パラレルメルヘン

□いたずら王子と子犬と教師<前>
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これは、ここではないどこかの物語。




「いたずら王子と子犬と教師」










とある国に、豪奢なお城で遊び暮らすいたずら好きの双子の王子さまがいました。




双子の王子は生まれながらにして、遠く離れた国にも噂が及ぶ程の美貌をお持ちでした。
幼い頃から花嫁候補が絶えず、次々花嫁とに名乗りを上げてくるので、王さまは鼻高々でした。
王さまは

『今はいたずら好きのこの二人も、年頃になれば美しい花嫁をめとり、手に手を取ってこの国を統治するだろう。自由ができるのも幼子の頃だけ。せめていたずらが治まるまでは、二人を悠々と育てよう』

そう思い、二人を自由にしてきました。




しかし。待てども待てども二人の王子のいたずら好きは治まりません。
それどころか年を重ね知恵を得て、成長するのに合わせるかのように、いたずらの度合いも上がってゆきました。
広い国を統べる力を持っている偉い王さまも、二人のいたずら三昧にはほとほと弱り果てました。

『こうもいたずらばかりに精を出すのでは、いつまでたっても国を任せることができないではないか。それどころか、花嫁を貰うこともままならない』

手に余る二人のいたずらっぷりに、王さまは王子を教育してくれる腕のある教師を捜すことにしました。




王さまの命により、国中の有名・有能な教師が片っ端から集められ、王子さまの教育に当たりました。
けれどどんなに名高い教師にも、王子はいたずらを仕掛けました。
やんちゃな子供を育てる腕を持った数多の教師も、二人のいたずらの巧妙さには適いません。
厳しい教師も優しい教師も音を上げて、次から次へと王子さまの教師を辞めていきました。
王さまは自分の国の評判を落とすことを恐れて、他の国から教師を呼ぶこともできません。
あっという間に教師は底をつき、国には有名な教師がいなくなってしまいました。




さてさて哀れな王さまは、遂に頭を抱えて唸り出しました。

『ええい、この国のどこかに王子を更正できる者はおらんのか!』

家臣もうなだれ、王さまも諦めかけたその時。

『恐れながら、王さま』

一人の門兵が王さまの元へやってきました。

『風の噂に聞いたのですが、城壁に程近い田舎の城下街に、腕の立つ教師がいるのだとか。名は知られていませんが、田舎ではその教師を知らぬ者はいないといいます。いかがでしょう?その者を、一度呼び寄せてみては』

王さまは半信半疑でしたが、背に腹はかえられません。
藁にも縋る思いで、その教師の元へ使いを出しました。




有名な教師がすべて敗れた今、頼れるのは無名なその教師、一人だけです。
果たしてその教師は、二人のいたずら王子さまをまっとうな人間に育てることができるのでしょうか…?










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