ー宿命ー

□番外編・曼珠沙華の君
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田所俊也。

彼の名前だ。

息子の漣に、『断罪の旅』へ行くように命じられた。

断罪の旅。それは許せない罪を犯した場合、自己の意志で単身で旅立つことだ。


俊也は旅の前日に純平からバルコニーに来るようにと呼び出された。

「………」
「俊也」
「何か用か?手短に話せ」
「ジパングに帰るなら会ってほしい人がいる」
「あいつか?」

純平は否定した。

「いや、瀬川さんだよ。桜蘭の隣り町の港川にいる瀬川俊也」
「誰だよそれ」
「話せば長くなる。とにかくそこに行ってくれ」
「………」
「やはり無理かな?」
「いや、構わない。ただ彼の職業を教えてくれ」
「見合い企業の社長。まあ今で言うと婚活のプロデューサー。ちなみに彼は俺達よりも3才年上」「性格は?」
「温厚で人当たりがいいよ」
「俺とは全く逆の性質を持つ人間なんだな」
「名前は一緒だけどね。俺から言えることはそれだけだから」
「…礼を言う」

俊也は、バルコニーから自分の部屋に戻り荷造りをした。







そして、俊也は翌朝、朝早くにジパング行きの空港に行った。

そこには、純平や春代達もいた。

「いってらっしゃい」
「純平、淳希、春代と漣を頼む」
「あぁ、俊也も気をつけて行けよ」
「…分かった」


入り口ゲートで俊也は春代にこう言った。

「しばらく長旅になる。寂しくなったら連絡してくれ」
「うん」

俊也達は短いキスをして別れた。







飛行機が離陸してから6時間後に港川空港に着いた。


俊也は純平から渡してもらった地図を当てにして瀬川の会社に向かった。
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