ー宿命ー
□秘密の特訓
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そして、夜が明けて朝が来た。マリアは早めに起きて身仕度をしてから、朝食の用意をし始めた。そして、出来上がった頃に美影が起きてきた。
「美影さん、おはようごさいます」
「おはよう。昨日は、おいしいお茶を入れてくれてありがとう」
「いえいえ。今朝食が出来た頃ですから、一緒に食べませんか?」
「いいの?」
「えぇ。父を起こしてからですけど」
「昨日遅くまで、モンスターを調べていたみたい。だから、もう少し寝かせてあげて」
「そうおっしゃられると仕方ないですね。先に食べましょう」
「そうね。いただきます」
2人は、早めの朝食をとった。
「おいしいわ。全部マリアさんが作ったの?」
「えぇ。2人暮らし慣れてますし、早起きなのは私ですから」
「そう、いいお嫁さんになれるわ」
「いえいえ」
照れ笑いするマリア。食べ終わると、2人は食器を洗い場に持っていって洗い流した。美影はマリアに軽く礼を言った。
「昨日は泊まらせてくれてありがとう。それとおいしいお茶と朝ご飯もありがとう。そろそろ仕事だから帰るわね。ルーク先生が起きたら帰ったって言ってね」
「はい。パトロール頑張って下さい」
「ありがとう。またちょくちょく来るけどいいかな」
「えぇ、いつでも来てください」
「ありがとう。じゃあね」
美影はそう言うと、国立図書館から出た。マリアはルークの部屋に入った。
「お父さん朝よ、起きて」
マリアはそう呼び掛けたが、ルークはまるで起きる気配が無い。よく見れば、パソコンの電源は点いたままで、履歴を見るとモンスター以外のことも、調べていた形跡が分かる。彼女は、『クリスタル』の欄をマウスでダブルクリックした。すると、クリスタルの詳細が載っているページに画面が変わった。
『クリスタル。正式名称は、聖なるクリスタルである。3つのクリスタルから成り立っている。白きクリスタルは『純粋』を表す。クリスタルキャッスルの秘宝として守られている。紅きクリスタルは『情熱』を表す。ローレが持っていたと言われてるが、現在の持ち主は不明である。昏きクリスタルは『調和』を表す。トニーズキングダムの秘宝として守られている。この3つのクリスタルが揃わなければ、クリスタルキングダムの隣国であるタワーズキングダムへは行けない。その理由は、どんな魔法も防ぐ強固な結界が張られているからだ。また、元々3つのクリスタルは、1つだったと言われている。役100年前にタワーズキャッスルが全壊した時に、クリスタルが3つに分裂されたのだ。現在そこの跡地に封印されし塔が建っている』
(古くからあるんだ…)
一通り目を通すと、初期画面にしてからパソコンの電源を消した。その後、ルークが起きた。
「おはよう。お父さん」
「あれ?いつの間に寝てたのか…」
「また夜遅くまで、調べてたんだって?美影さんから聞いたよ」
「だって…」
「だってもないわよ。あまりにも遅いから美影さん帰っちゃったよ」
「あらま」
「朝ご飯出来てるから」
「ありがとう」
2人はリビンクに行った。
「いただきます」
そう言うとルークは、無心で食べた。そして、食べ終わったら、自分の食器を洗い場に持っていって洗い物をした。そして、朝風呂に入った。
一方、美希はまだ起きていなかった。由希は彼女の部屋に入った。彼は彼女の頬の涙の跡を見て、昨日泣きながら寝ていたことを悟った。すると、美希の携帯が鳴った。由希は美希を起こさないように電話に出た。
「もしもし、ユークレイですが」
「もしもし、マリアです。美希さんはまだ寝てますか?」
「まあな。昨日のことがショックで…」
「そうですか…」
「なんか伝えときたいこととかある?」
「あの…中川生徒会長からの伝言なんですが、集合時間を11時に変更したそうです」
「分かったわ。わざわざおおきに」
「それではまた」
マリアがそう言うと、由希は電話を切った。すると、美希が起き出した。
「誰からやったん?」
