風シリーズ
□食べてしまう事にします
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『あの…私の大好きな風さん』
「はい」
『ほんの少しでいいので手伝って下さい。お願いします』
課題のプリントと睨み合う事1時間。彼女の右手に握られたシャーペンは一向に動かされる気配はなくプリントは未だに空白が目立つままだった。と言うよりは空欄が一つとして埋められていない。
「出来ない相談です」
にこり、と微笑んで隣に座る彼女にそう言うと彼女は半分泣きそうになる。時刻は午後3時。そろそろ小腹も空いて来たのか彼女は突然叫んだ。
『あ"ぁーッ!!何で私は中国語を選んだ訳!?どうせ選ぶなら歴史とか芸術とかさぁ!!もっと色々あったじゃん!?何故に中国語!?』
「それは刹那さんが私に中国語で恋文を書きたいから、ではありませんでしたか?」
『そうでした。風さんの為に頑張ろう。超頑張ろう』
そして彼女は先刻とは別人の様に真剣な表情でプリントに向かう。あぁ、愛されてますね、頬杖をつきながら彼女の真剣な横顔を見る。だが30分後、
『〜〜〜〜ッ』
「全く右手が動きませんが…」
左手にクッキーを握ったまままたもや机に伏せる彼女。左手は休む暇なくクッキーを取るのに右手は全く動かない。
「そんなに解らないものですか?」
『あのね、私の頭の作りは風さんと違うのですよ』
「成績は悪くないと母上がおっしゃっていましたけど…」
『中国語は別。全く解らないアルヨ』
「……まずは無駄な私語をなくす為にその口を塞ぐ必要がありますね」
そう言うと彼女の頬が赤くなった。…そういう意味で言ったのではないのですが…けれどそんな彼女が可愛くて思わずキスをしてしまう。唇を放せば未だに赤い顔の彼女。二度目のキス。軽く触れただけですぐに放した唇をもう一度塞ぐ。何度も繰り返すうちに課題よりもキスに夢中になってしまう。時折漏れる彼女の吐息と甘い声で、ぎりぎりまで保たれていた理性も限界を超える。唇を塞いだまま彼女を押し倒し、制服のリボンに手を掛けたその瞬間にそれは起こった。ガタッと物音がしたので驚いて左を向くと、真っ赤な顔をしてこちらを凝視するボンゴレ嵐の守護者の姿。
「『あっ…』」
「もも…申し訳ありませんお姉様!!お邪魔しましたぁああッ!!!」
直角に腰を折ってそう言ったと思えば嵐の様に階段を駆け上がる音。その数十秒後に大きな叫び声がはっきりと聞こえた。
「ウソォ――ッ!!?風さんが姉さんを!?姉さんが風さんを押し倒してたの間違いじゃないの!?」
「風がお姉様を押し倒す瞬間をしっかりとこの目で見ました!!間違いありません!!」
「やるなぁ〜!!絶対ツナの姉さんから押し倒すと思ってたのに」
「ちょっとあの中国人咬み殺してくる」
「ヒバリさん落ち着いて!!今行ったら姉さんに殺されますから!!」
「『……………』」
上から聞こえてくる会話にお互い顔を赤くして見つめ合うと苦笑い。恥ずかしそうに笑う彼女を起こした所で扉の隙間から4人の少年達が私達の様子を見てる。彼女は気付いていないみたいだが、私にはしっかりと見えています。やれやれ、ともう一度苦笑いを零し、彼等に気付いていないふりをして起こした時に握った彼女の手に指を絡めてもう一度キスをする。
『さすがにここでは嫌、かも…』
熱でもあるんじゃないかと言うくらい赤い顔をした彼女がそう言う。
「それもそうですね。課題も残っていますし…」
ちらり、と机の上のプリントに目をやると突然重い空気を纏った彼女が私の胸にもたれかかってくる。
『邪魔が多いよね…課題とか隼人とか…』
もうちょっと風さんと二人っきりでいたいのに、と頬を膨らます彼女を抱き寄せる。
「確かに…では次は二人きりの時に貴女を…」
食べてしまう事にします
(そろそろ限界です)
そう言えば耳元で残さず美味しく食べてね、と言われ逆に私の顔が熱くなった。
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