6学園テキスト

□自慢合戦
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「あれー、紫苑は? 会長、紫苑来なかった?」

「来たとしても、教えないわよ」

「えー。なんでそんなつれないことおっしゃるんですか会長様ー」

「うるっさいわね、何変なキャラ演じてるのよルサルカのイヴ様が」

「おれの前じゃ才色兼備お清楚会長しないんだ。猫かぶり」

「言ったわね、ドブネズミ。あんたが来てから、紫苑と過ごす時間がめっきり減ったのよ。私達、幼い頃から純粋に付き合ってきた幼なじみなの。あんまりでしゃばって、二人の仲を切り裂かないでもらえる?」

「会長と紫苑の“付き合う”って言葉は食い違ってる気がするけど? それに、紫苑は純粋かもしれないけど、あんたは不純に見えます」

「……そうやっていちいち事細かに分析するのも気に入らないわ。仕方ないじゃない、紫苑のこと愛してるんだもの。不純な意味で欲しいと思うのは、いけないことなの?」

「いや? 生理的なもんだし、いけなくはないさ。ただ、ね。紫苑はおれのもんなんで、欲望の対象にされるのは面白くないんだな」

「なによ、あんたなんて、まだたかだか数カ月一緒にいるってだけじゃない。紫苑の何がわかるっていうのよ!」

「何がわかるか、って? ふふ、ヤキモチ焼きで可愛いってこととか」

「(紫苑がヤキモチ焼き……? し、知らなかったわ……)
ふ、ふん。
もっと可愛い紫苑を、私は知ってるわ。幼い頃、紫苑は自分の名前をうまく発音できなくて、いつも自分のこと『しよん、しよん』って言ってたんだから」

「(な、なんだその可愛い情報……! ショタじゃないけど、やべーじゃねぇか)
じゃあ、こんなの知ってるか? 紫苑は泣く時いつも顔を背けて、泣き顔を見せないように泣くんだ」

「(なっ、いつもって何よ! 何して泣かせてるわけ!?)
そっ、そんなことより! 紫苑て小4の時に野良犬に追いかけ回されて、左太腿を噛み付かれたことがあるのよ! そして、その犬を撃退して紫苑を助けたのは、この私よ!」

「(あの傷痕には、そんないきさつがあったのか……知らなかった……)
ふふん。とっておき情報、知ってるか? 紫苑て感じすぎると無意識に両手で縋り付いてくるんだぜ」

「っ、知るわけないじゃないの、紫苑と寝てないんだから! そんなの自慢するべきこと!? 最低、このドブネ」


《ガラピシャ!!》


「何言ってるんだ二人共! 廊下まで丸聞こえだよ!」

「紫苑」

「はーいハニー」

「一体何を競ってるんだよ! ……ああ、聞かれた……絶対通り掛かった人に聞かれた……最悪だ」

「ご、ごめんね、しお」

「しおーん? そんなにむくれないで。事実なんだから仕方ないだろう? ほら、機嫌直して。お詫びに今日は、紫苑の好きなものなんでも作ってあげるから」

「……本当? なんでも?」

「ああ、なんでも。じゃあ早速、材料でも買いに行こうか? というわけで……くすっ。会長、まったねー」

「沙布、また明日」

「え、ええ……また明日……」



《ガララララ…》




「ド、ドブネズミのくせに紫苑を餌付けして……く、悔しいー!」









08.09.10*

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