☆佐助×幸村☆

逆らえない
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その日の夕方、ニューヨークにいる友人から一本の電話が入る。


近日、伊達の研究していた分野の学会がロスで行われるから参加してみたいか。という内容だった。


伊達が崇拝する学者も参加するとあって、即座に参加すると伝えて電話を切る。


すぐさまダイニングルームに向かい、小十郎にその事を話そうとドアノブに手を掛けた。



「小十郎、今度ロスで学会があるから飛行機のチケットを―……。」



伊達は最後まで話さない内に、目に入る光景に絶句した。



「小十郎!!!」



「なんです?騒々しい…。」



騒々しいどころの話じゃない。
あれだけ言ったのにまだわからないのか。


小十郎は伊達が開発した高性能人型ロボットに食事を取らせている最中らしく、ダイニングテーブルには小十郎が作ったハンバーグにライス、サラダ、スープが陳列している。


ロボットは椅子に腰掛け、隣に小十郎が座っているのだが問題は小十郎がロボットに『飯を食わせている』事だ。



それも白いナプキンを首に掛けさせ、切り分けたハンバーグをフォークに差して小十郎自らロボットの口に運んでやっている。


赤ちゃんなら母親が『アーン』させて食べさせている情景なのだが、小十郎がやたらロボットを甘やかし、食事も着替えも風呂も歯磨きもほとんどを助けてやるため、ロボットがいつまでたっても成長しない。



故に小十郎には『自分の事は自分でさせるように』と、よくよく言ったばかりだというのに。



「また食わせてやってる!それじゃあ幸村が成長しねぇじゃねえか!!」



ダシダシと音を立てながら二人に詰め寄るが、ロボットの幸村はキョトンとしているし、小十郎に至っては伊達に言われたのが不快なのか凛々しい眉をひそめる程だ。



「仕方ないでしょう。幸村一人で食事させてたら日が暮れますよ?」



「だからって甘やかしていいってもんじゃねぇ!…おい、幸村。ちゃんと自分で飯を食うようになれよ!!」



幸村は伊達を見つめてから小十郎へ視線を向け、次に小十郎が持つフォークに視線を落とした。



「ふォーク」




「そうだ"フォーク"だ。それ持って、自分で食べる!」



幸村が完成し、数日が経った。
計画だとそろそろ日常的な作業は一通り出来るようになっているはず。



だが幸村は伊達の予想よりもだいぶ知能の成長が遅い。



それに対して伊達は苛々を募らせ、小十郎は新しい弟が出来た感覚で甘やかしている。



伊達に対しても過保護ではあったが、伊達が成長してから始めての『手の掛かる子供』に、小十郎は手取り足取りであれこれ自ら率先して世話を焼いていて、伊達はそれが気に食わない。



「無理するなよ、幸村。」


「甘やかすな!」



小十郎はだいぶ幸村が気に入っているらしい、栗色の髪の毛を移植した頭を犬の様に撫でている。



幸村は切り分けたハンバーグのかけらをフォークの先で突っつく仕草をした。まだ力の入れ方や細かい作業が苦手な証拠だ。


以前も同じように一人で食事をさせた時、持っていた金属のスプーンを折り曲げてしまったし、カップを持ち上げた時は手のひらで割ったりしている。



それ以来、傷ついてはいけないと、小十郎はプラスチックの食器で食事をさせているのだが、物を切り分けたり魚の小骨を取ったりといった作業は未だに出来ていない。



結局、みている伊達が業を煮やして、小十郎が幸村に食事させるのを見ているしかなかった。



「…このままじゃあ、いつまでたっても成長しねぇな…」










伊達の呟きは二人の耳には入らなかった。
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