ー宿命ー

□2人の過去
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春代と俊也はミステリーサークルの中で1000年後に行くはずだった。

しかし、時空の歪みにより、2人は思わぬ時代に行ってしまった。

「きゃあああああ!!」

春代の悲鳴とともに2人は、なんとあの25年前にスリップしてしまった。

辺りは夕暮れだった。子供達が下校してゆく。

春代と俊也は桜蘭通りの河川敷に着いた。

「えっと…携帯携帯っと」

春代は携帯のディスプレイを見た。

「俊也…25年前の年数になってる」
「マジかよ。これって時空移動失敗したのか?」
「うん…。とにかくここはクリスタルキングダムじゃないのは確かだわ」「まあな。てことは…」「桜蘭通りの高架下」

春代は何かを思い出した。

「まさか私達が初めて出会った場所に飛ばされたわけ?」
「25年前、そして河川敷…」

すると、河川敷で熱心に漫才する2人組の子供達が見えた。

1人は短髪の男の子でセーターのズボンを履いている。

もう1人はセミロングの髪型の女の子で、セーターとスカートを履いている。

どうやら彼等は何かで口論してるらしい。

「お前なぁ、セリフ噛み過ぎなんだよぉ〜」
「あっちゃんのネタ帳の台本早口言葉ばっかりじゃないの〜」
「その方が、簡単だろ?なんならボケとツッコミ変えるか?お春」
「やだやだ…あっちゃんの方がボケなの」

春代は思わずこう叫んだ。

「お春!?」

すると2人は春代の方を振り返った。

俊也は慌てて春代を隠した。

そしてこそこそ話でこう言った。

「馬鹿。お前、気付かれてたら完全不審者だろ」
「ごめん。お春っていうの言葉が懐かしくて…」
「てことは、あの2人は幼き日の春代と淳希になるのか?」
「うん。本当、あのネタ帳の早口言葉は高レベルで…小学2年生では言えないのでさ…それをツッコミが指摘すんのよ」
「へぇ、てことは間も無く昔の俺もここに?」
「うん…とにかく黙っていよう」
「あぁ…」

2人はそのまま、動かなかった。

すると集団が一人の男の子を取り囲んで、いじめていた。

いじめられている方の男の子は髪の毛がボサボサで顔が前髪で見えない。

「お前の赤い赤い目は化け物の目だろ〜」
「可哀相に〜。眼鏡がなけりゃだめなのかぁ〜」
「やめてよ。そんなの迷信だし。返して、これは大事な眼鏡なの!!」

すると大将らしき子供がこう言った。

「じゃあこれをとってみなよ〜」

するとそいつは眼鏡を投げた。

偶然、その眼鏡が俊也に当たった。

「痛っ。ってこれ昔俺がしてた眼鏡…。ということはあのいじめられっ子が…」
「昔の俊也ね。というより、眼鏡返してあげなきゃ…」


すると漫才してた2人が、春代達にこう言った。

「お姉さん達、何してるの?」
「まさか…俺達のネタパクるために来たの?」

すると、春代はこう言った。

「違うわよ。とにかくこの眼鏡預かってくれないかな君達」
「誰の眼鏡?」
「その持ち主がもうじき来るよ。それより君達はなんで漫才をしてたの?」

すると男の子がこう言った。

「明日のお楽しみ会。というより転校生の歓迎会。お姉さん達は?」
「えっと…いまから帰るところよ。邪魔して悪かったわね?」

すると女の子がこう言った。

「お姉さん、私とそっくり!!」

すると男の子までこう言った。

「まさか春代のお姉さんとか?」
「ううん。私ひとりっこだもん」

(淳希…私のとなりにいるその女の子の未来の姿なんだけど…)

