風シリーズ
□私の手で握り潰してあげましょうか
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「はあぁああ〜…」
弟分の家の前に車を待たせ、門の前に座り込みながら長い溜め息を吐いたらロマーリオ以下数名の部下に笑われた。呑気だなお前等。幾ら9代目の頼みとは言え俺は気が重い。溜め息も自然と出るってもんだ。
「ボース。そんなシケた面すんな」
「わーってるよ。…でもなぁ…刹那ブチ切れるぜ絶対…」
それにあのアルコバレーノ…風だって黙っちゃいねぇだろうな、と思う。何つったって二人は自他共に認めるバカップルであってお互いに二人の邪魔をする存在には優しさの欠片も見せない(特に風は怒らせたら超厄介。さすが我が師、リボーンの同胞)…しかしまぁよくも刹那を落としたもんだ、と感心する。俺だってずっと狙ってて会う度に熱烈な求愛をしてきたってのに知らぬ間にかっさらわれてた時は自棄酒と共に三日三晩泣き続けた。一体どんな手を使ったのか聞きたいもんだ。だけどそれ以上に感心するのは風の我慢強さ。あんないい女を目の前にしてよく押し倒さねぇよな。俺ならとっくに食って孕ませてイタリアの教会で結婚式挙げてるぜ全く…
「しっかし…9代目も人が悪いよな。幾ら刹那の顔が見たいからって何もこんな事しなくてもな…」
はぁー…と、もう一つ溜め息を吐いた所で準備の整った刹那が家の中から出てきた。誰の見立てかは知らねぇけど牡丹があしらわれた赤い振袖がよく似合ってる。これが有名なヤマトナデシコってやつ?
「よ、刹那。綺麗だぜ」
『 死 ね 』
「そう睨むなって。俺だって本意じゃねぇんだから…あ、でも綺麗ってのはマジ」
何なら今ここから俺がお前を連れ去ってもいいぜ?、刹那の肩を抱いて耳元でそう囁いたら後ろから肩を掴まれた。振り返ったら満面の笑みのはずなのに何故か笑っていない風。俺の目には風が金毛九尾の白狐(中国最強の妖怪)を背負っている様にしか見えない。風は無言で俺に訴えている。
死 に た い 様 で す ね 。
「は…はは、」
「リクエストがあれば何なりと…私のお勧めは鞭打ち、ですかね…」
勿論、使う鞭は貴方の物です。それとも全身の皮でも剥がしてあげましょうか。蠍の詰まった壺に無理矢理押し込むのも一興ですね。
ど ん な 拷 問 だ !!
「あぁ、それからもう一つ…」
「い"っ…」
風は俺のネクタイを引っ張ると耳元に口を寄せて小さく言った。
「刹那さんは私のものなので気安く触れないで頂けますか」
「す、みません…」
「解ればよろしい」
まさに古今東西妖怪の親玉、と言っても過言ではない目で俺を見る風。すげぇ怖い。しかもすげぇ嫉妬深い。多分、いや絶対に!!この先刹那に手を出す男は命を無くす事になる。俺、この男だけは何があっても絶対に怒らせねぇって今ここでイエスに誓う。
『ねぇ待ってるんだけど。早くしなさいよ種馬』
「たねッ…はぁー…お姫様の機嫌をこれ以上損ねないうちに行くか…」
車の後部座席に乗る刹那をエスコートするつもりで手を差し出したら、またも肩を掴まれた。俺なにもしてないッ、なにもしてないッ!!そう思いながらゆっくりと振り返ったら刹那に差し出した手を千切れる程の強さで握られた。
「ははは。私の言った事をもう忘れましたかこの種馬」
「いや、跳ねう「なにか?」…イエ、ナンデモアリマセン…」
満面の笑みの風の後ろにはやっぱり金毛九尾の白狐が見える。腕にぎりぎりと爪を立てられて俺はもう今すぐ意識を失いたい気分に陥った。
「あぁ…私のお勧めは鞭打ちでしたが取りやめましょう」
「へ…?」
風はそう言うと笑顔で俺の下半身を指差して言った。
私の手で握り潰してあげましょうか
(青褪める俺の後ろでは刹那が物凄い勢いで引いていた)
「もう一度言います。刹那さんは私だけのものです」
その言葉に引いていたはずの刹那が頬を赤らめて嬉しそうに笑ったのを見て風も頬を赤くした。
(可愛い…)
(…(なんなんだコイツ…))
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