6テキスト

□イヴへの贈り物
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「ネズミネズミ、聞きたいことがあるんだけど、質問してもいいかな?」

「突然なんだ、紫苑」

「君は毎回舞台に上がるたびに、たくさんのプレゼントを貰ってくるよね」

「ああ、貢ぎ物な」

「今まで貰ったプレゼントの中で、思い出に残ってるものってある?」

「思い出? どれも、大切なファンから頂いたものですから。すべて愛しく、大切ですよ?」

「どこまで本心なんだか……。じゃあ、今まで貰った中で、一番高額なものは?」

「……NO.6内の高級住宅地にある、庭付き犬付き一戸建て」

「なにそれ」

「はっきり身分は明かさなかったけど、NO.6官僚かなんかからの貢物だろ。有り難くもなんともない。どうせ監視されるんだろうし。おおかた、おれを独占したいとかいう浅はかな願望をお持ちだったんじゃないですか。そいつのイヴの理想を覆さないように、丁重にお断りした」

「……。うーんと、じゃあ貰う頻度の高いものは?」

「食品と衣類」

「ふーん。普通だし、助かるものだね」

「くすっ、甘いよ紫苑。西ブロックに、そんなまともな代物貢ぐ奴はいない」

「と、いうと?」

「怪しいお薬入りの食品。我が目を疑うような衣類。それ食ってどうにかなったところを襲うとか、次の舞台にはこの衣装を纏って出てくれとか、そんなとこだろう」

「……」

「媚薬、麻薬、毒薬、誘引剤、睡眠薬、催眠剤、麻酔薬、アルコール……あいにく狂愛的なファンが多くて。命を奪ってまで側に置いておきたいって思考の方までいるんだよね。愛され過ぎるのも困りもの。衣類はましな奴は着るけど、あとは換金な」

「どんな服、なんて怖くて聞けない……。少しはまともなファンはいないの?」

「そりゃあいるさ。貢いでくるのは金の自由が利く奴だけ。純粋に好んでくれる市民は、なけなしの金で劇場に来てくれるからな。貢ぐ余裕なんてない。ま、舞台に払う金が、おれにとってはプレゼントみたいなもんだけど」

「じゃあ、素直に貢がないで下さいって言えばいいのに」

「い、や。中身はどうあれ、プレゼントって嬉しいもんだし。金のある奴はじゃんじゃんイヴちゃんに使って下さい」

「……捻くれ者」

「なんとでも罵って下さい。そういや、やっと稼いだ金をはたいて時々観劇に舞台に来てくれていた女性がいたな。自分の身なりに金をかける余裕はなくてみすぼらしいから、恥ずかしくてイヴの近くには行けない。だから、いつも劇場の一番後ろの席から見てくれていた」

「へぇ、よく知ってるね」

「支配人から聞いた。そんなこと言わないで、側まで来てほしかったのにな。彼女のことは、例え一番離れた席にいたってよく見えた。……でも、いつからか姿を見なくなった。どうしてしまったんだろうな」

「そうなんだ……。でも、きっといつかまた姿を見せてくれるよ。いつか、必ず」

「ああ……そう願う」

「じゃあ最後に。今一番もらえると嬉しいプレゼントは何?」

「紫苑が使えるもの」

「え、本当か?」

「いや、違うな。紫苑に、使えるもの。さっき言ったろ? 怪しいお薬入りの食品、目を疑うような衣類。今まではとりあえず受け取って、支配人や裏市場に流したりしたんだけど。今なら、紫苑に使ってみたいな。あ、大人の玩具もいいかも」

「……持って帰って来たら怒るからね。逆に、ネズミに使ってやる」








08.04.20*
 

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