突っ込みたい気持ちを敢えて抑えて、春代はこう言った。

「世界に3人は自分と顔が同じ人がいるの。多分その部類よ。分からなかったらママやパパに聞きなさい」
「はあい」
「じゃあ、その眼鏡ちゃんと預かってね?」
「うん」

女の子がそう言うと、俊也達はいったん彼等から離れた場所に行った。

するともう1人の男の子が、走っていくのを2人は見た。


そしてあの子供達の女の子が、眼鏡を持ってその子を追いかけた。

「もしかして君の眼鏡?」
「え?」

男の子は走るのをやめて女の子の方に向いた。

「分厚い眼鏡だね」
「ほっといて」
「ごめん」

すると男の子は、女の子から無理矢理、眼鏡を奪った。

「じゃあ」

男の子は去ろうとしたとき、女の子は手を掴んだ。

「何?」
「待って。なんでそんなに綺麗な瞳をしてるのに、眼鏡で隠すの?」
「もののけの瞳だから。赤い目は化け物の目だから。君には関係ない」
「ルビーみたいな綺麗な瞳だよ。それになんでそんな悲しい瞳なの?」
「関係ないよ!!もうほっといてくれない?君はボクの何を知ってる?まだ会ったばかりでしょ?」
「これから知ればいいじゃん」
「もう会わないから」
「それは知らないけど…」

すると女の子の方の相方の男の子が追いかけてきた。

「お春、ネタ練習はどうするんだよ」
「ごめん。いま、この子と話してる」
「確か…明日来る転校生だよな?」

するともう1人の男の子は驚いてこう言った。

「なんで、そんなこと知ってるのさ!?」
「パパの親戚のおじさんが君の名簿を持ってきてたから。たまたま見たわけ。にしてもなんだこの髪の毛…ボサボサすぎるぜ」
「うるさいな」
「お春。櫛でとかしてやれよ」
「うん…その前に君の名前を聞かせて?私達が通う転校生になるみたいだから」
「確か君らの学校にいる、『田所純平』がいるだろ?」
「純平君のこと知ってるんだぁ。もしかしてお友達?」

女の子の方がそう言うと、長い髪の男の子は首を横に振った。

「ボクらは双子。そしてボクの名前は『田所俊也』で純平の兄になるよ」
「でも、なんで今まで同じ学校にいなかったの?」
「ボク、帰国子女だから」
「まさか外国の小学校行ってたの?」
「そう言うこと」
「なぁんだ。そっか」

すると女の子はボサボサの男の子の髪を櫛でとかしてやった。

すると見違える程、綺麗なキューティクルができた。

またそれによって、男の子の顔がはっきりと見えた。

「純平君よりも綺麗だよ」
「そうか?」
「あいつもクラス1のモテる男子だけどな。お前ら本当に美形でムカつくなぁ」

すると女の子の方が短髪の男の子にこう言った。

「あっちゃんは僻みすぎなの!!」
「だってさぁ。バレンタインデーチョコだって、俺はお春しかもらわないぜ?それに比べて純平君は、女子ほとんどにもらうんだぜ」

すると、長髪の男の子がこう言った。

「1個もらえるだけ羨ましいじゃない」
「え?俊也君はもらったことないの?」
「うん。全然もらえない」
「そりゃ、あの髪ボサボサに、眼鏡だろ?無理無理。ルックスがなけりゃモテないの」
「そんなことないよ。だってあっちゃんもルックスは中の下だけど、もらえてるし」
「そりゃお前の美的センスはマイナスがつくほどないしなぁ。はぁあ…今年もバレンタインチョコは1つ」

すると長髪の男の子がこう言った。

「2人とも仲がいいんだね」
「そう?」
「羨ましいなぁ。ボクさぁ友達がいないんだ。さっきだってこの瞳のせいでいじめられたし…」

すると女の子は男の子の手を両手で握ってこう言った。

「大丈夫。今日から私達が俊也君のお友達になるから」
「いいの?」
「いいよ。ね?あっちゃん」
「いいよ。じゃあ3人で家帰ろうか」
「でも…」
「帰る道とか違うの?」
「ううん。今日1人で帰国したから…家が分からないんだ」

