☆佐助×幸村☆
□愛しのダンディズム
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佐助×幸村パラレル
【愛しのダンディズム】
「紹介する。幸村だ」
「よろしくでござる」
人懐っこい、始終笑顔なのだろうその青年は、眩しい位可愛いらしい(同性にそう表現するのは嫌だけど)笑顔で答えた。
「よろしく…て、コレなに?」
オレは多分物凄く呆れた表情をして『ゆきむら』と呼ばれた男を指差す。なんと言ってもその格好だ。細身…と言っても筋肉はあるみたいな、まだ未成熟な身体には男物の白いワイシャツを着ているだけの姿。
ボタンは胸元からやっと留まっているから肌がべろんと露出しているし、宙に浮いてる両手はワイシャツに隠れている。
袖が長すぎるんだろう、手から先は地面に向かってうなだれ、お化けみたいにぶらぶら垂れ下がっていた。
裾から見える太ももから下はすらりと伸びていて、陸上やってる女子みたいとか思った自分は多分馬鹿だ。
「何って、前に言ったろ。人型ロボット作ってるって。」
「まさかマジだったの?」
友人である伊達はマニアックな物が大好きで、趣味が高じて博士号を持っている位の工学者だ。
最近は『ロボットを造ってみたい』とか言ってたがまさかマジだったとは…。
「最初だからな、ちょっとバカなんだけど。鉄腕ア○ムくらいなら力はあるぜ」
「その格好で空とか飛ぶの?」
オレは馬鹿にした口調で訪ねる。白いワイシャツ着た高校生か中学生くらいの男が空を飛んでるなんてシュールだが面白い。卑猥な物をちらつかせてるから即監獄行きだろうけど。
「空は飛べねぇな。でも力は強ぇぞ。トラック位なら持ち上げられるだろうな」
伊達政宗は細い縁の眼鏡を外して少し背の低い『作品』の頭を優しく撫でる。その姿はまるで犬と飼い主だ。
青年も嬉しそうな顔をしていて、本当にロボットなのかと疑う。
「触ってみろよ、本当に人間みたいなんだぜ」
「…いや、いい。遠慮する」
オレは丁重に断ったが、政宗は強引に触れさせようと腕を引っ張る。
「いいから触れって」
「いいって!ほら、俺様不器用だから傷つけたら悪いし!!」
「なに怖がってんだよ、なんにもしねぇよ」
ついに折れて恐る恐る肩を掴んでみる。布越しならというオレの要求を政宗が渋々呑んだからだ。
「…あ、」
オレは息を呑んだ。
それは『本物の人間』のように暖かく、骨や筋肉の付き方も完璧。
オレはゆっくりと手を上へ移動させて顎から頬のラインを指の先でなぞった。
擽ったそうに目を細める幸村だが動かずオレの動きを観察している。
すべすべした頬は少し乾いていて少し冷たい。
眼球の動きも滑らかで、小さな血管や肌に浮く筋なんかも人間みたい。
「…な、人間そのものだろ」
「うん…。」
オレは新しく珍しい玩具をみつけた子供のように色々な所を触っては完璧なロボットの性能を確かめる。勿論、一般的にいやらしい場所は触ってない。
「ただ一つ難儀な所があって…」
「え?これで完璧なんだろ?」
オレはその時、幸村の手首や腕の動きや関節を色々な方向に曲げたり伸ばしたりしていた。
一般的に限界の所まで伸びるし限界の所までは曲げられる。
腕を捻るとやはり一回転する事もなく、半回転くらいで内部の骨組みが止まる。
これを完璧と言わずなんになる、と政宗を見た。
「うーん…感情のパターンが少ないんだよな」
政宗はいつも考え事をすると手を顎に当てる、今もその姿勢で幸村の前に立つ。幸村はぽかんとした表情で主人を見上げた。
「多分経験値が少ないからだと思うんだが…」
「ならなんでもやらせたらいいんじゃないの」
「まぁな…」
幸村はじっとして二人を交互に見つめる。
そして最後にオレで視線を止めると微かに小首を傾げて言った。
「お主、名前はなんと申す」
「……、伊達ちゃん。なんでこの子ござる口調な訳?」
「うーん…。性格回路が日本史の情報とリンクしちまったみてぇだな。問題ないからそのままにしちまった」
オイオイ…。
そんなんでいいのかよ。
「なぁ、そちは…」
幸村はつんつんとオレの制服を摘んで名前を聞いてくる。
出来れば可愛い女子にやってもらいたい。
「俺様は佐助だよ。猿飛佐助。」
「さるとび…?」
「うんうん」
反応が子供みたいで思わずにっこり笑ってしまう。自分に害が無いなら怖くない。オレは単純にそう思っていたのだ。
「さすけ」
「はいはい?」
「さすけ」
「う〜ん、発音は『佐助』だよ、『佐助』…言ってごらん」
「さ…スケ」
「違う違う。『佐・助』」
「さ―…」
「おいおい、猿飛。余計な知識詰めんなよ」
政宗は慌てて止めに入る。