ー宿命ー
□残酷な運命
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すると、操と美希とハルクはデーモンキャッスルに向かった。そして、透達は天空に向かった。操は、最終確認をした。
「美希、お前はとにかく私のサポートをしてくれ。ハルクは、なるべく時間を稼いで欲しい」
「はい」
そして、3人はデーモンキャッスルに入った。
「確かここって1回全壊したはずじゃ…」
「確かにそうだが、あの女が直したんだろう」
3人は、階段を上がった。すると、ミスティがやってきた。ミスティは、背後から『シャドーボール』を投げ付けた。ハルクは黒い球体をたたっ切った。
「あんた卑怯やね!」
美希は、ミスティを見て言った。
「卑怯もくそも無いわよ。あなた達のせいで暗黒の世界を造り出すのに時間をロスしたのよ?」
「そんなこと、知ったこちゃない」
「あら、あなたは…」
「お前相手にわざわざ名前なんか言うかよ」
「なによ。その口調は。まるで男だわ」
すると、操は笑いながら、銃を放った。
「あんた、それは禁句だろ?」
「何よ!いきなり銃を放つなんて、酷いじゃない」
すると、ハルクはこう言った。
「俺達は、あなたと話をするために来たんじゃない」
「あら、かわいらしい坊やね」
そう言うと、ミスティはハルクにすり寄って来た。
「俺達は、あんたを倒すために来たんだ」
「かわいい顔して、随分物騒なことを言うのね。ここじゃなんだし、3階の王室まで来られたら、相手になってもよろしくてよ」
そう言うと、ミスティは消えた。
「行ってやろうじゃないか」
操はそう言うと、3人は階段を上がった。
一方透達は遥か彼方の天空の飛竜の里に来ていた。透達は、ドラゴンがいないのを不審に思った。とにかく、3人はドラゴンキャッスルの中に入った。すると、ドラゴン達の無惨な姿が見えた。
「酷い…誰がそんなことを」
「恐らく、あの女の仕業だろうな」
透は、そう言うとドラゴンの間に1人の騎士が倒れていた。透達はすぐに、その騎士の元に駆け付けた。すると、鎧を被ってて誰だか分からなかった。透はそっと鎧を外した。すると見覚えのある人物がそこにいた。
「徳川!!」
そう、漣だった。彼は頭から大量の血を流していて大変危険な状態であった。透は、とりあえず無線で操達に連絡した。
「こちら、天空班です。ただいま徳川漣を発見しました」
「こちら、デーモンキャッスル班。リーダー、彼の様子は?」
「頭部から出血していて、大変危険な状態です。とりあえず、マリアに治療をさせます」
「了解、私達は、いまからミスティ戦です」
「分かった。頑張れ」
すると無線は切れた。マリアは、水筒の蓋を開けて、漣の出血箇所に水を流した。そして、タオルで血を拭いた。
「思いの外、外傷がきついです。リーダーどうしますか?」
「とにかく、止血をしてくれ」
「はい」
そう言うとマリア、タオルを漣の頭に巻き付けた。そして、その上から包帯を巻いた。
「マリア、とにかく回復系の魔法を彼にかけ続けてくれ」
「分かりました」
マリアは、自分の手のひらから光玉を発して、漣の頭部にかけた。その間冴子は、周りの様子を見た。
「リーダー、ドラゴン達はほぼ全滅状態です」
「そうか…。マリア1人の力では、到底ドラゴン達を回復させることは出来ない」
「見捨てるつもりですか?」
「なるべく、回復魔法をかけてくれ。頼む冴子」
「はい」
冴子はドラゴン達の体に回復魔法をかけた。すると、操から連絡が入った。
「透…」
「どうした?」
「残念なことだが…」
「ミスティに倒されたのか?」
「それに近い…。美希もハルクも気を失っている。なんとか私は戦える状態だが、勝ち目がない」
「分かった。すぐに行く」
「来ないでくれ…。お前達を巻き込むのだけはしたくない」
「でも、仲間のピンチに駆け付けるのが、当たり前だろ?」
「気持ちはすごく嬉しいが、透達が戦ったとしても勝てない」
「分かった…。操、テレポート出来るか?」
「体力を使い果たしてしまうがいいか?」
「残りは、俺が魔力を使う。だから天空に向かってくれ」
