ー宿命ー
□約束のあの場所で
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そして時が過ぎ、クリスマスイブになった。春代は、美影と一緒にドレス選びをしていた。
「ついに、俊也君と結婚するのね」
「えぇ。でも、ごめんね。2人だけの結婚式のためにドレス選び付き合わせて」
「ううん。いいのよ。漣君も賛成してくれたから良かったじゃない」
「うん」
すると、淳希がやってきた。
「いよいよ結婚するんだな。春代」
「まあね。私達は独身貴族として13年間生きてきたけどね。淳希は結婚しないの?」
「するわけないじゃん。俺、春代一筋だったんだから」
「諦めの悪い人ね。あっちゃんは」
「まあね。でもやっと今日踏ん切りがついたよ。ちゃんと幸せにならなきゃ承知しないからな」
「うん」
すると、純平もやってきた。
「姉さん、ドレス決まった?」
「あのね、お母さんが着ていたおじいちゃんが作ったドレスにしようと思うの。だってこれが一番好きだから」
「きっと似合うよ」
「ありがとう。俊也は?」
「城務に追われてる」
「そう。当日は明日なのにね」
「まあその時までのお楽しみだな」
春代は頷く。そして、ドレスの試着を終えるとは王室に戻った。俊也は相変わらず、雑務で忙しそうだ。春代はお茶を彼に出した。
「春代?」
「城務お疲れ様。ハーブティーよ」
「助かる」
「いよいよ明日ね」
「そうだな。13年間も延期にしてしまったしな」
「そうね。いろいろなことがあったわ。漣と初めて会った時点で7年が経ったし…」
「7年も知らなかったの?」
「眠っていたからよ」
「そうか」
「それに4月からは、この国とトニーズキングダムが合併してピースオールキングダムになるんだからね」
「漣がその初代の王になるんだな」
「そうね。漣は見ないうちに逞しくなったわ」
「そうだな。ダンスコンテストでも1年生部門で優勝したらしいな」
「美希ちゃんのお陰ね」
「そうだな」
すると、ハルクがやってきた。
「俊也様、ジュニー女王お忙しいところすみません。王子がお呼びです」
「分かったわ」
春代はそう言うと、2人は漣の部屋に行った。
「明日は結婚式だね。お母様、お父様いつまでもお幸せに…」
「気が早いんだから」
「だって俺、冬休みが終わったらトニーズキャッスルに行くんだから」
「え?」
「ハル王が是非美希の婿養子にと…」
「いくらなんでも早すぎない?貴方まだ13でしょ」
すると漣は咳ばらいを1つする
「と言うのは冗談で、新設のピースオールキャッスルの打ち合わせにしばらくトニーズキャッスルに滞在するの」
「そうか…春になれば、あなたが新しい王になるのね」
「はい」
「淋しくなったらいつでも帰ってこいよ。ここがお前の家なんだから」
「えぇ。それとこのオルゴール2人にあげます」
それは、漣の手作りのプレゼントだった。
「結婚祝いとクリスマスプレゼントを兼ねてね」
「ありがとう。早速開けていい?」
「うん」
春代はオルゴールの蓋を開けた。それは、『結婚式の朝に』だった。
「この曲はどこの資料から作ったの?」
「ハル王から、ハリルさんが作った曲を教えてもらったんだ。今の2人にぴったりでしょ?」
「うん」
すると、春代はこの曲を歌い始めた。
「綺麗なドレスに身を包んで。お父さんと、歩く。バージンロード。向こうには愛する人がいる〜」
「この曲知ってたの?」
「うん。私もハル王から聞いたの」
「そうか。とにかく2人ともおめでとう」
そして、朝が来た。春代は朝早くから起きて、ホーリーウェディングホールに向かった。そして、ルークがメイクをし始めた。
「春代さん」
「ん?」
「やっと夢が叶ったんだね」
「うん」
「おめでとう」
「ありがとう。ルーク」
「幸せになってね」
「うん」
すると、ルークは丁寧に春代をメイクした。そして、髪をアップして束ねた。すると、別人のように変わった。
「やっぱり雰囲気変わるね。すごく綺麗だよ」
「ありがとう」
「じゃあ、後はマリアに任せるから」
すると、ルークとマリアが入れ替わった。
「マリアさん?」
「はい」
「あなた着付けが出来るのね」
「父親がやっていますから」
「そう」
「にしても、綺麗ですね」
「ありがとう」
