パラレルメルヘン

□いたずら王子と子犬と教師<後>
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その頃。紫苑が想いを馳せる、お城の高い塔の天辺では。


「ちょっ、まま、待て! 落ち着けネズミ! よく考えろ! ど、どうしてもっていうなら、嫌だけど口でしてやる! なんなら素股までしてやる! だから! い、入れるのは! それだけは! んっ、い、待てってば……!」
「もう我慢も限界だ……少しだけ。少しだけ我慢してろ、マグロでいいから……」


美しい王子さまがじゃれあっていました。


「い、やだって……!待て待て待て待て、思い直せ。おれを誰だと思ってる? お前と同じ顔した、お前の片割れだぞ!」
「んなこと、見ればわかるよ。整った顔した麗しい王子さま。その綺麗な顔、ぐちゃぐちゃに歪めてやるよ……」
「お、お、おまえ、自分と同じ顔見て欲情してんじゃねぇぞ! 自分犯して楽しいと思うか? 楽しくな……」
「おれはもう、穴さえあればなんでもいいんだよ……。ほら、黙ってこっちに尻向けな」
「へ、変態! 鬼畜! お前なんか鍵穴にでも突っ込んでろ!」
「ばぁか、鍵穴がよがるかよ……おれは暖かくて、喘いでくれる、人間に入れたいんだ……」
「ぎ、ひ、ひぃーーーー……っ」


狭い牢の中、どたばたと逃げ回るイヴ王子を、すたすたとネズミ王子が追いかけます。
うまい具合にぐるぐると逃げ回っていたイヴ王子の手を、一瞬の隙をついてネズミ王子が捕らえました。手首を掴まれ、思い切り引き寄せられた、その瞬間。


「う、っわ!」
「っえ?」


ドターン! 引き寄せる強い力に踏ん張りがきかず、二人はもつれ合って転がりました。


「いってて……おいこら、逃げるならしっかり逃げやがれ。おれを巻き添えにしてすっ転ぶだなんて……あ、あれ?」
「ふっふっふ……さっきはよくもおれを言葉の暴力で嬲ってくれたなぁ……。形勢逆転。おれが……犯す!」


転んだ拍子に二人の立ち位置が入れ替わり、先ほどまで追われていたイヴ王子が腕組みをして、ネズミ王子を見下ろしていました。
イヴ王子が黒い笑みを浮かべながら、先ほどまで追いかける立場だった王子の肩を押さえつけます。


「え、あの、え? ちょっと待っ……さっきのは、単なるお遊びで……」
「嘘付け。本気でおれを掘るつもりだっただろうが。肉食獣みたいな目つきしやがって……許さねぇ」
「……あ、あれ? ちょっと、肉食獣の目つきはどっち……って、痛!」
「大丈夫、じっとしてろって……おれが女を失神させるほどのテクの持ち主だって、知ってるだろ……? すぐ、よくしてやるよ……」
「だわわわ……! っあ、ごめん、おれちょっと今日身体の調子が……。うまく喘げそうにないやそんな奴としてもお前楽しめな……って人の話聞けよ!」


「王子さま、お食事をお持ちしま…ってきゃーーーーー!」


そこへタイミング悪く、年端もいかない召使が食事を運んできました。
鉄製の扉を開けて目に飛び込んできたのは、牢の中でもみ合い半裸になった、二人の王子の姿でした。


「お、お、王子、さま……っ! あ、そんな、おやめくださいませ……っ!私には、刺激が強すぎます……」


食事を足元にひっくり返して、若い召使は両手で目元を覆いました。
突然現れた草食動物のような召使に、肉食獣の王子さまはにやりと笑んで狼のように舌なめずりをしました。


「お。ちょうどいいのが来たじゃねぇの。おーい、そこの可愛らしいお嬢さん。ちょっとこちらにいらっしゃい」
「うら若くぴちぴちしたお嬢さん。優しく愛してあげるから、ちょっとこっちにいらっしゃい」
「あ、う、え? い、いや……! だめです……私は王さまにお仕えする身……!」


格子の隙間からどうにか召使の服の端でも掴もうと、王子は必死に手を伸ばします。
召使はいやいやと身を捩り長いスカートをはためかせながら、どうしていいやら分からず動揺しています。
そこへ、頭を掻きながら一人の兵士が入ってきました。


「あ〜あ、すっきりし……って、なにやってるんですか王子!」
「あ、ああ、兵士さん! お、お助け下さい……!」
「ぴちぴちした初い子の次はおやじか…。おい兵士、召使をこっちに連れてこい」
「これから王子は食事をするんでね…可愛いスカート引き裂いて、狭くて柔らかくて気持ちいい、少女の媚肉をな」
「あ、いや、だめです! お、おやめくださいませ、王子!」
「だだだ、だめに決まってます! ほら、食事はもういいから、危ないから出ていきなさい!」
「は、はい! ありがとうございます……!」
「ああー、獲物が逃げていく!」
「ばか兵士! なにしてんだお前の護りは穴だらけか!」
「穴だらけでもなんでもいいですから、落ち着いて理性を取り戻して下さい王子〜! ……こりゃもう、女はこの塔に入れられねぇな…」


紫苑の憂いもいざ知らず、猛獣扱いをされながらも、王子は元気でした。








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