風シリーズ
□あぁ、成程…
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「ごめんなさい、刹那お腹が痛くて寝てるのよ」
アルコバレーノ定例会議でラル・ミルチとアリアにこっぴどく怒られてから一日。学校へ彼女を迎えに行ったら親切な男子生徒が今日は彼女は休みだ、と教えてくれた。理由を聞けば何でも腹痛だとか…親切な男子生徒にお礼を言って沢田家に足を運べば彼女の母親が困った様に私にそう言った。風邪なのか、と尋ねれば、毎月の事だから大丈夫よ、でも機嫌が凄く悪いのよ、と返された。…それは未だに私に怒っている、と言う事でしょうか…すると中から嵐の守護者の姉、毒サソリのビアンキが出て来て私に言った。
「悪い事は言わないから今日は帰りなさい」
死にたくなければ、と言い残して家の中へと戻って行った。
「とりあえず入って。風さんの顔見れば機嫌も良くなると思うから」
「すみません、お邪魔します」
母親に促され家の中に入る。そして彼女の部屋へと向かうべく階段に足を乗せると、あっお師匠さま!と私を呼ぶ声。振り返れば我が弟子イーピンの姿。
「イーピン、久し振り…でもないですね」
彼女と出会ったあの日からは、私の仕事が入っている日以外はほぼ毎日と言っていい程顔を見ている。
刹那さんの具合は大丈夫か、とイーピンに聞けばだらだらと汗を流し始める。
「※¥*★◎#&℃!!」
刹那さん今日とっても機嫌悪い、お師匠さま来たら追い返せって言われた、お師匠さま帰る!と、服の裾を引っ張られ彼女の元へ行くのを阻止される。いやそれよりも私が来たら追い返せ…来たら追い返せ…追い返せ…追い………私は何故そこまで刹那さんに嫌われてしまったのでしょうか…
「ただいま…って風さんッ!?」
訳が解らないまま私を帰そうとするイーピンに困っていると彼女の弟が友人達と共に帰ってきた。こんにちは、と私が言うと彼は慌てて靴を脱ぎ捨て家の中に入ると私の腕を掴んで言った。
「風さん、悪い事は言いませんから今日だけは姉さんに会わない方がいいです!!会うならせめて明後日にして下さい!!」
「あの…」
「姉さん今不機嫌週間だから!!」
「ふーん。そうなんだ」
必死で私を帰そうとする彼にも困っていると、納得した様な声が聞こえたので玄関へと視線を向ける。やっぱり今日も居た、雲雀恭弥(私の天敵です)
「今日は帰るよ。まだ死にたくないからね」
雲雀恭弥はそう言うと私を見て鼻で笑う。
「そこまで言われれば普通は気付くものだけど…貴方も鈍いね」
そのバカにした様な言い方と笑い方がまた何とも言えず腹立たしいですね!!とてつもなく殴りたい衝動に駆られるも雲雀恭弥は彼女の弟を一瞥すると玄関を開けて振り返った。
「刹那にお大事に、って伝えておいて。じゃあね」
「あ、ハイ…さよなら」
玄関が閉まったのを確認するとヒバリさん勘が良過ぎ…と言う彼女の弟。
「風さんも!!ヒバリさんみたいに察して下さいッ!!」
「いや…何を…!!」
「何をって、だからバンッ」
突然二階の扉が激しい音を立てて開くと青白い顔をした彼女が階段をゆっくりと降りて来た。これは…これはかなり機嫌が悪い様だ…相当怖いのだろう、彼女の弟はこれ以上にない程顔を青くした。すみません、私もかなり怖いんですがッ…
「ヒィイッ!!姉さんごめんッ!!」
『あ?なにが?』
非常に不機嫌そうな彼女が怯える私の顔を見ると何も言わずに抱き着いて来た。…可愛いんですが…
『風さん、』
「どうしました?」
『昨日は嫌いなんて言ってごめんなさい』
そう言うとぎゅっと背中に回された腕に力を込めてきた。何でしょうかこの可愛い生き物は…いえ、私の恋人なんですが、こんなに可愛い恋人がいていいのでしょうか。堪らず抱き締め返そうとした時、彼女が私から離れて台所へ向かった。そんな彼女の背中を見て悲しいとか寂しいとか思ってませんから…(嘘です。泣きそうです)
「あら、もう大丈夫なの?」
『薬飲みにきた…もう無理』
そう言うとがさがさと薬箱を漁り、箱に入った錠剤を2錠口に入れコップの水で流し込むと唸りながら机に倒れ込む。
『毎月の事ながら…死にそう…』
「なきゃないで困るでしょ?」
『まぁそうなんだけど…』
こればっかりはなぁ…、と辛そうな彼女に近付いて尋ねる。
「そんなに具合が悪いんですか?病院へ行った方が良いのでは?」
『え?病院行く必要はないんだけど…乙女週間だし』
乙女週間?あー…彼女の言葉にちょっと恥ずかしくなりました。
「おや…では腹痛とはつまり…」
「生理痛よ。それくらい察しなさい」
あぁ、成程…
(今まで気付かない私もどうかしてました)
これもいつか風さんの子供を産む為の試練!!と叫んだ彼女にこれでもかと言うくらいどきどきさせられました。
(出産の痛みは生理痛の10倍らしいわよ)
(…やっぱ産まない…)
(え…?(産んで欲しいんですが…))
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