お題テキスト

□『B』 before
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『B』


これは、眠りに落ちる直前に思った、微かな仮定の話。
おかしな“もしも”の話。


もし、私が男だったら。
あんたと友達になれたかしら。


もし、あんたが女だったら。
私達、紫苑を巡るライバルになったかしら。
これは自信を持って言える。
ライバルになったに決まってる。


もし、紫苑が女だったら。
私は親友として、紫苑を愛していたかしら。


もし、私が捕らわれのお姫様だったら。
あなたは助けに来てくれるかしら。




もし、紫苑がこの世にいなかったら。
私、あんたのこと好きになっていたかもね。
紫苑以外で初めて自然に心をさらけ出せた、初めての人。
あんたに惹かれない女なんて、いないんだから。

でも残念。
もし紫苑がいなかったら、私達きっと出会ってないわ。
紫苑が引き寄せた、不思議な縁なんですもの。



すべて、今この現実には起こり得ない。起こってはいけない。
起こってほしくないこと。
だからこそ、遊び半分で仮定にして楽しむの。
笑われるのは癪だから、ずっと心に秘めておく。
でも、一歩違えば起きていた。
どこかリアルな夢物語。




目が覚めたら、またあいつに負けないように頑張ろう。


もし、あいつが現れなければ。
私は、紫苑と、付き合えていたかしら。




―――

before

前に
―より先に

―――


09.02.17






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