風シリーズ
□だーれかなっ?
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並盛高校文化祭一般公開日当日。リボーンと風さんに無理矢理引き摺られ、俺は嫌々ながら並高の門をくぐった。姉の為に金を使うのもボスの役目だ、とリボーンは偉そうに言っていたけれど、それ違うよな?お前、ボスの役目だって言いたいだけなんじゃないの?そうだよなぁ?絶対そうだよなぁッ!?
「まぁそう言わずに。普段拝めない刹那さんのスーツ姿が見られるんですから、ね?」
風さんにそう言われたけど俺は絶対に納得しないぞ。大体それは貴方が見たいだけでしょ風さん。最近、姉さん自慢の彼氏は欲望に忠実になってきた、と俺は思う。ズルズルと引き摺られ、3年校舎に到着すると、一つの教室の前に女子生徒の人だかり。一体なんの群れだ、と、一緒に来ていた獄寺くんと骸と顔を見合わせる(山本とお兄さんは部活で試合があるからと欠席。いいなぁ…)
「3-Aの教室みてぇだな」
「3-Aと言うと…確か刹那さんのクラスですね」
「まさか…」
嫌な予感がした。もう帰っていいかな本当に。
『さぁそこの美少女の群れ達!!あんまり群れてるとヒバリに咬み殺されるぞー!!』
「いやぁー!!こわーい!!」
『だが安心したまえ。私が君達を守ってあげる。さぁ君達を守る私はだーれかなっ!?』
「刹那先パーイッ!!」
『ん〜?聞こえないなぁ。もう一度!だーれかなっ!?』
「刹那先パーーイッ!!!」
『だーれかなっ!?』
「刹那先パーーイッ!!!」
女子生徒の歓声と共に聞こえる我が姉の声、我が姉の名前。校舎が悲鳴で揺れるんじゃないか、と言う中、我がバカ姉は更に叫んだ。
『刹那を呼ぶ声が小さいなぁッ!!!』
また懐かしいネタを!!ちらり、と風さんを見れば、なんとも複雑そうな顔をしている。そりゃそうだ。男の群れなら全力で嫉妬して殴り飛ばして自分のものだと言えるけど、群れは女の子だ。女相手に嫉妬するのもみっともない。けど、彼女が女の子にモテるなんて彼氏としては複雑だろう。
「あれ程愛想を振り撒くな、と言ったのに…」
あ、れ…?風さんもしかして怒ってる?凄いいい笑顔なのに全く笑っていないんだけど。風さんは渇いた笑いを零すと女子生徒の群れを掻き分けて教室へ入って行った。
『刹那を呼ぶ声が小さい「刹那さん」Σうわ風さん!?』
「おや…思っていたよりスーツ姿が色っぽいですね」
『風さんにそう言ってもらえると嬉しいなぁ』
「ふふ。それよりも刹那さん。あれ程私以外に愛想を振り撒くな、と言ったはずですが…」
始まった。見えないけど状況はよく解る。きっと笑顔なのにちっとも笑顔じゃない風さんに姉さんは青くなってるはずだ。
『開店前のマイクパフォーマンス!!愛想は振り撒いてない!!』
「だーれかなっ!?、じゃないですよ全く、」
『あ、はは…(風さん怖い…)』
これはもうお仕置き、とか言って大勢の前でキスするつもりだな、と俺は悟った。
「刹那先パイはみんなのものよ!!」
「そうよ!!彼氏だからって独り占めは許さないんだからッ!!」
まさかの女子生徒からの反乱。ここは大人な風さん、きっと引き下がるに決まって、
「黙らっしゃい少女共。刹那さんは私の彼女なのですから彼氏である私が独り占めして当然です」
引き下がらなかった。つーか言い返したよあの人!!大人気ないな本当に!!風さんの言葉に女子生徒からブーイングの嵐。けど風さんは気にしていない様子で姉さんに尋ねた。
「刹那さん。貴女の彼氏はだーれかなっ?」
『うっ…(可愛い…)』
「だーれかなっ?」
『風さん、』
「はい」
『大好きッ!!』
「え?刹那さ…ッ」
きゃあーッ!!、と今日一番の黄色い歓声が上がった。刹那先パイ私にもキスしてぇ!!なんて言葉が聞こえる辺り、姉さんから風さんにキスした様だ。
「全く…貴女って人は…」
『風さん。貴方の彼女は、』
だーれかなっ?
(勿論、刹那さん一人だけです。と、風さんが言った後、またも黄色い歓声が上がった)
「やってられないですね…」
「骸に同感」
「つか…女共はさっきまで風にお姉様を独り占めするなとか言ってたのに公認していいんスかね?」
「いいんじゃないんですか?それにしても何処でもいちゃいちゃするのはやめて欲しいですね」
「仕方ないよ。バカップルだもん」
「その口調ムカつくぞ!!」
後にこれをネタに、風さんがアルコバレーノ達にいじられたのは言う間でもない。
(だーれかなっ!?じゃねぇぞコラ!)
(ちょ…リボーン、貴方ですね言い触らしたのはッ…)