「分かった」
すると、操達がテレポートして、やってきた。操はすぐに倒れてしまった。彼女の両腕には痛々しい痣がついていた。マリアは、ハルクと美希の治療をした。透は、操の治療をした。そして透は、クリスタルキングダムの白ユリの花畑の地下洞窟にテレポートした。透は、白ユリの花畑を見たとき愕然とした。
(決して枯れることのない花達がみんな枯れている…)
辺りを見渡したら、焼け野原状態になっていた。
(これが俺達の故郷のなれの果てか…。なんて残酷なんだろう)
すると、マリアが洞窟の中から外に出た。
「リーダー…」
「どうした?マリア」
「ついこないだまで綺麗に咲き誇っていたユリ達が、みんな枯れてしまいましたね」
「あぁ、俺達の家も跡形なく消えてしまった…」
「これから、どうしたらいいんでしょうね」
「そうだな…。すぐには思い付かないけど…。とにかく洞窟の中に戻ろう」
透はそう言うと、2人は洞窟の中に戻った。美希とハルクは目を覚ましたみたいだ。
「私ら、ミスティに負けたんですよね?」
「あぁ、そうだな。美希」
「操さんは、まだ起きないんですか?」
「操はテレポートで体力を使い果たしてしまったんだよ。慣れない魔法を使ったからね」
そして、美希は漣に気付いた。
「漣?」
「ドラゴンキャッスルでドラゴン達と同じように倒れていたんだ。しかも頭部を出血してた」
「誰にやられたんですか?」
「ダークナイトもしくはミスティ…」
「なんて非情な人らなんや。自分の実の息子に…」
「ダークナイトのジョブは、悪魔に魂を売る大変危険なジョブなんだ。それに闇属性であり、完全に闇に染まるとどんなに大切な人ですら、見境なしに切りかかっていく。恐らく漣の父親は、闇に染まってしまったのだろうな…」
「そうですか…」
「止めにいける人は、数少ないし。ここにはいない」
「…」
すると、雨が降り出した。紅い雨だった。というのも、空は赤く染まっていたからである。かなり不気味な雨だった。
「今日は洞窟の中で野宿しよう」
透がそう言うと、意識のある4人は頷いた。洞窟の中には2つの部屋があったので、透は美希達に広い方の部屋を譲った。透は操を運んで、奥の部屋に入った。
するとリリアンの肖像画があった。『リリアンの旦那』恐らく、昔リリアンに従えていた盗賊の1人が書いていた絵なのだろう。透はランプをつけた。また、簡易ベッドがあったので操をそこに寝かせた。透は救急箱で彼女の腕に特効薬を塗って、ガーゼをあてた。
(すまない操…。作戦ミスをまたしてもしてしまった…)
透は深くうなだれていた。すると、ドアを叩く音がした。
「誰だ?」
「親分の部屋に勝手に入るでない」
そう言うと、老人が入ってきた。
「すみません…。リリアンさんのお知り合いの方ですか?」
「知り合いも何も、わしはリリアンの親分の子分だったんだぞい。ところでお前さんは誰だ?」
「クリスタルブレムス出身の中川透です」
「中川?真理さんの孫かい?」
「いえ、曾孫です。真理さんをご存じで?」
「リリアンの親分の後輩だった方じゃ。隣りに横たわっている娘は誰じゃ?」
「花嶋操です」
「花嶋操?あの暗殺者か?どうしてかくまっている…」
「あなた、操を知ってるんですか?」
「あぁ、わしの息子を殺した極悪人だからな…」
「と言うことは、あなた中川雅巳さんですか?」
「違うわい。雅巳は息子で、ジパング出身じゃ。わしは、中川哲留じゃ。お前さんとはひいじじと孫の関係になる。しかし、この極悪人を生かしてなんになる?」
すると哲留は、操の首元にナイフをあてた。
「よくもよくもわしの息子を殺しおって!!」
哲留は、操にナイフを降り下ろした瞬間、透が手でナイフをはじき飛ばした。
「何をする!透。奴は殺人鬼なんじゃぞ?」
「彼女には理由があったんだよ!」
「殺人の動機に理由もくそもないわい!」
「俺の父親は強盗犯で、彼女の母親を殺したんです。そこにたまたまいた彼女も殺されかけたんです。そして、まだ赤ん坊だった妹を守るために、防衛反応で俺の父親を殺しただけなんです。悪いのはむしろ俺の父親なんです。彼女は大切な家族を失ったんですよ」
