一次創作(オリジナル)小説


□ダークナイト 第5楽章
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「エルジュノエル・スノーウィズル・オルムメディス王女。
英国第36代目国王・ウィリアム4世が王位を継承した際に
正妃・アデレイドとの間に子供が生まれなかったことから、
その事を憂いた公爵が自分の一人娘を王の娘として仕立て上げた、急ごしらえの姫」


 この世界に戻ってすぐさま大小関わらず図書館という図書館に篭り、
王権制度だった国の資料を片っ端から調べた。

知識の吸収力は昔から良かったので、莫大な情報を前に半日以上はかかったが、
一日以内で調べられた。
常人ならば悠に一ヶ月以上はかかっただろう。


「二番目の王妃として扱うことも許されていたが、
ウィリアム4世はエルジュノエルが成長しても娘として扱った。
エルジュノエルが10歳の頃、視察に出ていたウィリアム4世が
帰国した時に森に倒れていた綺麗な青年を見つけ、これを保護。
年嵩がエルジュノエルより上だったことから彼を王子として扱う」

 冥府の神が干渉した雪女のことも王子としてだが、
ご丁寧に書き記してくれていた。

 動物達がエルジュノエルを倒れていた方だと思っていたのは、
恐らく姫が主語を付けずに説明したからだろう。

主語が無い説明は時たまに素晴らしい誤解を招く。


「後に王子は突然の失踪を遂げる。
姫も15歳の時に突如として行方をくらました。
嫡子ではないことから王位継承権は元々与えられなかったため、
家臣達は深く捜索することなく、切り捨てた」


 そこまでが歴史上に並ぶエルジュノエル姫の人生だ。

 行方をくらました15歳の年代は自分が介入した時期の事を指しているのだろう。
どうやら動物達の元に帰された姫は城に戻ることなく、
残りの人生を動物達と一緒に暮らしたらしい。

 そして、姫を愛して愛して止まなかった7匹の動物達は――。

「七福神」

 神話で謳われる幸福を司る7柱の神。


 当時の魔力が幾ら強かろうと、今ほど濃度がある訳ではなかった。
今は神々が降臨したことで通力が加わり、善悪はあれど人語を解する動物が増えている。

それにエルジュノエル姫には魔力は感じられず、
彼女の力をもって彼らが人語を話しているとは到底思えない。

 その点も気になって調べてみたら、該当する情報は七福神に関しての記述だけ。
頭数もあっているし、彼らを象徴している動物も幾つか当てはまった。



「同じ神でも、雲泥の差だったなァ……」

 それにあの口ぶりでは、自分達が神だということを知らずにいたのだろう。

姫が死んで生きる気力を奪われる彼らもまた彼女の後を追うように次々と息絶え、
改めて自分達が神だということに気付いた――という推測が妥当だ。


「アナタ方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
願わくは、生まれ落ちた際には再び合間見えることを誓いましょう」

 恭しく頭を垂らし、心からの願う言葉を紡ぐ。



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