ー龍達の宴ー

□ー迫る闇の世界ー
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決戦の朝が来た。

雅也と玲奈は、朝早くから、魔方陣の練習をしていた。

「ふぅ〜やっと30分ぐらい保てるようになったなあ。最初はどないなるかと思ったけど」
「えぇ。でも黒龍戦が長引けば長引くほどこちらが不利になるわ…」
「俺らにできるんは、いかに和純達を戦いに集中できる状況を作ることのみや。後はあいつらに任せよ」
「そうね」


一方、和純とレバインは未だにジョイントが出来ていなかった。

「まずい…。ジョイントが勝機は見えてこないのに」
「最後まであきらめずにしましょう」
「そうだな」

2人は再び目を閉じた。

また衛と遼とカールは、それぞれのエリアの逃げ遅れた国民のために緊急用ボードを提供した。


一方ジュニーは純平と瑠宇にバルコニーで、別れの言葉をいち早く言った。

「私は平和になれば、この世を去る。それに純平も元の世界に戻ってしまう。だからこそ2人に言っておきたいことがある」
「それなら和純達を呼ばなくちゃ」
「いやいいんだ。あの子達には最後の最後に言うから」


ジュニーは瑠宇の目を見ながら言った。

「瑠宇、今までありがとう。お前なしでは私達四龍は生きていけなかった」
「大袈裟だそれは」
「いや、お前の笑顔に何度も助けられた。誘拐された身だと知ってたとしてもレバインにも変わらず接してくれた。それだけで嬉しかった」
「ジュニー…」
「だから、平和になったらお前の行きたい道に行きなさい。龍として生きるのもよし、ネウロ王女として生きるのもよし」
瑠宇は恐る恐るこう言った。

「和純と結婚してもいいか?」
「あぁ、構わない。ただしレバインは反対するだろうね。後、純平」
「はい」

2人はお互いの顔を見た。

「お前まで巻き込んでしまったことを申し訳なく思う。それと、あの口も態度も悪くて鉄仮面で気難しい俊也と本当の双子として接してくれてありがとう。あの子もきっとそう言いたかったに違いない。でも、私が代わりに言う」

純平は不意に涙ぐんだ。

「ジュニーさん…」
「お前もれっきとした私の曾孫だ。お前はちゃんと言ってくれるよな?」
「えぇ、ひいじ……」
「ひいじ?」
「ひいじいちゃん、ごめん。俺も俊也みたいにひいじじいって言いたかった。なんでもっと早くにあなたが俺をこの世界に送ってくれなかったんですか?俺だって俊也と…話がしたかった!!」

純平は手をついて、大粒の涙を流した。

「本当なら、俺達は1000年前、姉さんがいたあの平和な時期で一緒にこの城に仕えていた身だった…」
「やむを得なかった。今はそう言うしかない」
「俺の世代もう誰もいないよ…」
「純平…」

ジュニーは彼を抱き締めた。

「どうして。大切なものばかり失ってしまうんだろう。姉さんだって俊也だって…」
「それは私も一緒だ。でもお前には帰りを待つ人がいるのだろう」
「でも……」
「悲しいのはみんな一緒だ。だが時間が癒してくれる」
「そんなの分からない…」

すると瑠宇が彼の顔を見た。

「本当、和純にそっくりだな。そういうところ」
「和純は俊也の孫だぞ?」
「と同時に春代さんの孫だろ?そりゃあんたと春代さんは双子だし似ててもおかしくない。だから、和純と純平さんは似ている」

すると、ジュニーは彼の腕の印を見た。

「純平、どうか最後まで協力してくれ。私の印を持つのはお前しかいないから」
「………」
「和純達に万が一のことがあったら、お前が平和か滅亡かを選べ。そして滅亡を選んだ場合、俊也達が待っている。平和を選んだ場合、お前は黒龍と対峙せねばならん」
「俺は…」







一方、黒龍は白百合の花畑で遅い時間に起きた。

「ふふふ。ふははははは!!もうすぐ俺様の望んだ暗黒に包まれた世界が生まれる。例え、誰がこの俺様の野望を阻んだとしてもだ!!」

黒龍は盛大に笑う。

その度に、彼に捕らえられた雅也の妹の景達は怯えるのだ。

「はははは!!怯えるがいい。助けを呼ぶがいい。だが。この俺様に敵う人間など皆無に等しい」

(兄さん…助けて!!このドラゴン本当に世界を滅ぼす気だよ)

