風シリーズ

□時間よ戻りやがれ
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8年振りだ。俺が刹那に会うのは8年振りだった。赤い着物に身を包んだ刹那は俺の記憶の中の刹那とは違って一言で言えば女、だった。隣のカスが顔を赤くしたので机に叩きつけてやった。俺の後ろに立つカスが妖艶だ、とほざいたので裏拳をお見舞いしてやった。オカマがあの着物素敵だわ〜と言ったのを聞いて「お前が見るのはそこなのか」と言いたくて仕方なかった。だがこれはおかしい。8年前の刹那はどっちかと言ったら男みてぇだった(俺より暴君だったんだぞ信じられるか?)なのに何でいきなり女みてぇになってんだ?(いや女だ女)


「よく似合ってますよ。その振袖」

『やだ、風さんってば…』


…ネタばらしした途端に何だあれは。まぁなんだ、ぶっちゃけると俺は刹那が好きだ。ガキの頃からよく知っているし、将来は刹那と結婚するもんだと思ってた。刹那もそう思ってると信じてた。だけどこれはない。なんだってこの女は嵐のアルコバレーノなんかと付き合ってんだ?さすが刹那だ。普通じゃねぇ。


「嘘じゃありませんよ。とても綺麗です」

『風さんと同じ赤なんだ、この振袖』

「お揃いですね」


とにかくうぜぇ。嵐のアルコバレーノが、じゃなくて刹那と嵐のアルコバレーノのバカップル振りがうぜぇ。もうあれだ。余所でやれって感じだマジで。


「次は是非私の為にその振袖を着て下さいね」

『風さんの為ならドレスでもメイドでもナースでもバニーでも!!』

「ぶはッ!!テメェのドレスなんざ見たくもねぇ。だがナース服で注射ならされてやってもいい」

『誰もザンザスの為に着るなんて言ってないよ』

「そうですよ。私の為に着るんですから」

『じゃあ今度ナース服着て注射してあげるね』

「どちらかと言えばナース服を着た刹那さんに私が注射をしたいです」

「………」


なんだこのアルコバレーノ…ただの変態だぞ。確実に変態だぞ。おい刹那、本当にいいのかそんな奴で。


「刹那さんは猫耳も似合うと思いますよ」

『本当?尻尾もつけちゃうよ?』

「あぁやっぱりダメです。そんな可愛い子猫がいたら食べてしまいますから」


おい嵐のアルコバレーノ。お前欲望の塊だな。と言うよりだな、家光の前でそんな堂々と食ってやる的な発言すんなこのドカスが。


「でも出来たら何も着ていない刹那さんがいいです」

「人が沢山いるんでちょっとは自重して下さいよ風さん!!」

「ツナの言う通りだな。お前、欲望の塊になってんぞ」

「失礼ですねリボーン」


沢田綱吉も苦労してんだな…俺はそう思った。コイツの苦労に比べたら俺の怒りなんざ大した事ねぇ。だが10代目の座は譲っても刹那は譲れねぇ。相手がアルコバレーノだろうがなんだろうが俺には関係ねぇ。この俺から刹那をかっさらうってんならかっ消すまでだ。


「おい刹那」


俺との婚約はドッキリでも半分は本気だぞ。誰が何と言おうと俺は刹那以外の女とは結婚しねぇ。ガキの頃からそう決めてたんだ。


「テメェこの俺と「まさか結婚しろ、と言いませんよね?」……」


なにこのアルコバレーノさん。怖ぇんだけど。超笑顔の癖に全く笑ってねぇんだけど。10の称号を二つ持つさすがのこの俺もこの男が怖ぇ。迂闊に何か言ったら命を落とすかもしんねぇ。こいつ優しそうな顔して腹ん中真っ黒だろ。絶対ぇ腹黒だぞ。


『ん〜…風さんと会わなかったらザンザスと結婚してたかもね』


当然そうなると思ってたし。と刹那が言った。やっぱり刹那もそう思ってたんだな。だけどな刹那…その言葉、俺には嵐のアルコバレーノがお前の運命の人だ、と言われてる気がしてならねぇ。


「それはそれは…出会えて良かったです」









時間よ戻りやがれ
(とてつもない敗北感。だが俺は最後まで諦めない男・みつ……いやいやXANXUS!!)




刹那の腰を抱き寄せて額にキスをした嵐のアルコバレーノ。幸せそうに笑う刹那を見てまたも敗北感を感じた。




(俺は諦めねぇぞ)
(ムダです。潔く諦めなさい)
(邪魔者はかっ消す!!)
(よろしい。返り討ちにしてあげます)
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