ー龍達の宴ー

□―再会・そしてクリスタルの謎―
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そして、和純は衛にこう言った。

「僕、お母さんに会いに行くよ」
「なんだって?一度もそんなこと言わなかったじゃないか」

衛は驚きを隠しきれない様子だ。

「ごめんなさい。でも行かなければ真相が分からないんだ」
「待て。闇の世界に行くには、まだお前は勉強不足だろ。生半可な知識であの世界に行ってはならない」
「お父さん…。どこのどの本に闇の世界の話が書いてあるの?」
「クリスタル国立図書館。今透さんが司書をしている」
「城務科担当の中川先生やな」
「そうだな。今度雅也くんと行きなさい」

「私は…」

ふと、瑠宇がそう聞くと衛はこう答えた。

「瑠宇ちゃんは、まだ字が読めないだろ?」
「そうだな。その間にドラゴンを呼び寄せる」
「ありがとう。和純、後で王室に来なさい」
「はい」

瑠宇は足早と聖龍の方へ向かった。

『行くのか?』
「行く。世界中のドラゴンを呼び寄せるためにな」

瑠宇はそう言うと、聖龍の背中に乗った。

そして、聖龍は空高く羽ばたいた。



一方、和純と雅也はクリスタルキャッスルの真南にあるクリスタル国立図書館に向かってる途中だった。

「今まで言わんかったん?」

雅也がそう言うと和純は頷いた。

「まぁあんたの性格上無理かぁ」
「うん。会いたいとはあまり思わなかったから」
「なんで?」
「お母さんがいない環境で育ってきたから…」
「可哀相にな…」
「可哀相?仕方ないじゃない。ある事情によってお母さんはいないのだから」

雅也は和純の肩に手をおいてこう言った。

「そっかぁ。和純からしたらおかんは最初からおらんもんなんやな」
「でも、最近お母さんの夢を見るんだ」
「暗黒龍の夢か?」
「雅也も見たの?」
「そうや。どうやらレッドドラゴンガーディアンズのけがあるみたいやわ。俺」
「なるほど。じゃあ後1人の子も見たかもしれない」
「やろな。あっ…ここが国立図書館や」

2人はクリスタル国立図書館に着いた。

そして扉を開けた。

そこには棗がいた。

「よ!オバケ。部長」
「こんにちは。バーベラさん」
「今日は何の用だ?」

すると和純は、眼鏡を外してこう言った。

「闇の世界の本を貸して欲しいんです」

棗は和純を見た。

「オバケ、お前それ本気か?」

彼女がそう聞くと、和純は頷いた。

「はい。この世界は間も無く破滅へと向かっています。現に黒龍が蘇ったから…」

棗は、雅也にこう言った。

「あれは、あいつの素顔だよな?」
「そうやで?美形すぎてびっくりした?」
「違う。あいつの言葉にびっくりしたんだ。顔はなかなかの美男だがな」

すると2階から、操が降りてきた。

「棗、例の本を」

すると棗は2階の倉庫に向かった。

その間、操は雅也と和純をソファに座らせて、紅茶を出した。

「初めまして、操さん」
「こちらこそ。あんたは…」
「佐伯和純です。門谷衛の息子です」
「あぁ、衛の息子かぁ。あの時は世話になったと言っておいてくれ」
「あの時?」
「あの時と言えば分かる。それと雅也、どうしてこいつと知り合った」

すると雅也はこう言った。

「和純が学校の図書館で本を探していた時、偶然ぶつかったんや。にしてもこの紅茶うまいわぁ」
「まあな。で、和純。雅也。あんたらは、闇の世界へ向かうのか?」


すると和純はすぐに頷いた。

「あそこは、言わば死の世界だ。生半可な気持ちで行くならやめることだな」
「行ったことあるんですか?」
「何度かな…。それに和純はともかく、雅也は聖属性だからあの世界は行けないはずだろ?」
「ちゃうで。俺は無属性に位置するんや。闇の世界の波動には一切影響がないんよ。でも和純は…」