「マリアさんからや。なんか集合時間が11時になるって言ってたわ」
「今何時?」
「7時半や。まずその顔どないかしたら?」
由希がそう言うと、美希は手鏡を机の引き出しの中から、取り出した。そして自分の顔を見た。
(涙…)
「そんな顔で集合したら、みんなにごっつう心配されるで。朝ご飯作っとくから、朝シャンしぃ」
「うん。そうするわ」
美希は急いで、大浴場に行った。まだメイドも入っていなかったので、独占状態だった。彼女は衣服と下着を脱いだ。まだ幼い体ではあったが、年齢の割には胸が出ていて、お腹はひき締まっていた。そして、風呂場に行った。体を先に洗って髪を洗った。そして、念入りに洗顔した。風呂場から上がるとすぐにバスタオルで体と髪を拭いた。髪は漣より若干ショートだが、ボリュームがあった。そして、髪をドライヤーで乾かして軽装を着た。美希は髪を乾かした後、王室に向かった。すでに料理がテーブルの上にあった。由希がこう言った。
「さて食べよか」
「そうやね」
「いただきます」
そう言うと、2人は無心で食べた。そして、食べ終わると、食器を洗い場に持っていって洗い物をした。
一方操と冴子は、すでに外出していて、ウォーミングアップ程度にポカポカマウンテンで、モンスターを退治していた。
「しかし、モンスターが増える一方だな」
「まだ少ないほうだ。これからどんどん強いモンスターが繁殖してくる」
「そうか…厄介なことになりそうだ」
「とにかく10時半になるまでは、退治し続けよう」
その一方、透は何かを描いていた。
(今のままでは、ミスティに勝てない。最低でも全員レベル30は必須だ。でもポカポカマウンテンだとレベル10までが限界だ。かと言ってクリスタルマウンテンにいきなり行くのは、危険だしな。そうだ、まずポカポカマウンテンに行って、レベル10まで上がったら、クリスタルマウンテンに行くことにしよう)
すると、叔父の中川淳希が部屋に入ってきた。
「作戦立てているのか」
「まぁね。一応リーダーだし」
「お、やるな。腹減っただろ?おにぎり作ったから、食べときな」
淳希がそう言うと、お茶とおにぎりを差し出した。
「ありがとう」
そう言うと、透は食べ出した。
「おいしい、ジパングにはこんな手軽な料理があるんだね」
「まあな。これから、漣を助けに行くんだろ?選別にこれ持っていけ」
「これは?」
「お前が使わずにいた金だ。剣や防具やアクセサリーや食料を買う時に使うとよい」
「ありがとう」
「もうそろそろ着替えたら?」
「それもそうだね」
透がそう言うと、淳希は部屋を出た。透はシャツを脱いだ。普段からは想像がつかないが、背中には傷だらけである。これが聖クリスタルスクールの生徒随一のレベルの持ち主だという証拠だ。また割れた腹筋や適度に盛り上がっている胸筋を見ると、連戦、戦ってきたことを物語っている。彼は軽装の上に軽い鎧を着けた。そして、愛用している龍王剣を手にした。すると、美希達がやってきた。
「お邪魔します」
対応は淳希がした。
「わざわざありがとう。透なら2階にいるからね」
「分かりました」
5人は、透の部屋に行った。
「こんにちは。生徒会長」
「こんにちは。いまから、作戦会議を行うよ。とにかく好きな所に座って」
5人は透を囲むようにして、座った。
「まず、剣、防具、アクセサリー、食料、6人用のテントを買いにいく」
「野宿するんですか?」
「まあね。いちいち家に帰っていては、時間がかかりすぎるからね。それから、昼食をとってからポカポカマウンテンに行く」
「ポカポカマウンテン?」
「ここの北に位置する山だよ。ここなら初心者の君達でも倒せるモンスターがいる。そして、だいたいレベルが10に行ったら、クリスタル城下町で食料を買いに行く。それからクリスタルマウンテンに向かう」
「分かりました」
「じゃあ早速買いに行こうか」
透がそう言うと、6人はブレムス商店に行った。
(なんか高そうなもんばっかりや。誰が払うんよ)
そう思った美希はこう言った。
「あの、誰が払うんですか?」
