ー宿命ー

□モンスター討伐編・永遠の封印
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4年後、透と操は無事に聖クリスタルスクールを卒業した。そして、ジパングへと渡った。2人はモンスター討伐を辞めたのだ。そして、2人だけの結婚式を挙げた。ここまでいろんな困難があった。操の突然の告白、操が殺した相手の名前…。しかし2人は乗り越えてきた。だが…2人の病魔は確実に進行していたのだ。ある秋のことだった。操は、いつもの様に家事をしていた。すると、急に体が焼ける様に熱くなったのだ。そして、操は倒れ込んでしまった。透はその時、会社にいた。操は急いで透に電話をかけた。「もしもし…中川ですが」「透、今会社か?」「操、急にどうした?」「体が焼けるように熱い…。出来れば、会社を早退してほしい」「ごめん…。無理みたい」「分かった」操は電話を切った。そして、透が帰ってくるまで待つことにした。透はなるべく早くに仕事を済ませた。そして、操のために救急車を呼んだ。そして、透は病院に向かった。しかしその時だった。透にも体の異変が起こった。病院手前で、彼は倒れたのだ。不審に思った医者達は、彼に声をかけた。しかし反応が無かった。医者達は急いで、担架に透を乗せた。そして、夜になったのだ。操は透の訪問を今か今かと待っていた。しかし彼女が望んだ結果で、透と再会出来なかったのだ。彼は操と同じ病室に運ばれた。「透!?」「知り合いですか?」「私の夫です」「彼ねぇ、病院の前で倒れたんだよ」「え!?」(透のデスポリスも進行してたのか…)「あなたの場合は、ブラックフェニックスシンドロームだと中川医師から聞いてます。彼は、デスポリス病です。極めて難しい病気です。もって3ヶ月でしょう。あなたもそう長くありません。でも彼には言わないほうがいいでしょう…」(運命を共にしてきた私達が…)そして、朝が来た。操は辛うじて起き上がることが出来た。しかし、最悪なことに声が全く出なくなってしまったのだ。操は、担当の医者に紙とペンを借りて、こう書いた。「声が出ません…」すると医者はこう言った。「ウイルスが声帯まで、入ってきたからですよ。お気の毒ですが、あなたの声は一生出ません…」操は、唖然とした。(透の名前も呼べないのか…)「それにブラックフェニックスシンドロームは手術のしようがありません。だから実質死を待つのみ…」「透は?」操はそう書くと、医者は顔を曇らせた。「そのまま、死に行くのみです…」そう言うと医者は去ってしまったのだ。操は透の顔を見た。(あれは無数の傷…。つながってきてる)操は透の手を握り締めた。(透…。お前1人だけで逝かないで)すると、透は握り返した。そして、透はゆっくりとこう言った。「俺、死んじゃうんだね?」操は首を振った。「ううん。そんなにないよ。せっかく2人きりで過ごせるようになったのに…」すると、操は紙切れにこう書いた。『私も進行してるんだ。声も出なくなった』すると、透は目を見開いた。「本当なの?」『そうだよ。だから、透1人だけでは死なせない…』すると、透は微かに微笑んだ。「ありがとう」『それに…』「何?」『新婚旅行楽しかったな』「うん。すごく楽しかったよ」すると、不意に透が涙を流した。「ごめんね。本当は早くに操を助けたかったぁ」『仕方無いだろ。仕事だったんだから』「うん…。でも、こうやって2人で長い間いるのは久し振りだね」『何呑気なこと言ってんだよ』「死ぬまではせめて楽観的でいたいんだよ」すると、操が笑った。『そうだな。どうせ死ぬなら、その方がいいな』すると、操は手を話した。話し疲れたのか、操は眠ってしまった。「操…すまない。最後まで巻込んでしまって」透はそう言うと、操から手を離して眠った。そして、朝が来た。2人の病気はかなり末期で治る見込みが全く無かった。それでも、2人は最期の時まで有意義に過ごすつもりでいた。そして、2ヶ月が過ぎた。操の体は痣だらけになってしまい、痛み止めなしでは過ごせない体になってしまった。一方透は無数の傷がかなりつながってしまった。その頃には、殆ど口も聞けなくなってしまった。 ある日のことだった。病室から2人はあることを聞いた。「命を絶さない方法は石化することだぜ」どうやら外の庭から聞こえてくるようだ。「でも、動けないぜ?」「仕方ないだろ?」