ー宿命ー

□番外編・女を捨てた臣下
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私の名前は、ハルク・ダミアス。

現在、ジュニー王族の5代目の王である徳川漣の臣下をしている。

普通、臣下は男がやるものであるが、私は女だ。

では、なぜこうやって臣下をし始めたかというと・・・。







あれは9年前のことだった。

ジュニーW世である徳川春代さんが、まだ眠っていた頃である。

私は当時、漣の世話係のメイドとして働いていた。

しかし、私の父が危篤だと彼の伯父である田所純平さんから聞いた


そして、病室にいる私の父はこう言った。

「ハルク・・・。お前はわがダミアス一族としてジュニー王族の漣王子に仕えなさい。そして、彼を守りなさい」

それは、メイドをやめろということを意味していたのだ。

私はまだ、その本当の意味を知らなかった。

父が死んでからしばらく経過した日だった。

私の母のミスティが突然こう言ったのだ。

「ハルク、今日から貴女は男の子として生きなさい。そして、女の子であることを決して誰にも明かさないように。万が一バラれたりしたたらここの城にいられないと考えなさい」


数日後、母は私のそばから忽然と消えたのだ。


そして私は、漣にこう言った。

「これから、貴方の臣下として仕えるハルク・ダミアスです。宜しくお願いします」

すると漣はこう言った。

「よろしくね?ハルクさん」

私は、そのころまだ髪を肩まで伸ばしていた。だから、『さん』と漣が言ったのだ。

私は、それではいけないと思い自分の部屋に帰ってすぐに髪の毛をバッサリと切ったのだ。

その髪型は、ある事件が起こるまでずっと保たれた。

それは、漣が王になった年に、春代さんが男の子を生んだ時であった。

その時、春代さんは育児に慣れていなかったため、私に任したのだ


それがいけなかったのだ。

かつて私も母を捨てられてしまったことがあるため、その男の子を自分の生き写しだと思い、母性本能を感じた。

そして棗を愛してしまったのだ。

それは臣下の抱いてはならぬ感情であった。

臣下と王族は決して愛を交わしてはいけなかった。


そして、あの事件が起こった。春代さんは私を呼び出した。

「なんで、呼ばれたか分かってるよね?ハルク」
「はい」
「貴方は、犯してはならない禁忌を2つ犯したわ」
「2つ?」
「そうよ。1つは私の棗を愛したこと。もう1つは・・・」
「言わないでください。私から言いますから・・・」

私は決心したようにこう言った。

「私は男と偽り、あなた方を騙しました。そうでしょ?」
「そうよ。どうして騙したの?」
「それは・・・」
「それは?」
「そうでもしなきゃ、私達ダミアス一家は、根絶やしになりあなた方ジュニー王族にお仕えできなくなると・・・亡き父が言ったからです」
「そう。でも、棗を愛したことは重罪なの。分かってるわね?」
「はい。そのつもりでここに来ました」

すると、棗がこう言うのだ。

「僕のせいなの?お母さん」
「ちがうわ。すべてハルクのせいよ」
「違うよ。ハルクは僕の寂しい気持ちを分かってくれた。何も悪くない!」
「でも、この私を差し置いて」
「棗王子を愛してしまった罪は重いのです」

私は、苦笑しながらこう言った。

「棗王子・・・いままでありがとう。私は、ここを離れます」
「ハルク!!行っちゃやだ!!」
「申し訳ありません。春代様には逆らえないんです!」

すると、春代さんはこう言った。

「二度と貴方はこの時代には生きてはいけません」
「それは死刑ですか?」
「いいえ。それより、惨い刑になるわ」
「死刑より惨い?」
「貴方は1000年後の世界に追放します」


その時、初めて涙が出た。

死より残酷で、

死より悲惨で

死より冷酷な

刑罰だった。

棗は私の方へ駆け寄った。
しかし私は春代さんのところへ戻るようにと言った。

そして、私は恐ろしく冷静にこう言った。

「分かりました。1000年後の世界に参ります」
「ダメだよ!!ハルクが・・・ハルクが1人になっちゃう」
「でも・・・。禁忌を犯したのは私のほうです。こればかりは仕方ないです」


そう言って、1000年後の世界に行こうとした。


その瞬間だった。

漣が部屋に入ってきたのだ。

「ならば、棗も追放してくださいお母様」
「レン王!!それはなりません」
「ハルクは、非常によくやってくれた。1人で行かせるのはあまりにも酷な話です」
「でも、棗王子はまだ幼いんですよ?そんなの無理です」

すると春代さんがこう言った。

「分かったわ。ただし2人を別の世界に行かせます」
「そんな・・・」
「これでも妥協したんですからね?我慢なさい」

でも、春代さんは泣きそうな顔をしていた。

春代さんの夫である俊也さんは、今断罪の旅に出ていた。

彼ならどう対処したのか、今更ながら思った。


結局私と棗は追放された。

そして、奇しくも1000年後の世界で再会を果たすのだ。


しかし、それまで私は男としてしばらく生き続けることとなる。

















後書き

ハルクの決心でした。えっとこの話は『紅龍Y』にリンクする話です。はじめてPCでやったのでかなり読みにくいかと思います。
でも一生懸命書いたので良かったら感想ください。


2008年12月30日 戸川春代

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