ー龍達の宴ー

□序章―運命のコドウ―
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門谷衛と佐伯遼が、恒久の平和のために別れた。


遼は娘の『玲奈』を…

衛は息子の『和純』を…

育てていた。


そして、遼と衛は会うことなく8年の月日が経った。

衛は、和純が内向的な性格を心配して、一回外の世界へ連れていった。

すると和純は、森で衛とはぐれてしまった。



「どうしよう…」



和純は、普段から気弱で人見知りをする子供だったので、途中ですれ違う人にも話し掛けることが出来なかった。


その瞬間だった。

和純目掛けて石が飛んできた。

和純は避け切れずに、当たってしまい額から血が流れた。


すると、人影が現れた。

なんと和純と同じぐらいの幼い子供達ではないか。


和純は怖くなった。

必死で逃げ出した。

しかし子供達が追いかけてくる。


和純は、つまずいた。

すると子供達は彼の周りを囲んだ。

和純は、こう言った。

「な…なんで…」

すると子供の1人がこう言った。

「お前、デーモン一族の子だろ?」
「え?」
「とぼけるな!!破滅の象徴である赤いピアスをしてるだろ」

確かに、和純は赤いピアスをしている。

だが、和純は全くこの事実を衛から聞かされていなかったのだ。

「それに、お前は捨て子なんだよ」
「捨て子じゃない!!」
「現に母親がいないじゃないか」
「どうして、それを」
「クリスタルキングダムでは有名な話だ。だがお前は何も知らない。温室育ちもいい所だぜ」
「そんな…」
「だから、お前は誰にも必要とされていない。でなきゃ母親はお前を捨てなかった」
「違う!!」
「口応えする気か?」
「僕の母さんは…」

和純は、そこまで言うと静かになった。

「母さんは?」
「お父さんとの約束で、別れたんだ」
「もしかしたら、お前を捨てる口実だったんじゃないか」

そう言ったのは子供達の中でも一番大きな子供だった。

「違う…。そうならこのフルートを贈りはしない」
「笛?そんなもん王族の金ならすぐに買えるだろ。馬鹿じゃね?」
「お金なんかじゃない!!」

するとその子供は和純の胸倉を掴んだ。

「王族育ちのお前には、それを言われたくないんだよ!!」
「………」
「それにお前は、破滅の象徴なんだ!!」


和純は目を見開いた。

「破滅の象徴?」
「知らねぇのか?お前の母親を…」
「知らない…」
「まあ知ったところでどうこう出来ねえよな。お坊ちゃまはよ!!」

するとその子供は、和純を投げ飛ばした。

そして子供達は束になって、和純を殴り出したのだ。

和純はひたすら、黙ってことが終わることを祈っていた。

そして夕方になってもまだ続いていた。

「こいつ、泣かねえぞ?」
「泣かねえなんて、可愛くない奴…」
「それに、こいつ何もしてこないよ?」
「抵抗しても無駄って分かってるんじゃない?」
「だよな…温室育ちは喧嘩もしたことがない、もやしっ子だもんな」


