☆佐助×幸村☆

愛しのダンディズム
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「まさむね」


幸村がシャツに隠れた指先を政宗に向ける。


「違うだろ。オレはお前の主人だから『政宗様』って呼べって言っただろうが」


政宗は少しだけ厳しい口調で幸村を諭す。なる程、こうゆう風に叱る訳だ。


「まだ出来立てだからな。知識も知力も低いんだよなぁ」



「可愛い弟が出来たみたいでいーんじゃないの?」


伊達には弟が一人居るが家族仲が良くない為、弁護士の片倉さんと暮らしていた。

母親と相当折り合いが会わなかったらしく、家出した後も片倉さんと一緒に暮らし始めた後も仕送りはあれど家族とまともに会話さえしてないと言う。


たまに弟とは話すらしいが、弟を溺愛している母親に隠れてのやりとりなのでなかなか長くは話せないと以前零していたのを思い出した。


「弟…か…。」


幸村の頭の上に政宗の手のひらが乗る。

その時、暗い影を落とした眼差しが静かに幸村に下ろされていたのに、オレは全く気付かなかった。

幸村も然り、多分オレ達が話ている事なんて半分も分かってないに違いない。


なんにせよ伊達は幸村の出来栄えに満足していない様だ。オレからすれば十分だと思うけど。


「とにかく洋服着せてあげたら?」


いくらなんでもワイシャツ一枚は可哀想だ。しかもこの大きさ、きっと片倉さんのシャツに違いない。

そこらへんにあった服を適当に着せたんだろう。


「いいんだよ、どうせまた脱がせんだから」


といって伊達は白いシャツの襟元を掴むと下へ引っ張った。

なる程、胸元までボタンを留めてないからシャツは幸村の肩を滑り床にストンと落ちる。


「うわっ!!変なモンみせんなっ!!」


オレはロボットの裸体に驚き慌てふためく。幸村の体には立派に男の一物がくっついていたからだ。


「ロボットにそんなもん必要ないんじゃないの!?」


「いや、やっぱり『完璧』がいいだろ?」


いやいやいや、
其処までリアルじゃなくてもいいし!!


「触るか?ここはオレ的に上手く出来た所なんだ」


「誰が触るか!!」



「機能も完璧で…」



「説明とか要らねえから!!てか普通に触るなよ!!」


伊達は屈むと幸村の男の子な部分を手のひらに乗せて嬉しそうに説明し始める。特殊回路がどうとか配線をこうしたとか。膀胱用の管がどうのこうのとか。


「伊達ちゃん、もうやめてよーなんか変態みたいだし」


「変態じゃねえよ、作ったのはオレだぞ。ちゃんと弄れば膨らむ…」


「だ・か・ら。その発言を止めてってば!!」



ついに半泣きでキレてしまった。人間に近い造りというのはよくよく分かった。だがロボットに必要な機能じゃないんじゃないか?


「とりあえず、幸村が凄いのも伊達ちゃんが凄いのも分かったよ。とりあえず洋服着せてあげてよ」


弱々しい声でのお願いは伊達ちゃんに伝わったみたいだけど、着せたのはやっぱりさっきのワイシャツで。幸村は相変わらずキョトンとしているし伊達ちゃんは次は何を学習させようかと考えてるばかりだった。


コーヒーでも入れてくると言って部屋を出る伊達ちゃんは何やら計算式をぶつぶつ唱えていて、その後ろを裸足の幸村がペタペタ音を立てながら一緒に付いて行った。


オレは一人、他人の家のリビングに残されて黒いレザーのソファーに勢い良く腰を落とす。


ため息を尽きながら先程の幸村を思い出すと、自分の中の嫌な記憶がぷかりと浮かび上がる。


体に合わない大きなシャツ、靴がないから裸足で歩いた。


飢えて体はガリガリに痩せこけて、
誰も自分を見てはくれない。見開かれた大きな眼差し、無垢な為に人を恨む事すら知らなかった。

自分の状況を理解出来ず、施設の人間に拾われるまで人間らしい生活が出来ず…。







(…おっと、いかんいかん。オレ様とした事が…)



佐助は暗い記憶に素早く蓋をしめる、同じタイミングでリビングの扉が開いた。


「悪い、コーヒー切らしてたんだ。紅茶でいいかぁ」


上品なデザインのプレートの上にティーカップと紅茶用のポットを乗せて伊達ちゃんが入ってくる。


「…あれ、幸村は?」


さっきまで伊達ちゃんの後ろにいた幸村の姿が見えない。


「ああ、洋服渡してきたから今着替えてんじゃねぇか……って、おい。」


伊達ちゃんが声を荒げる。入り口の方向に振り返ると両手に衣類を持った幸村が頼りない足取りでリビングの入り口に立っていた。


洋服を渡されたはいいがどうやって着るのか分からないといった様子で、手元の衣類から視線をあげた表情は子犬が困惑しているみたいだ。


伊達ちゃんは何も出来ない幸村に苛立っているのか、大股で近寄って幸村に洋服を着せようとTシャツを持ち上げる。
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