風シリーズ

□嫉妬
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課題が終わらないと泣き着かれ、あまりにも可愛い事を言う彼女に負けて課題を手伝う事に。彼女の家の居間で課題のプリントにペンを走らせていると、彼女の母親がお茶を運んで来てくれた。


「ごめんなさいね、手伝ってもらっちゃって」

「いいえ。刹那さんが喜ぶなら大した事ではありません」


申し訳なさそうに私にそう言う母親に私は笑って返事をした。普段からしっかりやらないから風さんに迷惑掛けるのよ、と母親に言われ苦笑いを零す彼女。


「手伝って貰ってたら身につかないわよ。風さんに教えて貰いながら自分の力でやったらどうかしら」


母親のその言葉に彼女はぎくり、と肩を揺らす。娘がもう一回高校3年生をやっても良いとおっしゃるか母上殿、あらいいじゃないどうせ大学に行く訳じゃないんでしょう?、と親子の会話を聞いて私は暫く考えた(留年しそうな事については敢えて触れません)


「確かに母上の言う通りですね。私が手伝っては刹那さんの為になりません」

「そうよね〜」

「私が教えてあげるので課題は全て刹那さんがやりましょう」

『あの…提出明後日なんだけど…』


教えて貰いながらやっても絶対終わらないから!!と言う彼女に私は返す。


「では徹夜です」

「あら、じゃあ風さんはお泊まりね!!」

「お世話になります」

『風さん、手伝って?』

「そんな可愛くお願いしても今回ばかりはダメですよ」


刹那さんの為になりません、そう言えば私の弱点を点いて来た。


『だめ…?』

「うっ…」


彼女の上目遣いでのだめ…?に滅法弱い私。彼女もそれを解った上でやっているのは百も承知。だけどここは心を鬼にする必要があります。


「だ・め!!です」

『…ヒバリに頼んだ時は手伝ってくれたのに…』

「……………」


ぼそっと言ったつもりでもちゃんと聞こえていますよ刹那さん。そうですか、どうやら私を怒らせたいみたいですね。


「刹那さん。夕飯までに5枚プリントを終わらせて下さい。母上、今日は刹那さんの好きな唐揚げでお願いします。もし夕飯までに5枚終わらなかったら夕飯はなしです。私が貴女の分の唐揚げも食べますからそのつもりで」

『風さんの鬼!!悪魔!!』

「何とでも。ほら、早くやらないと唐揚げにありつけませんよ?」

『ぐっ……くっそォオオッ!!!』











〓2時間後〓


『無理…絶対無理…留年決定』


ようやく1枚終わった所で私が間違いはないかチェックを入れているとお茶菓子のクッキーを手に持ったまま机に伏せてぶつぶつと言う彼女。このペースではとてもじゃないけれど明後日の朝までに終わりそうにはない。可哀相だがこれも彼女の為。甘やかすばかりが恋人ではありませんからね。彼女を見て溜め息を一つ吐くと何やら騒がしくなってきた。どうやら彼女の弟とその友人達が帰って来たらしい。


「ただいま…って、風さんこんにちは」

「こんにちは」


彼女の弟が挨拶してきたので私も挨拶を返す。姉さん死にそうだけど何やってるんですか?と尋ねる弟に課題です、と苦笑いで答える。そんなやり取りをしているとぞろぞろとよく知った顔が居間へと入って来た。


「ちわッ!!…何やってんすか?」

「お邪魔しますお姉さ…お姉様!!どうかされましたか!?」

「邪魔するよ…なにやってんの刹那」


最後に入って来た男の声を聞いてぴくり、と彼女の肩が揺れた。


『ヒバリぃいいッ!!!』


彼女はそう叫ぶと事もあろうに雲雀恭弥に抱き着いた。彼は驚いた様子だったが頬を染めると抱き着いた彼女を抱き締めた。私の目の前で。


「なに?どうしたの?」

『課題が終わらない…手伝って』


彼女がそう言うと彼は軽い溜め息を吐き、仕方ないね、刹那の頼みなら。と返事をする。その言葉に彼女はきらきらと目を輝かせるとヒバリ大好きッ、ととんでもない事を言った。不愉快だ、非常に不愉快だ。貴女の恋人は雲雀恭弥ではなく私です。私は立ち上がり彼女の側まで行くと彼女を雲雀恭弥から引き剥がして私の腕の中へと閉じ込めた。


「申し訳ありませんが手伝って貰っては刹那さんの為にならないので…あぁそれから…」


ムスッとする彼に更に続ける。


「刹那さんは私の恋人なので気安く触らないで下さい」


顔を青くする4人の男を前に刹那さんも私以外の男に触らない様に、そう笑顔で優しく言えば青い顔をしてはい、ごめんなさいと謝る彼女。


「では課題の続きをやりましょうか。二人っきりで」


そう言って彼女の肩を抱いて元居た場所へと座らせる。先刻と少し違うのは私が彼女の向かいではなく隣に座った事。ぴったりとくっつく様に彼女の隣に座るのは何かあってもすぐに抱き締めて止められる様にする為。


『風さん近い…』

「近過ぎるくらいが丁度良いです」


近過ぎても問題はないでしょう?私は貴女の恋人ですから。そう言えば、世界一の恋人です。と何とも嬉しい言葉が返って来た。










嫉妬
(貴女を誰にも渡すつもりはありませんよ)



再びペンを持った彼女を抱き寄せて、雲雀恭弥に見せつける様に彼女の頬にキスをした。




(咬み殺されたいの?)
(よろしい、かかって来なさい)
(課題は!?)
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