風シリーズ

□手紙に綴られた君に
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弟子のイーピンから送られてくる手紙にはいつも同じ人の事が必ずと言って良い程書かれている。お世話になっているらしいボンゴレ10代目の事、彼の家庭教師であり私の同胞でもあるリボーンの事、歳の近いランボと言う男の子の事、私にそっくりだと言う雲雀と言う少年の事。そしてもう一人…














「! おや、」


買い物帰り本当に偶然通った公園。その公園の砂場でよく見覚えのあるおさげ頭の少女を見つけた。後ろ姿でもわかる弟子のイーピン。砂を集めて楽しげに遊ぶ我が弟子に微笑ましくなり進路を変えて砂場へと足を運ぶ。


「久し振りですね、イーピン」


砂場へ座り込み小さな弟子と目線を合わせる。イーピンは顔を私へ向けるとワンテンポ置いてお師匠様!と笑顔で言った。その言葉に私もはい、と返す。


「何をして遊んでいるのですか?」

「※△▼#@!!」

「そうですか、砂で城を作っているんですね」


そう言えばこくこくと頷き砂をぽんぽん叩き始める。暫くその様子を近くで眺めていると、イーピン水持って来たよ〜、と女性の声が聞こえて来た。イーピンと同時に横を向くと小さな子供用のバケツを持った女性が走って来る。
彼女はイーピンと共にいる私を見ると驚いた様子で口をあんぐりと開けた。そんな彼女に苦笑いを零しながら小さくお辞儀をすると、イーピンが嬉しそうに刹那さん遅い!と言った。刹那さん?はて何処かで聞いた事のある様な…


『ごめんごめん。途中ランボの襲撃に遭ってさ。つーかヒバリは何やってんの?』

「は…ヒバリ…?」

『群れるの嫌いなヒバリも子供と遊んだりするんだね』

「いや、あの…」


人違いですよ、彼女にそう言おうと声を出すと状況を察したのかイーピンが私を指差しながらイーピンのお師匠様、と彼女に言った。


『へぇ〜、イーピンのお師匠様なんだ。ヒバリかと思った』


そう言いながらイーピンと共に砂の城を作り始める彼女を見て意外にもすんなりと受け入れられた様だと思ったのも束の間、彼女はぴたりと動きを止めると物凄い勢いで顔を上げて私とイーピンを交互に見始め、最後に私を凝視したかと思ったら指を差して叫んだ。


『イーピンのお師匠様ぁああッ!!?』

「はい」

『うっそマジで!?マジでヒバリにそっくり!!』


うわぁドッペルゲンガーみたい、と言う彼女に余計苦笑い。そして気付いた様に慌てて自己紹介を始めた。


『あ、私は沢田刹那です』

「風、です」


聞いた名のはずだった。彼女はいつもイーピンが手紙に書いてくるボンゴレ10代目の姉なのだから。いつも弟子のイーピンがお世話になってます、いえいえこちらこそお世話になってます、これからもよろしくお願いします、等と世間話に花を咲かせる。


「刹那さん、貴女の事はイーピンから送られて来る手紙にいつも書いてあるのでよく知っていますよ」

『え、何を書かれているのか気になるんですけど』

「いつも遊んでくれるとか、一緒に寝たりお風呂に入ったり、喜怒哀楽が激しいとか、おかずの唐揚げを弟と取り合ったり、よく寝坊をするとか、怒ると怖いとか…」

『しょうもない事ばっかり…』


渇いた笑いを零す彼女を見ておかしくなる。他にも色々知っています。笑顔が可愛いとか、男性にモテるとか、意外と喧嘩が強いとか…恥ずかしそうに俯いて砂をぽんぽんと叩く彼女が愛らしい。


『イーピン、顔が砂だらけだよ』


砂塗れのイーピンの顔を見てそう言うと、イーピンは着ていた服の裾で顔を拭く。
だが余計に汚れてしまったイーピンの顔を見て彼女はけらけらと笑い出す。私も思わず笑ってしまった。


『顔真っ黒だよ。しょうがないなぁ』


笑いながら自分の服の裾でイーピンの顔を拭く彼女を見つめる。はい、綺麗になったよと言ってにっこり笑った彼女にどきり、と胸が高鳴った。



"刹那さんは怒ると怖いけれど笑うととても可愛いです"



あぁ、確かに手紙に書かれた通りです。笑った顔がとても可愛らしい。出来たらずっと見ていたい、私の為に笑って欲しいと思ってしまう程に。


『風さん?おーい』


目の前で手を振られ我に返ると不思議そうな顔をした彼女と視線がぶつかる。動かないからぜんまいが止まったのかと思った、と私に向かって笑う彼女にまた胸が高鳴る。感情を隠す事には慣れているはずなのに不覚にも熱くなる顔を片手で隠す。


『風さん顔真っ赤…』

「△#※▼%♀¥*!!」

「なッ…イーピン!!」

『え、なに?何て言ったの?』


お師匠様、いつも手紙で刹那さんの事聞いてくる。お師匠様刹那さんがすき!!


こんなにも貴女を愛しく思うのは、送られてくる手紙に書かれた貴女をよく知っているから、なのでしょうか。弟子に言われて貴女を好きだと気付くなんて私もまだまだ修行が足りない様です。









手紙に綴られた君に
(知らぬ間に恋をしていた様です)



明日もここへ来たら貴女に会えるでしょうか。
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