6学園テキスト
□季節外れの肝試し
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きせつ はずれ の
きも だめし 。
どうして。
こんなことになってしまったのだろう。
真っ暗闇の中、目の前に佇むのは見慣れたはずの校舎。
……しかし、考えてみれば、見慣れているのは昼間・太陽に照らされた校舎であって。
夜の学校には、たとえ用事があったって、怖がってほとんど誰も寄り付かない。
そういう意味では、通い慣れた校舎でもまるで初めて来た建物のように姿を変えてしまう。
自分の知らない時間帯の校舎が、こうまで雰囲気を違えてしまうとは。
二人分の話し声や足音、どこかに触れる音、肩を叩く音、果ては自分の吐く呼吸音までもが、広がり集まり響き合い、呑み込まれて消えてゆく。
そんな、虚空にも似たこの暗闇の中で、おれは一体、何をしているのだろう。
まるでこれは、季節外れの肝試し。
それは、紫苑の一言から始まった。
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