和純はこう言った。

「僕は闇属性も聖属性もあるよ。だから、闇属性になって向こうへ行く」
「そうか。まぁとにかく、あの城にいるリトルミスティレディには気をつけろ」
「リトルミスティレディ?」
「デーモンキャッスルにいる黒装束の女だ。あいつは闇魔法の使い手だし、剣術にも優れてる」
「なるほど…」
すると棗が『闇の世界』の本を持ってきた。

そして和純に手渡した。

「私は行けないが、気をつけて」
「ありがとうバーベラさん」

「操さん、僕達すぐに帰らなきゃいけないから、帰りますね」
「分かった。困ったことや調べたいことがあったらすぐにここに来いよ」
「ありがとうございます。お邪魔しました」

和純はそう言うと、雅也とクリスタルキャッスルに戻った。










そしてその1週間後の満月の夜。

和純は衛を呼び出した。

2人はバルコニーに出て話すことにした。

「お父さん」
「どうした?和純」

すると和純はこう言った。

「僕やっぱり、闇の世界に行くよ」
「遼に会いに行くのか?」
「はい。あの夢の真意を聞きたいから」
「暗黒龍君臨の夢か。雅也くんから聞いた」

すると衛は、和純にクリスタルスピアを渡した。

「これは…」
「クリスタルスピア。元々は龍使い達の者だったんだが…」
「瑠宇に渡せば良かったのに」
「彼女は女の子だ。そんな重いもの持てない」
「でもどうして僕に?」
「お前は、聖龍騎士の素質があるから」

すると、和純は顔を横に振って否定した。

「僕は吟遊詩人だ。それにナイトの素質なんかない」
「いや、毎日見てたさ。お前の掃除する姿」

和純は急に顔を赤らめた。

「この城の敷地は馬鹿でかい。それに掃除夫はお前だけだ。それを毎日欠かさずに続けてるし…」
「スタミナがあるからですか?」
「そうだよ。聖龍騎士は、魔法以外にも龍を操らなきゃならんから根気もいる。だからお前はその素質があるんだよ」
「なるほど…」

すると衛は急に真剣な顔をしてこう言った。

「遼を頼んだぞ」
「はい…」
「それと玲奈が心配だ」
「玲奈?」

和純は首をかしげた。

「お前の実の双子の妹だ」
「なんだって!?僕ひとりっこじゃなかったの」
「黙ってて悪かったな。お前によく似た闇属性の娘だ。いま遼といる」
「ということは、その子がリトルミスティレディなの?」
「そうだ。しかし何故リトルミスティレディの存在を知っている?」
「1週間前、国立図書館で操さんに会ったの。そのときリトルミスティレディの話をされたから」
「そういうことか・・・。もしかしたら、対峙するかもしれないな」
「戦うってこと?」
「そうだ。雅也くんがいるから心配ないと思うけど・・・」
「・・・」

すると、雅也がバルコニーに来てこう言った。

「玲奈ちゃんなら、俺が知ってるで」
「雅也?」
「毎日、意識交信してたからな。まさか玲奈ちゃんの兄貴があんたやとは思わんかった」
「玲奈は僕のこと知ってる?」
「いや、あんたと同じ全く知らんみたい」
「じゃあ、出会ったら戦わなくちゃならないかな・・・」
「それもあるかもな」
「妹かぁ・・・」
「そやな。そろそろ、寝ようや」
「うん」

