ー宿命ー

□悪夢のはじまり
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あれから、6年が経った。
漣は、聖クリスタルスクールの城務科1年生になっていた。

「おはよ。漣」

通学中に声を掛けて来たのは、戸川美希だ。
そう由希と美影の間にできた女の子である。彼女も城務科1年生である。
「おはよ。美希」
「今日が始業式なんてほんま、かったるいわぁ〜」
「仕方ないよ。夏休み明けの1日目だし」
「まぁ、そうなんやけど」
2人は、話しながら体育館に入った。
「みんな早いんやな」
「俺達で最後みたい。あっ生徒会長が来た」

すると壇上から、生徒会長の中川透が話し出した。

「今から、2学期の始業式を始めます。まずは、期末考査と実技考査の上位者を表彰します。呼ばれた生徒は、舞台まで上がって来て下さい」

すると、周りばざわざわし始めた。
「静かに。まず6年生から言います」

次々に名前が呼ばれていく。
その間、美希と漣は雑談をしていた。
「今回の自信あるか?」
「期末考査はまあまあだけど、実技がだめ」
「何言ってんの漣。実技の先生だって褒めてくれたやん」
「社交辞令にすぎないよ」「あんたは、ほんまに冷めた子やな」
「よく言われる。そこが、お父様に似てるって」
「ふうん」

すると、透が1年生の成績優秀者を発表しだした。

「5位230点。Bー3呪解科のマリア・ケイスさん」
マリアは、壇上に上がった。2人は、まだ雑談をしていた。
「マリアってルーク先生の子だよね」
「そうやな」
「さすが、先生の子やな」
続いて透が話し出した。
「4位235点。Aー10城務科戸川美希さん」
「え?私?」
美希はびっくりしてしまった。
「そうだよ。早く行きなよ」
「う。うん」
美希も壇上に上がった。
「3位238点。Aー5芸術科花嶋冴子さん。2位240点。ハルク・ダミアス君。そして、栄えある1位は、徳川漣君」

(ななななんですとー!?)

漣は、驚きのあまり絶句した。
「徳川君。徳川君いますか?欠席ですか?」
透がそう言うと、やっと漣は、我に返った。
そして、壇上に上がった。
「では、表彰します」
次々に表彰されていく。
そして、漣の番がきた。
「徳川漣殿、あなたは、聖クリスタルスクールで前代未聞のオール満点を取りました。これも、普段から勉学に一生懸命に励み、実技にも一生懸命に励んだ結果でしょう。よってここに表します」
漣は、透から表彰状を受け取った。

そして、校長の話が終わり、生徒指導主任のルークが壇上に上がり、話し始めた。
「みんな、おはよう。夏休みは楽しかったか?今日からまた学校生活が始まる。今日は、重大なニュースを言うのでよく聞くように」

周りは、静かになった。

「実はここ最近、この世界の平和に不穏な動きが見られたとのニュースが入った。表面上では普段と変わりないんだが、誰かの手で残酷な計画がなされているらしい。だから帰宅時は、1人で帰らないこと。そして、もし1人で帰らないといけない場合、親を呼ぶかここの先生の誰かと同伴で帰ってほしい」

(まさか、この生活の平和が脅かされてる?)

漣は、そう思った。

そして、始業式が終わった。

漣と美希は、一緒に帰ることにした。

「それにしても、あんたはすごいなぁ。前代未聞のオール満点だってさ」
「そうかな」
「もっと喜ぶべきやわ。ほんま冷めてるし」
「うん…。それより、この世界に不穏な動きが見られたって先生言ってたけど、何なんだろう」
「そうやね。一見平和に見えるけど」
「昔にも、こんなことがあったのかな」
「じゃあさ、一緒に国立図書館寄って調べてみいへん?」
「うん」
2人は、国立図書館に行った。
「いらっしゃい」
「あんたは、聖クリスタルスクールの呪解科のマリア・ケイスやね」
「よくご存じで。あなた達は、中川さんと徳川君ね」
「よろしく」
「ところで、今日はどうしたの?」

