風シリーズ
□姉さん、貴女って人は…
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「ごめん姉さん、もう一回言ってくれる?」
『だからキスしたい』
「ははは…意味わかんねぇよ!!何だよそれ!!」
守護者を全員呼び出して俺の部屋に居座ったかと思えば膝を抱えていきなりキスがしたい、等と意味不明な事を言い出す姉に思わず突っ込みを入れたくもなる。見なよほら、全員姉さんを見てぽかんとしてるよ。みんな口半開きだよ。
「あのさぁ、キスがしたいって…どうせ風さんといつもしてるんでしょ?何を今更、」
『まだしてない』
「へぇ、そうなんΣえぇッ!!?」
姉さんの言葉に叫ぶと同時に骸とヒバリさんが飲んでいたジュースを吹き出す。ごほごほと二人一緒に咳き込みながら涙目になっていく彼等を見て相当驚いたんだな、と心の中で思う。
「ちょ…っと、付き合って3ヶ月も経つのにキスもしてないの?」
君が言ってるの、あの三つ編みの中国人でしょ?と、ヒバリさんが口を拭きながら姉さんに尋ねる。
『悪い?』
「いや悪いも何も…ねぇ?」
「僕に振られても困ります」
『別にキスなんかしなくたって生きていけるからいいもーん』
「じゃあしなくていいじゃん。何を悩んでるのさ」
ヒバリさんがまともな事を言ってる。
姉さんが風さんと付き合ってるって知ったのはつい最近だけど、まさかまだ何もしていなかったとは驚き。でもまぁ相手が風さんだし納得と言えば納得、かもしれない。
『そこで君達男子諸君にどうしたら可愛い彼女とキスしたくなるか聞こうと思って』
「今さり気なく自分を可愛いって言わなかった?」
『私が可愛くないとでも言いたいの?ヒバリ』
「可愛くて美しい、さすが10代目のお姉様です!!」
「獄寺くん獄寺くん。あんまり煽てると調子に乗るからやめてあげて」
蹴りをもらったのは言う間でもない。ヒバリさんに至っては髪の毛引っ張られて泣きそうになってるし…本当に…こんな凶暴な姉の一体何処に惚れたのか風さんに小一時間聞いてみたい。
「てっとり早くキスをするならやはり押し倒して強引にしてしまうのが良いかと思いますが」
『それいいね』
「よくないだろ!!風さん押し倒してどうすんだよ!!」
『で、出来たら押し倒されて色々されたいよね、色々…』
「自重しろ!!色々って何だよ色々って!!」
『あんな事とかこんな事とか…』
「刹那きみ欲求不満なの?」
『…もうこの際風さんと同じ顔のヒバリでもいいやとか思う自分を殺したくなってきた』
誰かこのバカ姉どうにかして下さい。つーか今すごい問題発言が聞こえたんだけど!!ヒバリさんでもいいってそれ絶対ダメでしょ!?何かやけになってるよこの姉。風さん、キスくらいしてあげて本当に!!
「なら、僕が彼の代わりをしてあげるよ。ほら、早く押し倒して」
ヒバリさんなに言ってんの!?ダメだから!!そんな事言ったらこのバカ姉暴走するから!!とか心の中で忙しなく突っ込みを入れ続けていたらヒバリさんの手が姉さんの頬に触れた。
「刹那、」
『な、に…』
「好き」
僕にしておきなよ、と言いながら姉さんに顔を近付けるヒバリさん。いくら何でも姉のキスシーン目撃とかとてつもなく嫌なんだけど!!いやそれ以前に止めないと…
「ヒバ、」
「何をやっているんですかこのクソガキ」
姉さんにキスしようとするヒバリさんを止めようと声を出し始めた瞬間、怒りの籠った低い声と共にヒバリさんが姉さんから引き離された。声の主を見ればかなりお怒りな様子の姉さんの彼氏、風さんだった。
「ワォ…惜しい」
「なにが惜しいのか聞いておきましょうか」
「きみより先に刹那の唇を奪うチャンスだったのに…って言ったら?」
「そうですか…死にたいんですか?」
あ、この顔はアレだ。私でさえまだしてないのに何を先にしようとしているんですかって顔。
『風さん』
「なんですか?」
『風さんとキスしたい。つーかエッチしたい』
「そうですか。少し待っていて下さいね、まずはこの彼を葬ってから………はい?」
姉さん直球すぎ!!しかもこんな大勢の前で何て事をッ…姉さんの言葉にヒバリさんの頭を掴んだまま顔を真っ赤にする風さん。
『だめ…?』
「は、いや…あの、」
じりじりと迫りながら上目遣いで首を傾げる姉さんに風さんは壁まで追い詰められる。そして俺達はしっかりと目撃してしまった。追い詰められて逃げ場を無くした風さんの唇を姉さんから塞いだ瞬間を。
姉さん、貴女って人は…
(風さんが姉さんに押し倒される日はそう遠くない、とその場にいた俺達は顔を見合わせて頷いた)
事の顛末を知ったリボーンに風さんがからかわれません様に、と俺は祈った。
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