すると、バルコニーにいた雅也が景の意識交信を受け取った。

「玲奈ちゃん行こう」
「でもみんなが揃うまでは…」
「とにかく俺の妹を助けたいんや。頼む」
「分かったわ。みんなに言ってもいい?」
「うーん。あんさんの自由にし」

雅也はそう言うとすぐにテレポートした。

相変わらず白百合の花畑の周りに強いバリアが張られている。

雅也は洞窟前にいる景を見つけた。

「景!!」
「兄さん…助けて…」
「今助けたるから、辛抱して」

するとその声に気付いた黒龍は雅也に近付いた。

「ふ、案外早くに来たな。まさかお前はトニー一族か?」
「なんでそないなこと知ってるんや」
「微かに意識交信の声が聞こえた。どうやら、図星のようだな」
「く…。俺の妹に何かしたらただじゃすまさへん!!」

雅也はものすごい眼力で黒龍をにらんだ。

「まあそう焦るな。一般人には危害は加えない。俺の目的はジュニー王族全てを抹殺し、この世界を支配することだ。俺様の言うことを聞くのなら、お前達トニー王族には何も危害は加えん」
「つまり、あんたは和純とレバインをターゲットにしてるんやな。あいにくあいつらは今で何してるか分からんわ」
「ふ。ただし和純は俺様との約束を果たすために、ここに来る。そしたらこのバリアを解いて、この娘達を解放しよう」

すると、和純達が雅也のもとに駆け付けた。

「雅也、景さんは?」
「今、囚われてる。でもなんとか無事そう」
「それは良かった」

和純はそう言うと、黒龍と目があった。

「約束を守ったことは褒めてやろう。ただしお前は本当に馬鹿な人間だ」
「どうして?」
「約束を守る。つまり自分から死に行くためにここに来た。俺様と手を組めば誰にも貶められない、軽蔑されない。なぜ対峙する方法を選んだ?」

和純は冷静にこう言った。

「僕は、誰かのものじゃない。僕は僕なんだ。だから、そんな安直な話に乗りません」
「安直だと!?1000年前以上も悲願していた真の闇の世界の誕生をデーモン一族の血を引くお前には、喜ばしくないのか?」

和純は今までで一番怜悧な瞳を向けて、こう言った。

「残念ながら、僕はそう思いません。僕は瑠宇や雅也、そして玲奈やレバインさんがいれば、他は何も望みません」

するとレバインがこう加えた。

「確かにデーモン一族はあんたみたいな残酷な性格をした輩もいる。だが、祖父、遼達は確かに残忍なことをしたかもしれない。だけど本当は、とても優しくて繊細な人間だ」
「はははは!!だが、和純はデーモン一族の血をまっすぐに受け継いだ、黒龍としてふさわしい力をも持っている」

すると、雅也がこう反論した。

「血筋なんか関係あらへん。和純は確かに闇人格に変わることもある。でも和純は、俺らにとって掛け替えのない存在や。やから、闇なんかに支配されへん。例えあんたが和純をマインドコントロールしても、俺らが力ずくで戻したる!!」
「ほほう。愚かな人間共よ。この俺様を目の前にしてまだそんな口が利けるのか」

黒龍の笑いが消えた。

その一瞬で、結界外の重力が2倍の比重まで上がった。

玲奈、和純以外のメンバーはその重力に苦しみ倒れこんだ。

「な・・・なんやこの重力は。動かれへん!!」
「み、みんな!!」
「か・・和純」
「瑠宇!」

すると、背後から黒龍は和純の首筋を掴んだ。

「・・・何をするつもりですか」
「俺様に従わないなら、お前は用なしだ。いまここで死んでもらおうか?」
「和純!!」

瑠宇が叫ぶと、黒龍は彼の胸元に自分の鋭利な爪を向けた。

「おっと、お前は重力が効かなかったかったな。ははは。だが、これ以上動くとこいつの命はひとたまりもない」

瑠宇は、憤怒の表情を露にした。

「ふふふ。怒りに任せて俺様を攻撃した場合、こいつまで道連れにするぞ?それでもいいのか」
「く・・・」
「瑠宇!」
「和純」
「な・・・なに?」
「攻撃当たったらごめん」
「まさか、俺様の忠告を無視する気か?」