すると、漣が話し出した。

「ルーク先生が、この世界に不穏な動きが見られたって言ってたから、昔にもあるんじゃないかと思って、歴史書を借りに来たんだ」
「分かったわ。ちょっと待ってて」

マリアは、一番奥の書庫に本を取りに行った。
「にしても、ルーク先生そっくりで美人さんやったね」
「うん」
「まさか、惚れたんやないやろな?」
「俺は、タイプじゃないよ。だって釣り合わないじゃん」
「まあね。あんたは、どっちかって言うと、童顔だもんね」
「仕方ないだろ?お母様に似たんだから」

すると、マリアが戻ってきた。

「『紅龍V』が比較的最近なの。借りてく?ここで読んでもいいけど」
「借りてくよ。手続きはどうすればいいかな?」
「この紙に名前を書いて」
漣は、紙に名前を書いた。
「2週間後以内に返してね。もし延長して借りる時は、一旦この本を持ってきてから、もう一度手続きしてね」
「分かった」

2人は、国立図書館を出た。

「昼はどうするん?」
「城に帰って食べるよ」
「そうか、あたし帰るから、また明日な」
「うん。気をつけてね」

2人は、別れた。
そして、漣は城に戻った。
すると、純平が王室で待っていた。
「おかえり。漣」
「ただいま、純平伯父様。お母様は?」
「今、昼食の用意してる。荷物を自分の部屋に持ってきてから、戻ってきて」
「はい」
漣は、自分の部屋に行った。そして、荷物を置いて王室に向かった。

すると、春代が料理を持ってきた所だ。
「おかえり」
「ただいま」
「さて、昼食にしましょうか」

3人は、椅子に腰掛けた。

「いただきます」
「今日は、この後会議があるの。王子の漣も一緒に来てほしいわ」
「分かった」

3人は、昼食を済ませた。片付けは、メイドに任せて、王室で会議を開くことになった。

「忙しい中すみません。今日は、このクリスタルキングダムの世界に不穏な動きが見られたというニュースが、耳に入りました。誰か手掛かりがあれば言って下さい」

春代が、そう言うと由希がこう言った。

「それは、クリスタルキングダムに限らないんとちゃいます?」

「トニーズキングダムでも、兆候は見られたんですか?」
「えぇ。何人もの人がフェニックスシンドロームに悩まされてるんです」
美影がそう言った。
「昔にもこういうことがありましてね、なかなか治らない病気でして…」
そう言うのは、スタイナーである。
「そう。今のところクリスタルキングダムでは、まだフェニックスシンドロームの患者は出ていない様です。しかし、だれがこんなこと…」
「さぁ」
「漣は何かある?」
「ありません。ただ昔起こったことが、今になって起こるとしたら、誰かがこの国の誰かを恨んでいるんでしょう」
「そうね。誰か心当りはない?」
しかし、みんな顔を横に振った。
「なら、いいわ。みんな解散して」
春代がそう言うと各自解散した。

「お母様」

漣がそう言うと春代が振り向いた。
「今日、国立図書館に行って『紅龍V』を借りたけど、もしかしたら今の原因が分かるかもしれない」
漣はそう言うと、鞄の中から分厚い本を取り出した。
「懐かしいわね」
「知ってるの?」
「昔、大学生の時にTとUを読んだのよ」
「ふうん」
漣は、そう言うと本のページを開いた。

『ジュニーV世が病で倒れた時から、世界が変わってしまった。ある日鎧を着けた青年がやってきた。その青年は『ダークナイト』をジョブとしていて、クリスタルキャッスルの誰1人として彼に敵う者はいなかった。そして、その青年はクリスタルキャッスルの君主となった』
「クリスタルキャッスルにも、物騒な話があったんだ」
漣はそう呟いた。
「まさか、こんな形で君主になってたなんて」
「知らなかったの?」
「えぇ。その時は、日本にいたから」
春代がそう言うと、漣は本の続きを読み出した。

