6学園テキスト

□1 灰色の空の下
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忘れもしない、灰色の雲が立ち込める夕方。

おれにとっては、くだらない恥をかかされた最低な日。

しかし、奇しくもあんたの誕生日だったあの日。

おれは、あんたに出会った。











大通りのビルの影、意識して見なければ見落としてしまいそうな裏路地への細道。
そこにあるのは、人二人並ぶのがやっとの隙間。
両側の壁を垂直下から見上げるために、コンクリートの先端はかけらも見えない。
まるで天空へと繋がる人工の懸け橋のようだ。
愚かな人間が作り出した、神の御元へと続く道。
しかしそこには色はなく、夢も希望も見出だせない。
大通りの方から細道を抜けると、その先には品のないネオンが並ぶ街。
先へ進めば裏通り、後退すれば大通り。
どちらにも人は絶え間無く行き交っている。
いつ歩いても、騒がしい街だ。
空も、無駄に高いコンクリートと同じくすんだ灰色。
もっとも、おれが見る空はいつも灰色だ。
色のない世界。
明るい空が見たいとか、色付いた景色が見たいとか、思わなかったわけじゃない。
ただ、思っていたとしても叶わなかったまでで。


ああこんな空に、何を願えばいいだろう。
こんなの冴えない世界――最低最悪だ。
とっとと、滅びちまえばいい。いつも、そう思っていた。






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