short
□別れ
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少女視点
ヒュー…
風が吹き抜ける音が聞こえる。
肌に当たる風は冷たく、冬の終わりはまだ遠い。
私には、春は来ない。
だってこれから死ぬのだから。
一人の少女がいるのはビルの屋上の端の端。
柵を越えた少しの足場に辛うじて立っている。
きっかけは、ほんの些細な事。
親とのケンカ。
――あんたなんて生まれてこなければ良かったのよ!
頭の中で響く母親の声。
「そう?生まれてこなければよかったんだ?」
分かったよ。
じゃあ、生まれてきた事を詫びて死んであげる。
喜んでくれるよね?
人が行き交う昼下がり。
一人の少女がこの世から、飛び立った。