すると、衛がこう言った。

「玲奈は無事か?」
「はい。玲奈ちゃんは元気ですよ」
「良かった・・・」
「でも、遼さんが倒れたみたいやって・・・」

衛はそれを聞くと、すぐに和純にこう言った。

「明日にでもすぐに行け」
「分かった」
「雅也くん、和純のサポートをよろしく」
「了解!!」

そして3人は、個々の寝室に行って眠った。


まだ、日の昇らないうちに3人は起きた。

そして、衛は地下室に2人を連れて行った。

「ここが闇の世界の狭間に繋がる扉だ」

衛は、鍵を開けた。

すると、邪悪な光が雅也と和純を包んだ。
そして、すぐに2人の姿が消えた。

衛は、遼の安否と和純達の無事を祈りつつ地下室から出た。





和純と雅也はデーモンロードを歩いていた。

「なんか不気味なところやな…」

雅也は、そう言うと和純はこう言った。

「確かにな」

明らかに口調が違う。

「まさかそれが闇属性の人格なん?」
「…そう解釈したか」
「なんか威圧的」

すると和純は苦笑した。

「やだなぁ。何口調だけで、そう言うの」
「堪忍堪忍」
「ところでさ…玲奈ってどんな子?」
「意識交信した時はな、結構明るくて社交的な感じがしたわ」
「僕と正反対だ」
「見事に正反対やな」

2人はデーモンロードを抜け出てデーモンキングダムに着いた。

「あの時と同じ月の色をしている…」

和純がそう言うと雅也は上空を見上げた。

空は月夜で、月は赤く光ってるのでかなり不気味だ。

「ほんまや。赤い月やな。確かここの世界では、夜しかないらしいな」
「うん…」
「どないしたん?」

雅也が聞くと、和純はこう言った。

「瑠宇が心配」
「あの子は大丈夫やろ」
「そうなんだけど、世界中で何が起こってるか分からないから…」
「なるほどな。でも瑠宇ちゃんは1人で行ってないで」
「?」
「聖龍とかいうドラゴンに乗って行ったのを城の窓から見たで」
「ふうん」

辺りは真っ暗なのに星一つない。そして、月は不気味に赤々と光を放っている。

「あんな、デーモンキャッスルってどこなん和純」
「北800メートルだよ」
「そっかぁ案外近いんやな」
「うん。ここは小さな国だと本で書いてあったし」
「でも、ここの国にいる黒龍によって、平和を脅かされると思うと侮れなんな…」
「そうだね」

2人は北へ北へと進んだ。


するとクリスタルキャッスルと見劣りしないほどの壮大な城がそびえたっていた。

すると雅也はこう言った。

「ここがデーモンキャッスルかぁ。クリスタルキャッスルと同じくおっきいなぁ」
「確かに…」
「そこに玲奈ちゃんと遼さんがいるんか…」
「うん。確かこの扉を開ける時は…」
「なんかあるん?」
「分からないよ…」
「はぁ?書いてなかったんその本に」
「うん…」

2人は途方に暮れてしまった。

しばらくして、何かを思い付いたのか雅也が意識交信をし始めたのだ。

「玲奈…玲奈ちゃん?」

しかし応答はない。

「もしかして、交信出来ないエリアじゃない?」
「かもしれん。でもどないしよっかな」

今度は和純が何かを思い付いたのだ。

彼は腰にぶら下げていたフルートケースから、ホーリーフルートを取り出した。

そして、和純はフルートを奏でた。











その音色がデーモンキャッスルにいた玲奈に聞こえた。

(この音色、確かに前にも聞いたことがある)

そして、玲奈はドレスから黒装束に着替えて門まで降りてきた。

「何の用?あなた見掛けない顔ね」

玲奈はそう言うと、和純はこう言った。

「僕は佐伯和純です。佐伯遼さんいますか?」
「どうして女王の名前を知ってるの?そしてどうしてあなたは女王と同じ名字なの?」

玲奈は、そう質問した。

すると和純はこう答えた。

「僕の母親だからです」

すると玲奈の表情が変わった。

「ふざけないで!!」

その瞬間玲奈のオーラが、どす黒くなった。

「まさかあなたが、リトルミスティレディ?」

和純がそう言うと、玲奈はこう言った。

「ふふふ。そうよ。この私こそリトルミスティレディよ。いいから、城内に来なさい。そしてたっぷり話を聞かせてもらうわ」
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