「俺だよ。お金のことなら心配しなくていいから」
すると、美希は何かを見つけた。
「モンスター図鑑?」
「そうね。生徒会長、これ買ってもいいですか?」
「駄目だよ。今回のモンスターはみんなそれに載ってない奴等ばっかりだから」
「そうですか…」
「それに同じパーティーなんだから『生徒会長』って言うのはやめて。せめて名前で呼んでよ」
「はぁい」
一方、操と冴子は武器屋に行っていた。
「まぁ、透だけに金銭面を任せるのは悪いから、自分達の分は自分で買おう」
「分かった。今日は新しい銃が入荷されたらしい。良かったら買ったら」
「ありがとう。確かGMーC2000だな」
そう言うと、操はその銃を手に乗せた。
「前に、使ってたやつより若干軽いな。それに銃を差し入れる所が6つから10つになっている。これは重宝しそうだ」
すると、操は値段を見た。
「20000ペルーか。かなりいい値だ。少し高い気もするが、旅先だから仕方ない。すみません。これ買います」
すると、店員がやってきた。
「GMーC2000だね」
「はい」
操は、20000ペルー払った。そして、冴子は、女子用の軽い長剣を見つけた。
「エタニティーソードか。5000ペルーするのか。まぁ手頃な値段だな」
「エタニティーソードなら学校でも売ってる。これにしたらどうだ?」
操はそう言うと、布袋に入っている剣を渡した。
「グラディウス?聞いたことない名前の剣だな」
「少し値が張るが、エタニティーよりは強い」
「じゃあそれにしよう」
操が店員に15000ペルー払った。そして、2人は透の所に行った。透達は防具屋にいた。
「おかえり。何かいいものは、見つかった?」
「あぁ、買ってきた」
「買ってきたの!?お金なら出してあげたのに」
「お前だけに金銭面を任せたくなかっただけだ」
「すまないね。今防具を買ってるところだよ。見ていったらどう」
「あぁそうする」
透と操の2人は、奥に入った。
「何、この銃」
「新品のGMーC2000ガンだ。軽いし、銃玉を入れる所が10個もある。まぁ銃の玉はいろいろと混ぜればよい」
「なかなかすごいな。で防具は何がいい?」
「あまり重装備はしたくない。動き辛いからな」
「そうか。ならこの『守りの腕輪』にしてみたら?値段も手頃だし」
「そうだな」
一方、冴子は盾を探していた。
「お客様なら、これはどうです?」
店員がそう言うと、真新しい盾を見せた。
「クリスタルシールドです。少し値が張りますが、すべての属性魔法を防ぐ代物です。きっとお客様なら気に入りますよ」
「値段は?」
「10000ペルー程します」
「分かった。とりあえずもらおう」
そう言うと、冴子は10000ペルー払った。そして、操の所に行った。
「買えたか?」
「まあな。綺麗だろ?」
そう言うと、クリスタルシールドを見せた。
「珍しいものを買ったな。私は守りの腕輪を買った。透は、勇者の盾を買うらしい」
「他のみんなは?」
「美希達なら、すでに買い終わった。今食料品を買いに行ってる」
「分かった」
すると、透がやってきた。
「良い盾だね。他に買いたいものはない?」
「あと…薬草など治療用に使うものが買いたいです」
「そうだな。生憎このパーティーには『薬師』や『白魔導士』がいないから、それは必要だ。3人で行こうか」
「いえ、私1人で充分です」
「そう」
透がそう言うと、冴子が去っていった。
「気を使わせちゃったかな」
「まあな。一緒にいることに慣れてないし。気にしなくてもよい。ところで、剣は買ったのか?」
「ううん。いつものがしっくりくるから…」
「そうか」
「あのさ、操」
「なんだ。透」
「頼りにしてるよ」
そう言うと、透は操に微笑んだ。
「馬鹿か。リーダーはお前だろ?」
顔を赤らませながら、操は言った。
「そうだけど、いろいろと」
「訳の分からん奴だな。頼りにしてるのは、むしろこっちだ。お前がしっかりしないとパーティーが成り立たないんだよ」
「分かったよ」
すると、美希達が帰ってきた。
「ご苦労さん」
「冴子さんは?」