長い髪の男の子がそう言うと、女の子がこう言った。

「俊也君って純平君と双子なんでしょ?だったら純平君の家を案内するよ」
「ありがとう…えっと君達の名前は?」

長い髪の男の子がそう言うと短髪の男の子がこう言った。

「俺は中川淳希、こいつは徳川春代」
「じゃあ淳希くんと春代さんって呼べばいいのかな?」
「うん。さて夕日も沈んだし早く帰らなきゃ」
「うん!!」

3人はすぐに純平の家に向かった。

春代達は密かに跡をつけた。

「春代さんって呼んだの純平だけかと思ったわ」「昔のことなんか、ほとんど忘れた」
「にしても淳希は昔から変わってないなぁ」
「俺は残酷なほどに変わってけどな」
「まあね。でも根本的な性格は変わらないわよ」

すると、長い髪の男の子が春代達に向かってきた。

「さっきからなんなんですか?ストーカーは1人でも充分なのに、不愉快この上ない。用があるなら早く言ってください。そうでなければ、早く消えてください」

男の子が不機嫌そうに、そう言うと、女の子がこう言った。

「この人達は悪い人じゃないよ。俊也君の眼鏡を拾ったのはこの人達だから」
「………」
「ほら、行こうよ」
「待って。とにかく名前だけでも聞かなくっちゃ」

女の子は短髪の男の子の方に行ってしまった。

すると俊也はこう言った。

「お前は非科学的なことを信じるか?」
「はぁ?」
「小学2年生じゃ分からないよな」
「馬鹿にしないでください。えっと…魔法とかそう言うもの?」
「まぁ、そうだな。もしも魔法が存在するとしたら、お前は信じるか?」
「信じるもなにも、ボク使えるんですけど」
「言ってみたらどうだ?」
「テレポート」
「なるほど。じゃあ時空移動は知ってるか」
「うん。タイムスリップのことでしょ。でも、なんでこんなこと聞くんですか?」

長い髪の男の子がそう言うと、春代がこう言った。

「私達は、そのタイムスリップでこの時代に来た人間なの」
「ということは…何年か前の時代の人なの?」
「その逆よ。私はここの25年後の未来から来た人間よ。多分名前を聞いたらびっくりするわよ」
「多少のことなら驚きませんよ」
「じゃあ言うわね。私は、あの女の子の25年後の姿なの」
「ということは…春代さん?」
「そう。私は徳川春代」「あんまり変わってない」
「悪かったわね」
「で、そっちの人は?」
男の子がそう言うと、俊也はこう言った。

「お前だよ」
「は?ボク?」
「25年後のお前」
「でも、瞳の色が違いますよ?」
「細かいことは気にするな。俺達の言いたかったことはとりあえずそれだけだ。このことは誰にも言うなよ?」
「うん。じゃあさようなら」

長い髪の男の子は、足早に去っていった。

「にしても、あの頃の俊也って可愛い」
「はぁ?お前なんか変わってねぇだとさ」
「しょうがないじゃない。童顔なんだから。で、とりあえず今日はどこに泊まるの?」
「空き地がある」
「まさか野宿?」
「お前の『具現化』で一軒家を建てろ」
「だめだよ。空き地だとしても工事予定があるかもよ」
「いや、あそこはだれも使わない土地なんだ」
「分かったわ」

そこはなんと純平の家の隣りであった。

「こんな偶然もあるんだな。よし、春代描いてくれ」
「いいのかな…本当に」
「拠点となるんだから、なるべく立派にしてくれよ」
「分かった」

春代はすぐにスケッチブックに思い描いた一軒家を描いた。

すると2階建ての可愛らしい家が建った。

「あと、家具とかどうする」
「描けるものだけ、描いてくれよ」

俊也はそう言うと、春代は描けるものだけ一気に描いて、一軒家の室内に置いた。

「素晴らしいな」
「でも高熱費とか、電気代、水道代はどうするの?」
「俺達の財産でやりくりする」
「なるほど。ここなら、あの男の子の様子も見られるしね」
「まあな。あ、帰ってきた」

子供達が帰ってきた。
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