風シリーズ

□やっぱりそうくるか
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困った事になった。ただ愛する彼女を迎えに行こうと歩いていただけなのに、一体どうしてこんな事になったのだろう。こんな柄の悪い連中に絡まれる覚えはないのだが…


「だから人違いだと言っているでしょう?」


何度同じ言葉を言っただろう。彼等は一向に理解してはくれない。無駄な争いはしたくないし、早く行かないと刹那さんが心配する。


「もう一度言います。私は雲雀恭弥ではありません」


全くいい迷惑だ。彼は無駄な争いが好きで恨みを買い過ぎている。しかしどう見たって別人だと気付くだろうに、目の前の連中は気付く気配もなければ引く気配もない。


「そんなにそっくりで別人だと?」

「流石の雲雀恭弥もこの人数を相手にビビったか」


彼等の中で笑いが起こる。どうやら私を人違いだと認める気はない様だ。ならば仕方がない。さっさと片付けて可愛い彼女の元へと急ごう。どうせ恨みは私ではなく雲雀恭弥へと向くのだから。


「仕方ありませんね…全員まとめてかかって来なさい」

『風さん?』


構えた瞬間だった。忘れるはずのない大好きな彼女の声が耳に入って来た。振り返ったら長い髪を緩く二つに縛った刹那さん。
いつもはおろしているのに珍しいと思ったが可愛い。あぁもう…可愛い!


「刹那さん、」

『遅いから電話したんだけど全然出ないし、急な仕事でも入ったのかと思って帰って来たんだけど…風さんも喧嘩なんてするんだね』

「いえ…どうやら雲雀恭弥に間違えられているみたいで…危ないので下がっていて下さい。すぐ終わりますから」


彼女を巻き込む訳にはいかない。正面を向いて連中と向き合うと、彼等はどういう訳か一斉に深々と頭を下げた。


「お久し振りです!!刹那さん!!」

「は…?」


頭を下げたままの野郎共は野太い声で挨拶をした。誰に?刹那さんに、だ。…あのですね、もしかしなくても貴女のお知り合い、ですか?


『あんた達誰の許可を取って暴れ様としてんのよ』

「あの刹那さ、」

『彼の何処がヒバリに見えるって言うの?』

「刹那さ…」

『こりゃ制裁決定だね』

「………」


なんだか有り得ない発言をしているんですが耳が悪くなったのだろうか。いや、イーピンから聞いていたので知っています。刹那さんは喧嘩が強い、と。そりゃ私みたいなマフィアと絡む男の恋人ですし、ボンゴレ10代目の姉ですし、守護者を一声で招集したりしているので強いとは思いますよ。
度胸もあると思います。六道骸に食ってかかったり、ザンザスに怯えもせずはっきりとものを言ったり、雲雀恭弥を舎弟の様に扱ったり…あれ?ひょっとして怖い女性なんじゃ…


「刹那さん」

『ん?なぁに?』

「刹那さんのお知り合い…な訳ないですよね」

『うん。私の舎弟達だよ』

「あ、舎弟は雲雀恭弥だけじゃΣえぇッ!?」


舎弟!?今、舎弟って言いましたよね!?え、舎弟?見た所、彼等はただのチンピラや暴走族の類ではなく、どっちかと言えば私と同じ裏側の世界で生きる…所謂ジャパニーズマフィアと言う奴だ。舎弟と言う事は彼等からしたら刹那さんは姐御と言う奴で…


「さ、流石ボンゴレ10代目候補に名を連ねただけはあります…」

『で、こいつ等どうする?怒っておこうか?』

「いえ…もういいです…」

『良かったねあんた達。お許しが出たよ』


彼女がそう言うと彼等はほっとした様に頭を上げた。


「しかし刹那さん。雲雀恭弥じゃないならこのお方はどなたで?」


彼等の中のボス…この場合若頭とでも言うのだろうか…とにかく一番偉そうな男が彼女に尋ねる。刹那さんは私の腕に絡みつくと最高級の笑顔で言った。


『私のダーリン』

「刹那さん」

『なに?』

「襲っていいですか?」


もう襲いたい。今すぐ襲いたい。可愛すぎる。


「成程…刹那さんのダーリンって事は俺達から見れば目上のお方と言う事か…」

「ちょっと待ちなさい。嫌な予感がするのですが…」

「刹那さんのダーリンとは知らず人違いまでしてしまったとは…御無礼をお許し下さい」

「ちょ…」

「兄 貴 !!」












やっぱりそうくるか
(彼等の忠義に満ちたその眼差しにくらり、と眩暈がした。まさかジャパニーズマフィアに懐かれるとは…)



『さすが風さん。最強の7人アルコバレーノだけある』

「アルコバレーノ!?マフィア界最強と言われるあのアルコバレーノがダーリンとはさすが姐御!!」



(風さんがヤクザの兄貴になった)
(姉さん…風さんになにさせるつもり?)
(刹那さんの恋人だと知ったら懐かれました)
(姉さんヤクザを舎弟にしてるの!?)
(さすがお姉様!!)
(よし隼人。私の左腕になる?)
(俺の守護者を勧誘するな!!つーか右腕は誰なんだよ!!)
(私の右腕は山本なのさ)
(マジっすか!!ははっ、こりゃ大出世だな)
(10代目の右腕とお姉様の左腕…生きてて良かったッ…!!)
(泣いたぁああッ!!!)
(刹那。お前新しくボンゴレの同盟ファミリーを作れ)
(リボーン!!余計な事言うなよ!!)
(ファミリーは風さんと作るから)
(え?)
(子供は二人かな…)
(そっちのファミリーなら喜んで)
(このバカップルめ…)
 

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