『しかし、それもある少女の手で、崩れ去った。青年は彼女の首元にナイフをあてて、『愛すると言うのはなんだ』と問い掛けた。すると少女は、見事に答えた。すると、青年の涙がこぼれた』
「しかし、よくもこんなこと書けたわね。まさか、著者って…」
「お母様は、心当りがあるの?」
すると、春代は頷いた。
「実は、その少女は私なの」
「青年とは、どういう関係?」

すると、春代はため息をついた。

「聞きたい?」
「うん。興味あるよ」
「本当のことを言っても、驚かないでね」
春代がそう言うと、漣は静かに頷いた。

「その青年と私は肉体関係までいった仲よ」
「まさか、その青年が俺のお父様だったりして?」

すると、また春代はため息をついてこう言った。

「察しがいいわね。ご名答よ」
「随分、ロリコンなんだね。俺のお父様って」

すると、春代が苦笑してこう言った。

「本当は、同い年なの。この本の書き方が悪いのよ」
「本当?」
「えぇ。嘘じゃないわ」

すると、漣はしばらく黙った。

「いつか言おうと思ってたわ。でもなかなか言い出せなかったの。それに実の父親が死んでたなんて言ったら悲しむから…」
「薄々気付いてたよ。美希には父親がいるのに、どうして俺はいないんだろうかと」
「ごめんなさい」
「お母様が謝ることないよ」
「13年前に、あなたのお父様は、この世界の平和の為に亡くなったの。あの時私がもっと早くに手を伸ばせばこんなことにはならなかった」
春代は、俯いた。
「軽蔑してもいい。私はあなたのお父様を殺したも、同然だから」
「お母様は、悪くない。それは純平伯父様も言ってた。もし手を握ってたら、みんな死んでいたって」
「でも、私は俊也を見捨てた」

春代は、両手で顔を覆った。

「自分を責めないで!!お父様だってお母様が悪いなんて思ってないよ」
「それは、たんなるエゴよ。ごめんなさい、1人にして」

春代はそう言うと、自分の部屋に行った。漣は途方にくれた。

(まだそんなに自分を責めていたなんて…)

すると、美希がやってきた。

「漣!大変や」
「急にどうしたの?美希」
「白ユリの花畑から、モンスターが出てきたらしいで。みんな困ってるんよ。いまマリアが、モンスターと戦ってるから早ように行こ」
「分かった」

2人は城から、出て白ユリの花畑に行った。
「マリア!連れて来たで」
「ありがとう」

すると、漣はこう言った。
「いったい何をすればいいの?」
「漣は、初めてやねんな。こういうの。まあ、とにかく腰にある短剣を構え」
「うん」
漣は、剣を構えた。
「敵の数は?」
「だいたい10体で、種族はゴブリン」
「分かった」

美希は、何かをイメージした。すると、漣の短剣が大きな剣になった。

「なっ何これ!?」
すると、美希はこう言った。
「驚くのも無理はないな。『具現化魔法』であんたの剣を『巨大化』してんよ。とにかくゴブリンを倒してみ」
漣は頷くと、剣でゴブリン達を切り裂いた。
すると、ゴブリン達は消えた。
すると、漣のジョブカードが鳴った。
「今のでレベル2になったんとちゃう?」
美希がそう言うと、漣はズボンのポケットからカードを取り出した。
「本当だ」
「あんたのジョブは『剣士』かぁ。まあ、普通と言えば普通やな」
「美希は?」

漣はこう言うと、美希はカードを見せた。

「私は『具現化師』や。まあ、親父のん受け継いでるんよ」
すると、マリアがこう言った。
「具現化師なんて珍しいわね。私は『呪解魔導士』なんだけど」
「2人共、魔法系かぁ」
「そうみたいやね」

すると、漣は無残に散ったユリの花びらを手にとった。
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