「デタラメを言うでない!」
そう言うと、哲留は操の首を締め付けた。操はかなり苦しそうだ。
「やめてください。彼女にも非があったのは認めます。でも、父親の方が非があるんですよ」
「つべこべ言うな!お前は下がっとれ」
「いやです。彼女は大切な…」
「大切な人だと?」
「はい。彼女は俺にとって一番大切な人なんです。それに、この話は操自身から聞いた話なのです」
「殺人鬼の話を信じるつもりか?透」
「俺は彼女を信じています。彼女は嘘をつかないと」
「騙されるな!こいつはお前とわしの大切な人を殺した極悪人なんじゃぞ!!」
「それは事実です。でも、俺の父親は彼女の母親だけでなく、彼女の命を奪おうとしたのですよ?」
「えぇい!!うるさいわい」
そう言うと、哲留は操の首をよりきつく締め付けた。操の顔は青ざめた。透は、必死に哲留の両手を彼女の首から、離そうとしたが、なかなか離れない。
「やめてください!過去にあった出来事を彼女に責めても、何の解決にもなりません。それに、そのまま彼女の首を締め付けたままだと、あなたこそ殺人鬼になりますよ!?」
「離してくれ!」
「だめです。彼女と約束したんです」
透がそう言うと、操は大きく目を見開いた。
「地獄の果てまでついていくことを」
「地獄行きはこの娘1人で充分だ。お前が行くことない」
すると、透は操にテレポートをかけた。
「おじいさん、失礼ですが帰って下さい」
「ちっ。とんでもない女に引っ掛かりやがって」
そう言いながら、哲留は去ってしまった。透は、操の体を持ち上げて、ベッドに乗せた。
「操…」
「仕方ない…。こう言われるのは、慣れているから。他の2人はどうなった?」
「2人とも無事だよ。今別室で冴子達といる」
「そうか…、ミスティに全然敵わなかった」
そう言うと、操は握り拳を作った。
「銃も簡単に避けられたし、魔法も全然効かなくて、歯が立たなかった…」
「すまない…。俺のミスだ」
「確かにそうかもしれない。でも戦いを避けなかった私のミスの方が大きい」
そう言うと、操は髪をほどいた。髪には血がついていた。それがミスティの強さを物語っていた。透はタオルで操の髪についた血をとった。
「明日どうする気なんだよ」
「分からない…」
「そうか…」
「クリスタルキングダムの風景が焼け野原に変わっていて、急にやる気が削げ落ちたんだ…。情けないけど」
「そうだな。リーダーらしくない。でも、私もそれを見たら透と同じ気持ちになるかもしれない」
「故郷のなれの果てを見た時は、絶望すらした…」
すると、操は透の頬を思いっきり叩いた。
「馬鹿じゃねぇの!?絶望って簡単に言うなよ。まだ私がいるだろ!?仲間が生きてるだろ?1人になってから言え!この根性なし」
「でも…何をし始めたらいいか分からない」
「何をし始めたいかなんてな、考えるな。今出来ることを精一杯やれ!」
「俺に出来ること…」
「漣の治療をするんだよ。マリア1人じゃ足りないからだ。私は大丈夫だから、行ってくれ」
「ありがとう。操」
透がそう言うと、彼は漣達のいる部屋に行った。操は、自分が叩いた方の手のひらを見た。赤々として、少し痛みを感じた。
(久しぶりに、あいつをぶってしまった…)
一方、美希達は漣の看病をしていた。しかし、ハルクと冴子とマリアは疲れて眠っていた。美希は透と回復魔法を延々と漣の体に、かけていた。しかし、彼はいっこうに目を覚ます気配すらなかった。しかし、美希達はあきらめずにやり続けた。
そして、夜が明けてしまった。美希と透は夜通し回復魔法を漣にかけていたので、かなり疲れていた。しかし、2人は手を止めることは無かった。やがて2人は無意識のうちに眠ってしまったのだ。操が起き出して、美希達の部屋に入った。するとみんなぐっすりと眠っていた。
(私が寝ていた間ずっと頑張っていたんだな)
そう思うと、操も漣に回復魔法をかけ始めた。すると冴子が起き出した。
「姉貴、体はどうだ?」
「だいぶ良くなった」
「そうか。あんまり無理すんなよ」
「分かってる」
すると、漣が目を覚ました。
「ここはどこですか?」