Novel
□姫条まどかルート
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年明けから、思い切ってときめきデートに踏み切りました。
普段なら絶対に選ばない、選んだら印象を悪くするだろうと怯えていて
でもずっと言いたかった選択肢を口にしてみました。
ときめきデートは親密度がMAXでなければ成功しませんが
季節の移り変わりに伴う寒暖の差にすら疎く、変わり目にはいつも場違いな格好をしている様な自分には到底わかりっこありません。
頼みの綱の弟情報で何度も何度も確認しましたがどうしても確かな実感を持てないまま当日を迎えました。
いつものように彼を目の前に選択肢を3つに絞ったとき
自分でもこぶしを硬く握っているのがわかり、選んだ言葉を言った直後に口がカラカラに渇きました。
たった一言で嫌われるかもしれない恐怖と、もうどうにでもなれ、という半ばやけくそな気持ちとで返事を待っていると
これまでの私の反応と大分違う物だったのでいささか驚いているようでもありましたが
抜群の好印象を受けた様子で今まで見たこともないくらいに喜んでくれました。
彼の赤らんだ頬をしげしげと眺めて、惚けたような心地になりながら
散々指摘されてきた「気を使っている」とはこのことだったのかと今更ながらに理解しました。
彼の「気を使うな」というのは暗に「もっと言いたい事を言ってくれていい」というサインだったのでした。
気になってはいたけど、ただもう好感度を上げることに一杯一杯で、それは失敗してはいけないことだったし
でも胸にずんずん溜まっていくこの気持ちはなんなんだろうと、ずっと苦しくもありました。
なんてまどろっこしいんだろう。
高校生活も大詰めになるこの時期まで気がつかない自分も恐ろしく鈍感で悔しいのですが
直接的に言わない彼も彼だと思いました。
きっとそんな難題をずっと抱いていて、たった今解決したなんてこと
目の前の姫条まどかは全然わかってはいないのでしょう。
そんな彼が心から憎たらしくて、でもどうしても愛しくて
心は複雑に混ざって、苦しくて涙が出そうになるのを唇を強く噛んで耐えるのでした。