風シリーズ

□そんな、俺達の非日常な日常
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風さんが退院した。


怪我をする前と同じように、風さんは我が家へやって来る。勿論、姉さんと一緒に。母さんは相変わらず大喜びで風さんを歓迎するし、獄寺くんや山本、ヒバリさんが家に来るのも変わらない。風さんが生死の堺をさ迷う以前と、なにも変わらない日常がそこにあった。一つ、変わったことと言えば…


『風さん、もう入院しちゃダメだからね』

「気を付けます…あぁ、でもまた刹那さんに看病されたいので入院するかもしれません」

『もー、そんなに看病して欲しいならいつでも看病してあげる』

「では、今夜は刹那さんの部屋に入院することにします」


二人のラブ度が上がったことと、風さんの変態度が上がったことだ(非常にウザい)二人のいちゃつきっぷりを見て、愛の力よ、と言い切ったビアンキに、仕方ないか、と諦める。庭で戯れているチビ達を見ながら雑談している二人の背中を見ていたら、聞き覚えのある陽気な声が聞こえた。


「まぁ!あなた〜!」

「奈〜々〜!!」


父さんだ。今度はどんな面倒事を持って帰ってきたんだ。


「退院したとは聞いていたが…アルコバレーノは不死身って本当だな」


父さんは縁側でいちゃつく風さんと姉さんを見るとそう言った。


「私が生きていたら都合の悪いことでも?」

「可愛い娘をたぶらかした男だしなー」


悪びれた様子もなく、父さんはそう言って二人の間に無理矢理割って座る。それを見た母さんが、二人の邪魔しないの!と、父さんを叱った。


『で、今度はなんで帰ってきたの?』

「刹那ちゃーん、相変わらず父さんに冷たくない?」

『普通だよ』


これが我が家における、父さんの正しい扱いかた、だ。


「刹那ももうすぐ卒業かぁ〜」


子供ってのはすぐに大きくなるなぁ、なんて、親らしいことを言う。卒業したら姉さんはボンゴレ門外顧問だと、ラルが言っていたのを思い出す。


「やっぱり風さんのお嫁さんになろうかなぁ」

「父さん、アルコバレーノには嫁にやらんぞ」

「ご心配なく。ちゃんと守りますから」

「とか言って死にかけた癖に〜」

「ははは…」


風さんと父さん、二人の間に冷たい空気が流れる。婿と舅の仲最悪になるの確定だよ。


『父さん、そこ退いてよ。風さんとくっつけないじゃん』

「くっつかなくていい」


そう言って父さんは湯呑みに手をつける。呆れた様子の姉さんは、床に手を置いて父さんの背後に手を伸ばした。それに気付いた風さんも、同じように手を伸ばす。父さんの背後で、二人仲良く手を繋ぎ、笑った。


「あらあら、」


母さんはその光景を見て、楽しそうに微笑んだ。姉さんが振り返って、俺達に向かって唇に指を立てた。

ナイショね、

そういう意味だ。獄寺くんと山本は互いに顔を見合せたあと、満面の笑みでOKサインを出し、ヒバリさんは無言で頷いた。リボーンとビアンキも笑っている。チビ達は不思議そうに俺達と姉さん達を見る。


そして、顔は見えないけれど、父さんも嬉しそうに笑った気がした。


「あっ!おててつないでるもんね!」

「ばっ…ランボ!!」

「※●〇■×¥$!」

「なっ…イーピン!!」


イーピンの言葉に、風さんが顔を真っ赤にする。暫く前に中国語をマスターした姉さんは、照れ笑いを浮かべながら嬉しそうに笑って言った。


『私もだよ』


父さんが泣きそうな顔をしてこっちに振り返った。







そんな、俺達の非日常な日常
(ずっと、こういう穏やかな時間が続くように、と俺は願う)




(お師匠様、刹那さんが好き!ずっと一緒にいたいって言ってた!)
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