すると、何かが降りてきた。

「ひゃ!!ドラゴンだ!!」

その声で子供達は怯え出した。

「ぎゃあー!!逃げろ!!」
「命だけは取るな〜!」


そう言いながら、一目散で子供達は逃げてしまった。

するとドラゴンから、1人の少女が降りてきた。

彼女は、綺麗な銀髪で、袖無しワンピースを来ていた。

「こいつ…ドラゴンを見ても怖がってない…」

和純は少女を見た。

そしてこう言った。

「ありがとう…」


和純はあちこち痣だらけで痛々しい姿になっていた。

「お前、どうして殴られてた?」

少女がそう言うと、和純はこう言った。

「僕…。デーモン一族の末裔なんだ。それが気に入らないらしくて…」
「馬鹿だな。あいつら。血筋なんて関係ないのに」
「そうかな…」
「ん…。お前は、どうしてここに来た?」
「僕の性格改善のためお父さんが連れてきた」
「で、そのお父さんは」
「途中ではぐれてしまった」
「それでか…」
「え?」
「なんでもない。とにかくその傷を治すから、このドラゴンに乗れ」
「いいの?」
「あぁ。このドラゴンを怖がらなかったのはお前が2人目だ」
「1人目は?」
「天空の世界のドラゴンキャッスルにいるレバイン兄ちゃん」
「それが1人目なんだね」
「うん。良かったら来ないか?」
「でも時間…」
「気にするな」
「お父さんは…」
「多分、お前を探しているはずだ」
「案外、探していなかったり…」
「あいつらのことを信じるのか?」
「………」
「確かお前……」
「和純…佐伯和純だよ」
「和純かぁ。俺は瑠宇」


そう言うと、瑠宇は和純に握手をしてきた。そして2人はドラゴンに乗った。

『瑠宇』

ドラゴンが言うと、和純はこう言った。

「話せるんですか?」

するとドラゴンはこう言った。

『当然だ。それに、私はお前と同じ血が流れている』

そう言うとドラゴンは、羽根を羽ばたかせた。

「僕と同じ血…まさかデーモンの…」
『逆だ。私はジュニー王族のものだ』
「でもどうしてドラゴンに?」
『話せば長くなるからやめておく。にしても、最近の子供たちは酷いな』
「………」

すると瑠宇がこう言った。

「確かにジュニーが言うように、酷いな」
「ジュニー?このドラゴンの名前?」
『そうだ。私の本名はジュニー・スタンスU世だ』
「まさか…僕のご先祖様。でも、たしかあなたが生まれたのは1000年前。とっくの昔に死んでいたはずじゃ」
『死ぬ前に洗礼を受けた。だから聖龍として生きている』
「聖龍?」

すると、瑠宇がこう言った。

「天空の世界のドラゴンキャッスルで一番位が高い龍の称号だ。他にも紅龍、青龍、黄龍がいる」
『厳密に言えば、黒龍もいる。しかし奴はデーモンキャッスルの主だ』
「あの…デーモンって…」
『私が戦った最後のボスの名前だ。しかし…黒龍として蘇った』
「つまり、僕はあなたの聖なる力と、デーモンの邪悪な力を授かって生まれた人間なんだ…」
『そういうことになる。だからお前の心掛け次第で、クリスタルキングダムを繁栄したり、殲滅したりできるわけだ』
「だから…あの子達は、僕を」
『悲しい話だが仕方ない。特別な力を持つと、疎まれるのはどこの時代でもそうだ』
「確か、僕のじいさんも…」
『俊也だな。あいつもある面では可哀相だったな』
「………でも、じいさんには、ばあさんがいる」
『確かにな。まあお前にはまだ早い』
「なにが?」
『人を愛する気持ち』
「………」
『いつかお前の愛する人が出来たら分かる。それまでは苦労をするかもな』
「………」
『和純…寝たのか?』

瑠宇は和純を見た。

「寝てる。よっぽど精神的に疲れたみたいだ」
『もうすぐドラゴンキャッスルに着く。今日は和純を泊めてあげて』
「珍しいな。お前人嫌いじゃなかったのか?」
『お前?相変わらずだな瑠宇は。それに私は和純が気に入ったから、そう言ったまでだ』
「ただレバイン兄ちゃんが許してくれるかどうか…」
『レバインは、生粋のデーモン嫌いだからな』
「言わなければ大丈夫だ」
『そうだな』

