風シリーズ

□何気ない貴女の言葉
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彼女を迎えに並盛高校まで来たのは良いけれど今日に限ってなかなか出て来ない彼女を門に寄り掛かりながら待つ。婚約者事件からは毎日迎えに来ているので生徒達(特に男子生徒)にすっかり顔を覚えられてしまっている様子。今日は半日のはずなのにもう一時間以上校舎の中から出て来ない彼女を待ちながら何かあったのでは(告白されたりしているんじゃないだろうか)と不安な気持ちになってきて思わず溜め息を吐いてしまった。


「沢田の彼氏だ」

「いつも思うんだけどさ、沢田の彼氏って雲雀恭弥に似過ぎじゃねぇ?」

「沢田って雲雀恭弥と仲良いもんな」


女王様と奴隷的な意味、でなら大変仲がよろしいと思いますよ、私の刹那さんと雲雀恭弥は。それはもう彼を殺したいくらいに。そんな会話をしながら私を見る男子生徒達に悪意を込めてにっこりと笑い掛けると顔を青くして目を逸らした。


「い、いや…やっぱ沢田の彼氏の方が大人って感じするよなッ」

「沢田がベタ惚れなのも解るよなッ」


解ればいいんです解れば。しかし遅い。一体何時間待たせるつもりなのだろうか。これはもうお仕置決定ですね。今日は家には帰しません、と考えていたら母国語が中国語の私のダーリン発見ッ、と彼女の声が聞こえたので振り返る。すると物凄い速さで走りながら風さん助けて!!と叫び飛び着いて来た。


「どうかしましたか?」


飛び着いて来た彼女を抱き締めながらそう尋ねれば、私の首に回した腕にぎゅうっと力を込めてきた。可愛いんですが。可愛くて仕方ないんですが!!すると彼女は小さく言った。


『人生最大のピンチ』

「…まさかまた婚約者が出来たとかそういう最悪の『課題が終わらないんだけど』…は?」


課題?今課題と言いましたか?そう聞き返せば泣きそうな顔で頷く彼女。


『さっき教室出た時に先生に捕まってね、授業中に寝るなって怒られた上にサボりまくってたプリント30枚にプラス20枚の刹那ちゃん特別課題プリント頂いちゃった☆』

「はぁ…」

『ちなみに提出は明後日までなんだけど…中国語解らないから風さんに手伝って欲しいなぁ、なんて…』

「お礼は?」

『私の身体で』

「手伝いましょう」


にっこりと笑ってそう言えば彼女に不審な目を向けられた。


「何か?」

『…風さん最近性格変わらない?』

「そうですか?」

『うん。何か最近の風さんえっちだよね』

「…私も男ですから…」


男ですから。大事なので二度言いました。否定出来ないのがまた悲しいですが可愛い彼女と二人っきりで何もしない方がおかしいです。


「でも何故英語ではないんですか?」


一般の公立高校で中国語等教えるものなのだろうか、と不思議に思い尋ねると意外な答え。


『選択授業で取ってるの』

「あぁ…成程。でも解らないなら中国語を選ばなくても…」

『だって…』


彼女の手の中にある50枚のプリントを一枚手に取り、思った事を口にするととんでもない返事がきた。


『いつか風さんに中国語でラブレター書けたらいいなぁって…』


その言葉に思わず持っていたプリントを落とす。恥ずかしそうに頬を染めながらそんな事を言うなんて反則過ぎます。固まる私の顔を覗き込んで私の名前を呼ぶ彼女を強く抱き締めた。


『風さん?』

「全く…貴女って人は本当に…」


どうしてそう可愛いんですか。なんですかもう!!たかだか恋文の為だけに中国語を選んだだなんて、そんな事を言われて私が断れると思いますか?私には無理です。


「刹那さん、愛してます」


私は何度も貴女に恋をします。












何気ない貴女の言葉
(貴女に愛されていると感じる時、何とも言えない幸せを感じます)



私も愛してます、笑いながらぎゅっと私の背中に腕を回した貴女が何よりも愛しく思います。.
 

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