6学園テキスト
□ミミとピッピと
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《ミミとピッピと》
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「ちょっと、紫苑?いいか」
「ん?なに、ネズミ」
「回りくどいのは嫌いだから、率直に聞く。
今日帰り前に一緒にいた男。
誰あれ」
「一緒にいた、男…?
あ、ああ。
あの、HR後の?
去年同じクラスで委員会が一緒だった人だよ。
今年は違うクラスになったから、きみは知らないか」
「そんな奴が、なんで今頃紫苑に用事があるわけ?
なんか随分親しそうだったけど?」
「ああ。
二年になる前に撮った集合写真を渡しに来てくれたんだ。
5枚あるんだけど、全部先生が半目だったもんだから、おかしくて。
二人で笑ってたんだけど…」
「なんでおれ以外の奴に、親しそうな笑顔見せるの」
「ネズミ…?
何怒ってるんだ?
いやぼくだって、その先生を馬鹿にして笑ったわけじゃないんだ。
絶妙に白目になってたから…」
「…面白くない」
「の、のけ者にして悪かったよ。
写真、後で見せるって」
「そいつがあんたのこと気に入ってたらどうするんだよ。
あんたはにぶいから、わからないかもしれないけど」
「先生が!?
それはないよ!
だって先生既婚者で子供が5人もいるんだから。
それに、彼だって。
彼が好きなのはウサギのミミだもん!
ぼくが好きなのはインコのピッピだし」
「ウサギだろうとインコだろうと、そんなのハッタリかもしれない。
本当は、あんたのことを気に入って、一緒に入ったんじゃないのか?」
「そんなはずない!
だって…だって彼は、校内でも有名な無類の動物好きなんだ。
ウサギの世話以外にも、金魚やハムスター、野鳥の雀やカラスやハト、果ては虫の面倒だって積極的に見てた!
なぁネズミ、ぼくが飼育委員だったこと、そんなに気に入らないのか?」
「飼育委員なんてどうだっていい。
おれはあんたに近付く不穏分子が気に入らない。
度が過ぎれば、廃除する」
「そ、そんな!
なあネズミ、信じてくれよ!
彼は純粋に動物が好きなだけなんだ!
そんな物騒なこと言わないでくれ!」
…ネズミがただヤキモチを焼いていただけだということに気付いたのは、それから20分後だった。
まったく、素直に言えばいいのに。
08.09.10*