しばらくして、ドラゴンキャッスルに着いた。

地上の世界とは違い、花と緑に囲まれた自然の風景が綺麗だ。そして中央に城がある。

すると、ドラゴンは和純を下ろして、本来の姿に戻った。


「おい、和純着いたよ」


すると和純が起きた。

「あの…ここは…。ってあなた…」

するとジュニーはこう言った。

「これが本来の姿。ドラゴンは仮の姿」

彼は、年をとってはいたが、風なびく黒い髪と、ライトブルーの綺麗な瞳をしていて、王族の風格があった。

「大丈夫か?」
「なんとか…」

すると、3人の男女がやってきた。

「ジュニーおかえりなさい」
「瑠宇、この子は?」

すると和純はジュニーの背中に隠れた。

「隠れることないじゃない」
「ごめんなさい…僕…人見知りが激しくて…」
「この年でまだ人見知りしてるの?」

するとジュニーはこう言った。

「彼は佐伯和純。私の子孫にあたる。まあ性格は人見知りで…」
「気難しい…でしょ」
「そうだ。リー」
「リー?」
「ごめんなさい。自己紹介してなかったわ。私はハリル・トニー」

彼女は、ブロンドヘアーの長髪で瞳はルビー色をしていた。また、ゆったりとしたドレスを着ている。

「僕は、ハル・トニー。姉さんの双子の弟」

しかし、ハルはジュニーと同じく年をとっていて、ハリルとは同じ年で双子だとは思えない。

和純は首をかしげた

すると、誰かがこう言った。

「洗礼された時の年齢でストップされるからな。彼女は若干19歳にして洗礼を受けたから若いままだ。ちなみにハリル、ハル、ジュニーは同い年だぞ」
「あなたは!!」

するとカツカツと音を立てながら和純に近付いてきた。

その人物はハリルと同じブロンドヘアーを後ろで三つ編みにして束ねている。しかしハリルよりもかなり若い。

また瞳はエメラルド色で、切れ長の目が印象的だ。


「客人は久し振りだな」
「そんなに来ないんですか?綺麗なところなのに」
「そうだ。しかし、そんなに来てもらっても困る」
「どうして?」
「ここは静かな場所だからだ」
「あの…あなたは誰ですか」
「レバイン・トニー。この城を統べるものだ。お前は?」
「和純です…」
「本名は…」
「言いたくないです」

和純は瑠宇とジュニーのあの話を聞いていたのだ。

「どうしてもいやか?」
「はい…。正式にはジュニーY世の第一王子のカジュン・スタンス」
「それは偽名なはずだ。そこまでして言いたくないのは何故だ」
「…言えません」
「…なら去れ」

すると瑠宇がこう言った。

「俺の名前は瑠宇だ。しかし、レバイン兄ちゃんは俺の本名を聞かなかった。なぜ和純には聞く!?」
「和純は他人だからだ」
「俺と兄ちゃんも他人だ」
「兄弟じゃないの?瑠宇」
「違う。レバイン兄ちゃんは、俺を拾ったんだ」
「そうだ…。瑠宇を見捨てて置けなかった…」
「瑠宇はどうして…」
「知らない。俺は物心ついたときからレバイン兄ちゃんが家族だった」
「そうか…だから、髪の毛の色も瞳の色も違うんですね」
「そう言うお前は、ジュニーと同じライトブルーの瞳と漆黒の髪の毛をしている…」
「確かに…」
「名前の件については瑠宇から聞く」
「どうして!」
「お前の素性が怪しいからだ。いくら温室育ちだからと言っても今まで外の世界に行かないかったからな。これは多分…お前の血に邪悪な物が含まれているな」

和純は、怖くなった。
初対面のレバインにも当てられる予感がした。

「まさかデーモン一族の末裔か」
「………」
「そうだな。和純」
「………」

和純は恐怖のあまり、顔を引きつらせた。

「今後ここに来てはいけない。今日はいいが、今度来たらお前を殺す」

これには瑠宇も驚いた。

「レバイン兄ちゃん…」
「瑠宇…自分からこいつに会いに行ってもだめだぞ」
「いやだ」
「どうして」
「和純はそんな奴じゃない」
「初対面の相手に対してなにが分かる」
「和純は、ジュニーを見ても殺意を抱かなかった。デーモン側についていたら、間違いなく殺意を抱いていたぞ」

そう言うとレバインは去ってしまった。



「和純、ごめん…」
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