すると、操はこう書いた。『私が死ぬ間際には、石化してほしい』「だめだ…」透は弱々しく顔を振ってそう言った。『それしか方法はない…。お前を置いてはいけない…』「なら、俺にもしてくれ」『何故?』「操とずっとそばにいられるなら、手段は選ばない…」すると、透は咳き込んだ。赤い鮮血が透の口から流れ出た。『透?』「もう、ダメみたい」『馬鹿』「実は目も見えないんだ」『いつから?』「だいぶ前から…かすんで見えた。1ヶ月前から完全に視力を失った」そう言う透の瞳は光を失っている。すると、操は必死に起き上がった。そして透の頬を両手で触った。「操、やつれたね?」操は彼の頬に文字を書いた。「お前に言われたくない?だって。確かに食欲はないし…」『以前のお前とは、明らかに違う…。瞳に悲しみが宿ってる』すると、透の瞳からは涙が流れた。「操…。俺ねぇ、死ぬのが怖いんだ。1人になるのが怖い…」『私もだ』「俺ねぇ、最期にもう一度だけ、聖なる湖に行きたい…」『私も…。あそこで死にたい』そう言うと、2人は重たい体を引きずって『テレポート』した。そして聖なる湖に向かった。冬の湖は凍っていた。操は透の手にこう書いた。『湖は凍ってるが、なかなか風情のある風景だぞ』「うん」2人は横たわった。『初めて会ってから、13年が経ったんだな?』「そうだね…」『パートナーとなって私は良かったと心から思う』「俺も、モンスター討伐を志願して良かったと思う。お前に会えたからな」すると、透は操の頬に触れた。「傷跡治ったのに…。頬こけてる」『悪かったな』「ごめんね?」すると、見覚えのある人物がやってきた。「久し振りやな…」「その声は…」「わいやて!戸川由希」「由希先生」「可哀相に…病気のせいでこんなにやつれて」由希は2人を抱き締めた。「なんでこっちに来たん?」「最期に聖なる湖を見ておこうと思いまして」すると、由希は何かに気付いたみたいだ。「透、あんた目見えてないんか?」「えぇ」「操は声が出てないみたいやし…。これも病気のせい?」そう言うと、2人は頷いた。そして、由希は2人を連れて行こうとした。しかし2人は頑に動こうとしないのだ。「なんで?」「俺達の最期はここで…」『だから、誰にも邪魔されたくない』すると、由希は苦笑してこう言った。「分かった。じゃあ来世で会おうな」2人は頷いた。そして、吹雪が2人を襲った。2人は避難する力さえも残ってはいなかった。そして、操はこう書いた。『ありがとう。透愛してる』透は、それを解読すると微笑んだ。そして、こう言った。「操、永遠に愛してるよ」操はそれを聞くと、満足そうに笑った。そして、2人は体を温めるためにお互いの体を抱き締め合った。「暖かい…」『お前も…』2人は重なり合うように雪に埋もれた。そして、春が訪れた。暖かい日差しと共に誰かがやってきた。 それは、漣と美希だった。「漣、あんな〜私さぁ女王になろうと思うんよ」「そうなんだ」「相変わらず、リアクションの薄いやっちゃな」「だっていずれそうなることは分かりきってたことだし…」すると美希が透達に気付いた。「操さん!リーダー」2人は雪に埋まる直前にお互いの体を石化状態にしていたのだ。美希は急いで、『エスナ』をかけた。しかし変化は無かった。「あかんわ。自分らの意志で石化してもうてるさかい…」「分かった。とにかく神殿に運ぼう」漣はそう言うと、美希と2人で 透と操を抱えて、クリスタル神殿に行った。すると由希がいた。「やはり2人は封印しあったんやろな」「どういうことなん?おとん」すると由希はこう言った。「実は2人とも不治の病やってんよ。だから死ぬ間際に封印したんよ。そしたら死は免れるからな」「でもそないなことしたら…」「2人は分かっててしたんよ」「封印を解く方法は?」「今んところは皆無やな」すると由希は、透と操を神殿の真ん中に奉った。そして、結界を張った。3人は外に出た。「わいはこれからこの神殿を守るさかい、トニーズキャッスルのことは美希に任せたで。分からんことがあったら、漣に相談し」「そやね。でも冴子さんにいわなあかんのとちゃう?」「今は3人だけの秘密や」「ふうん」そして、100年の月日が流れた。未だに操達の封印を解く者はいなかった。そう、あのクリスタルを発見するまでは…。 完
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