黒龍は、さらに彼の首筋をきつく締め出した。

「瑠宇!君次第だから早く!!」

和純はありったけの力で叫んだ。

瑠宇はいったん後ろに下がった。

「雅也!玲奈!あの技を!!」
「・・・分かった。瑠宇は和純を頼んだで!」
「うん!!」

雅也は、魔法解除をしてから、玲奈と魔法陣を唱えた。

『『魔方陣・闇包み!!』」

2人の声がシンクロした瞬間、結界が消えて、白百合の花畑に巨大な魔方陣が現れた。

「今だ!!瑠宇」

瑠宇はレバインと同時に瞬間移動して、ある技を唱えた。

「『ミラージュイリュ―ジョン』」

その瞬間、2人が消えた。

しかし、黒龍は影包みで2人を地面に突き落とした。

衝撃が強すぎたのが、2人とも気絶している。

「残念だったな」
「く・・・」
「言っておくが、貴様らの技など俺様にとっては赤子同然。痛くも痒くもないわ!!」
「瑠宇、レバインさんっ!!」
「残念だったな。貴様の命綱は今途絶えた」

(僕は平和にすることは愚か大切な人さえも救えないのか)

和純はうなだれた。

「ははは!!絶望に満ちた瞳は俺様の大好物だ。そのまま死ぬがいい!!」

黒龍は、和純の心臓を貫こうとした、その矢先


『『真・ダブルレイブン・ブレイク』!!」

あまりにも強烈な2つの閃光に、黒龍はひるんだ。

その隙に、和純は黒龍から離れた。

「お父さん!お母さん!!」

そこには武装した、衛と遼の姿があった。

「和純、大丈夫か?」
「僕は平気。けど・・・」
「大丈夫、礼も瑠宇ちゃんも簡単にくたばる人間じゃないから」

すると、瓦礫から2人が起き上がった。

「流石、黒龍・・・」
「だが、私達には大きな希望がある」
「その希望さえ、絶望に変えてやるわ!!」

黒龍は暗黒球をランダムに投げ出した。

最悪なことに魔方陣を唱えてる雅也達に直撃した。

その瞬間魔方陣が消えかかっていた。

「玲奈!!そんな暗黒球消してしまいなさい!!」
「は・・・はい!!」

玲奈は『暗黒魔法魔封殺』を高速で放った。

すると、膨大な数の暗黒球が一瞬にして消えた。

「俺様の暗黒球を一瞬にして消すとは、お前まさか同じ一族じゃ・・・!!」
「その通りよ。でも、私もあなたには従わない」
「えぇい!!生意気なことをほざいて!!」

黒龍は玲奈めがけて『ギガ・アルテマ』を放った。



その瞬間だった。

雅也が玲奈を瞬時に突き飛ばして、身代わりとなった。

「雅くん!!」

雅也は大量の血を流して、倒れた。

「・・・だ・・・大丈夫か?玲奈ちゃん」
「大丈夫って、雅くん、どうして!!」
「あんさんのためやったら、命を懸けて守る。そう約束したやん」
「でも!!」
「玲奈ちゃん、時間があらへん・・・。俺のことはええから、和純ら頼んだで?」
「いや・・・」
「頼む!!あんたの兄ちゃんやん。だから、はよ・・・」

玲奈は、雅也の手を握ってからこう言った。

「ちゃんとがんばるから、雅くんも死なないで!!」
「分かった。がんばるわ・・・」

玲奈は、雅也の手を離した。

雅也は、目を閉じた。

そして、黒龍にこう言い放った。

「あなたは私の大切なものまで奪った。どうして、こうも酷いことを平気でするのよ!!」
「お前達が俺様の野望を阻むからだ!!」
「野望、ふざけるんじゃないわよ!!こんなの・・ひどすぎる!!」
「時期に、お前もあの男の元へ連れて行ってやろう。あの世という世界にな」

玲奈は、自分の右耳にしていた制御ピアスを外した。

「兄さん」
「何をする気なの?玲奈」
「訳は聞かないで、兄さんもピアスを外して」
「う・・・うん」

和純もピアスを外した。

その瞬間だった。

和純と玲奈が同時にトランスしたのだ。

誰もがその光景に驚いた。

なぜなら、2人は完全に違う属性なのに、オーラの色が全く同じ銀色だったのだ。

しかし、玲奈に異変が起こった。

彼女のオーラだけ、急速に弱まって消えたのだ。

「トランスミスか。馬鹿な娘だ。お前の本来の力は闇だというのに、トランスだと聖属性だから相殺されてしまう。とんだ計算間違いだったな」
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