一次創作(オリジナル)小説


□冥府の魔女と狼の執事 5
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「少しばかり、失礼致します……」

 一言断ってから執事が神様に向かって体を軽く起こす。
執事が取ろうとしている行動の意図がつかめない神様は
黙って彼の行動を見守ることにした。


 執事は、まず神様の額に軽い口付けを落とす。
神様の体が忽ち音も無く固まった。

 続けざまに執事は神様の瞼や頬、最後に唇に軽く口付ける。

「動物染みた行為ではありますが、私にはこれしか思い浮かばなかったもので……」

 不愉快でしたか、と不安げに問いかければ、神様は首を左右に振る。
そして、しなやかな手を執事に伸ばして、彼の薄い唇をなぞる。


「我は構わぬから、……もっとやってくれ……」
 虫が鳴くような小さな声で呟く。


 そんな神様の要望に執事は驚いた。

「宜しいのですか?」


「二度は言わん」
 神様は冷淡に肯定付ける。


「我が君の御心のままに……」

 小さな笑みを一つ零し、執事の指が神様の細い顎を持ち上げる。


 暗闇の中で確かに見える彼女の瞳が、そっと瞼によって閉ざされる。
それを合図にして、執事もまた瑠璃色の瞳を一旦闇に鎮める。

 そうして自然と、暗闇の中にひっそりと浮かぶ二つの影が重なった――。









――御伽噺をお聞かせしましょう。

これは冥府の魔女様と、彼女に仕える狼の執事のお話です――……。




【END】



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