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□London Bridge
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London bridge〜



この街の空は…
いつもどんよりしている。

人気のない路地で辻馬車から降りた私は一瞬にして陰気な空気に呑み込まれた。


路地の壁にもたれかかる正気を無くしてしまった人達のその目が私をさす。
私の足は自然と早くなった。



この路地を真っ直ぐ進むと大通りにでた。
この広い通りにはたくさんの商店が並んでいる。その為、いつでもここは人で賑わっている。
スレ違う度に肩がぶつかる事など当たり前。


足早に歩いている私の前を小さな子供達が横切り小さな路地へかけていった。
そこからは子供達の愉しそうな歌声が聞こえてくる。


『…懐かしい歌遊び』




ロンドン橋 落ちる 落ちる
ロンドン橋 落ちる、落ちる
さあ 見てごらんよ お嬢さん



そう…
その橋はこの都市の歴史。
時代と共に幾度もの災難に遭い橋が落ちる。
その度に新しく架けなおされる。

…この橋の下を流れる広く長い川は犠牲になった大勢の者達の魂を呑み込んでしまう。



幼い頃、寝る前の私に母が話してくれた…―


「橋が落ちる前夜には、この橋に黒く大きな鴉がたち集う」のだと。


物思いに耽ていると、いつの間にか目の前にClock twroが見える、そして時を知らせる重音の鐘の音が身体中に響いた。



私事をすませ、屋敷に戻り仕事を始める。
手を動かすだけの作業のせいだろうか、不意に昼間の子供達の歌が私の頭の中をグルグルと回想している。


そして私は自然と歌を口遊んでいた。



「愉しそうな詩ですね…」




私の背後から聞こえたその声に、何故かゾクリとしてしまった。
声の主に顔を向けると、

妖艶に微笑む黒の燕尾服を着た男が立っていた。







(ロンドン橋)
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