すると、マリアはウェディングドレスを春代に着せた。そして、仕上げに白銀のティアラを春代の頭の上に乗せて、ベールを被せた。最後にダイヤモンドをあしらった靴を履かせた。
「これは?」
「父親からのプレゼントです」
「かなり高かったんじゃないの?」
「えぇ。でも、春代さんのためなら高くても構わないって言ってましたから」
「そう」
「本当に綺麗な花嫁ですよ。俊也さんきっと驚きますよ?私はこれで」
「ありがとう。マリアさん」
春代はそう言うと、マリアは去って行った。すると、ゆっくりと俊也が控室に入ってきた。
「春代?」
俊也はそう言うと、ベール越しの春代を見た。いつもより、綺麗な姿だった。春代は振り返った。その瞬間俊也は顔を赤らめた。
「どう?」
「春代がこんなに綺麗になるなんて思わなかったから…」
「ありがとう。俊也も決まってるね」
「そう?」
すると、メイドがやってきた。
「旦那様は先に式場に来て下さいね」
「はい。じゃあまた」
「うん」
俊也は式場に入った。すると、大勢の人が待っていてくれた。
「2人きりの筈じゃ?」
すると、正装した漣がやってきた。
「ごめんなさい。俺、2人に内緒で招待状書いちゃったんだ」
「そうか…。わざわざありがとう」
「うん」
俊也は、みんなの前まで行った。しばらくすると、司会の美影がこう言った。
「ただいまより、新郎田所俊也さんと新婦徳川春代さんの結婚式を行います。司会進行は、私島野美影がさせていただきます」
外で春代が聞いていた。
「漣ったら…」
すると、スタイナーがやってきた。
「お父さん!?」
「久し振りだね。春代、やっと彼と結ばれる日が来たんだね」
「何も言わずにごめんなさい」
「いいよ。孫の漣が教えてくれた。それにうすうすそうなることは分かってたしね。それにしても、綺麗だね」
「ありがとう」
すると、ホールの門が開けられた。
「新婦徳川春代さんが入場します。盛大な拍手で迎えてあげて下さい」
美影がそう言うと、破れんばかりの拍手がなった。春代はスタイナーと手をとってゆっくりと、バージンロードを歩き始めた。そして、春代は俊也の隣りに来たところで、止まった。
「皆さん、ご一緒に賛美歌を歌いましょう」
すると、みんな立ち上がった。そして、賛美歌を歌った。そして、神父の…。
「由希さん?」
神父の由希がこう言った。
「2人とも、ご結婚おめでとうごさいます。さて、2人には長い道のりがありました。皆さんもご存知である13年間もの悲しい空白がありましたが、今日ついに結ばれる日が来たのです。それでは、早速ではございますが、誓いの契約をしましょう」
すると、春代と俊也は由希を見上げる。
「汝田所俊也は、新婦徳川春代を健やかなる時も、病める時も彼女を愛し、共に助けあって生きていくことを誓いますか?」
「誓います」
「汝徳川春代は新郎田所俊也を健やかなる時も、病める時も愛し、共に助けあって生きていくことを誓いますか?」
「誓います」
「皆様、今彼らは誓いの契約を無事に済ませました。それでは、指輪の交換をしてください」
すると、メイドが2つの指輪を2人に差し出した。
「これは?」
「13年前渡すつもりだった奴」
「そう…」
すると、俊也は春代の左手の手袋を外して、ピンクのダイヤモンドの指輪をはめた。そして、春代は俊也の左手にペリドットの指輪をはめた。
「それでは、新郎の田所俊也さんは、新婦のベールを外して下さい」
由希はそう言うと、俊也は春代のベールを外した。その瞬間、みんなは唖然とした。普段見ていたどちらかと言うと童顔彼女とは違って、大人っぽくて綺麗になったからだ。
「皆さん、驚かないで下さい。私も少々驚きましたが。さて、俊也さん、春代さん。誓いのキスを」
すると、2人は近付いた。そして、春代は目を閉じた。俊也は春代の唇に自分の唇を重ねた。するとわぁっと歓声が湧いた。俊也はゆっくりと春代から離れた。お互いを見つめ微笑み合う。
「おめでとうごさいます。皆さん祝いの歌を歌いましょう」
すると、みんなはまた立ち上がった。そして、祝いの歌を歌った。
「これで、結婚式を終わります。新婦と新郎が退場しますので盛大な拍手で送ってあげて下さい」
