸命に耐えていた。


上空の状態を見た地上にある和純はジョイントを諦めて、レバインにある提案を出した。

「紅龍になって、瑠宇を助けに行ってください」
「だが、私はまだ不完全だぞ?」
「今は瑠宇を助けるのが、先決です」
「だが、戦力は大幅にダウンする」
「確かにそうかもしれません。けど瑠宇を助けるのが優先です」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