6学園テキスト

□木枯らし吹こうが
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―――


ルサルカの最終公演は、いつも超満員・そして拍手喝采だ。



観客は皆立ち上がり、惜しむことなく手をたたく。
涙を流す者、指笛を鳴らす者、一様に満足げな笑顔を浮かべている。



何度ものカーテンコール。

一度目は、主演である看板役者・イヴと、ヒロイン。

二度目は脇を固めた役者達。

三度目には全員で。

四度、五度目は、出ずっぱりで演技をしていたイヴが、一人舞台上に姿を現す。



何度も、何度も。
止まぬ拍手とスポットライトに照らされ、気持ちよさそうに頭を下げる。
イヴが去ろうとすると拍手が大きくなり、もう一度、もう一度と客席が沸き立つ。



過大評価しすぎだ、と思われるかもしれない。
しかし、一度でもルサルカの看板役者・イヴの舞台を観覧すれば、誰もがこうなってしまうのだ。
老若男女、すべてを魅力する笑顔で、呼ばれるまま、望まれまま幾度となく舞台へ赴く。
その潔い、堂々とした姿。



筆者も、取材という名目を忘れ、ペンを置き皆と同様熱い拍手を送った。
何度でも、イヴは姿を見せてくれた。
しなやかな身体、艶やかな表情。
その柔らかな物腰からは想像もできないような力強い・他を圧倒する演技を、見る者に叩きつけてくる。



一度見ただけで虜になるというイヴの噂は、真実だったようだ―――。



『週刊観劇33号
劇団ルサルカ特集ページより抜粋』





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