めいん
□花見弁当
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その日の沖田はすこぶるご機嫌だった。珍しく仕事をこなし鼻歌を歌いながら昼時になると屯所を飛び出して行った。
「んだっ?総悟の野郎。真面目に働いてると思えば消えやがった」
食堂で頼んだ牛丼にこれでもかとマヨネーズを絞り出していた。その隣にきつねうどんと魚肉ソーセージを盆に乗せた山崎が座った。
「昼飯の後、そのまま巡回らしいですよ。あの張りきりようは旦那とデートじゃないですか?」
その言葉に土方は途端機嫌が悪くなった。
待ち合わせ場所を目指して川沿いの桜並木を沖田は足取り軽く歩いていた。
今日の昼飯は桜を見ながら旦那とデート。忙しくて休みのない沖田に昼に花見をしながら弁当を食わないかと旦那から言ってきたのだ。
旦那からデートを誘ってきたのは付き合ってから初めてで、例えそれが花見のダシとして使われても嬉しい出来事だったのだ。
どうせなら旦那の喜ぶ顔が見たいと沖田は一流割烹に予約して松花弁当を二人分用意したのだ。やはり沖田と言えども好きな人の前では格好つけたい。
麗らかな川を眺めれる土手を降りてゆくと、想い人はごろりと寝転んでいた。