由希はそう言うと、みんなは大きな拍手で送った。そして、披露宴は後日することになった。春代と俊也はそのまま聖なる湖に向かった。すると、そこに純平がいた。
「姉さん、俊也おめでとう」
「純平!!」
「2人がここに来ることは知っていたよ。俺はただそれが言いたかっただけ」
純平はそう言うと、去っていった。
「何がしたかったんだ?」
「さあね」
すると、いきなり何かが光った。それは純平からのプレゼントだった。桜の木がクリスマス仕様にデコレーションされていたのだ。
「粋なことするなぁ」
すると、淳希がやってきた。
「これさ、俺と純平からのプレゼント」
そう言うと、小さな箱を2人に渡した。
「早速開けて」
「うん」
2人は箱を開けた。それは、2人からの手紙だった。早速、春代が読み出した。
「『春代、そして俊也へ。今日は結婚本当におめでとう。13年間も想い続けるなんて、普通出来ないなって思った。それに、春代はクリスタルキャッスルの国王として、忙しい毎日に追われていたな。でも、これからは肩の力を抜いて、俊也とゆっくりと話をしろよ。それと、俺の初恋さようなら。中川淳希』何?この最後の文」
「いいだろ?言わせてよ」
「これは不要だ」
「俊也のは?」
「純平からだ」
すると、俊也が読み出した。「俊也へ。結婚おめでとう。それと、メリークリスマス。姉さんといい日を過ごしてね。純平」
「それだけ?」
「こっちの方が嬉しいな」
「そんな…」
「でも、淳希ありがとう」
「じゃあ、またな」
淳希はそう言うと、去っていった。すると、めったに降ることのない雪が降ってきた。
「ホワイトクリスマスになりそうだね」
「そうだな」
「ねぇ、俊也」
「ん?」
「私そろそろ、ウェディングドレスを着替えたいんだけど…」
「だめだ。しばらくそのままで」
「分かった」
すると、本格的に雪が降り出した。俊也はさり気なくコートを春代に着せた。「俊也?」
「ウェディングドレスのままだと風邪ひくと思ったから」
「でも俊也は寒くないの?」
「ちょっと寒い」
「なら、戻る?」
「待って…。桜の木が雪で白くなるまで見ていたい」
「それもそうだね」
春代は雪を眺めていた。その顔は、俊也を見とれさせるには充分であった。
「ん?私の顔に何かついてる?」
「違う…」
「でも、ずっと私の方見てたよ」
「だからそれは…。お前に見とれてたからだ」
「え?」
春代は、顔を赤らめた。
「本当初だな。そういうところ全然変わってないな」
「だって…」
「1つ聞いていいか?」
「何?」
「俺と結婚して良かったのか?」
「はぁ!?良かったからしたのよ」
「そうか…」
「それに、あなた以外の人と結婚するなんて、考えられなかったもん…」
そう言うと、春代は顔を逸した。
「そうか。嬉しい」
俊也は笑った。春代もつられて笑った。
「後、8月の誕生石が、ペリドットの宝石なんてよく分かったな」
「由希さんから聞いたの」
「そう…」
すると、桜の木は雪で真っ白になった。
「綺麗!!」
春代は感激した。
「こういうのもいいよな」
俊也はそう言うと、春代は頷いた。
「それに、白い木とウェディングドレスはよく似合う」
「そう?」
「もしも俺が絵描きなら、お前が描けるのにな…」
「描けるよ」
「へ?」
「だって私のジョブをあげたんだから」
「でも、似顔絵なんか描いたことない」
「お願いだから、描いて」
春代はそう言うと、スケッチブックと鉛筆と消しゴムを具現化して、俊也に渡した。
「私なら、何時間でも待つから」
「分かった」
俊也はそう言うと、春代を桜の木の近くに行かせた。そして、意を決して彼女を描くことにした。2人だけで誰にも邪魔されない静かな時間が流れていく。それは静寂ではあったが、2人にとっては幸せな時間だった。そして、2時間が経った。春代は俊也に呼び掛けた。
「どう?」
しかし、反応がない。心配になったのか、春代は俊也の元に行った。すると、彼はスケッチブックを持ったまま眠っていた。春代は、コートを返して、彼の体にかけてから一旦ホールに戻った。そして、セットを外してウェディングドレスからいつもの服に着替えた。そして、急いで俊也の元に行った。すると、俊也は半分雪の中に埋まっていた。
「ごめんごめん。今すぐ助けるから」
春代はすぐに雪をかき上げた。すると、俊也が目を覚ました。
「春代…」
「ん?」