風シリーズ
□胸が当たってます
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私と同じアルコバレーノ、ヴェルデの開発した新薬によって何故か赤ん坊の姿になってしまった私は、元に戻るまでの間沢田家でお世話になることになった。一つ屋根の下、刹那さんと同棲気分(新婚気分)が味わえる、と思ったのも束の間、今の自分の姿ではどう考えても母親と子供ではないか、と気付き激しい自己嫌悪に陥る。そんな私に刹那さんから願ってもいない言葉が掛けられた。
『風さん、ご飯の前にお風呂入っちゃおっか』
刹那さんと風呂、それは即ち未だ見ぬ刹那さんの裸体が拝める、と言う訳で…赤ん坊万歳。ヴェルデ万歳。…なんですか私は!!そんなに欲求不満なんですか私は。欲望と理性の狭間で悶々としているうちに、私の小さな体は刹那さんに抱き上げられ有無を言わさず風呂場へと連れて行かれる。刹那さんは楽しそうに私の服を脱がし、自らも服を脱ぐ。一枚一枚服を脱いでいく刹那さんを見て、赤ん坊の姿で良かった、と思わずにいられない。普段の姿だったら間違いなく襲っているでしょうから…しかしここで問題が一つ。
「刹那さん…せめてタオルで隠すとか…」
『え?ダメ?』
「なんと言うか…その…」
下から見上げる豊満な胸が圧巻です。良いものを拝ませて頂きました、ご馳走さまです。とは死んでも言えません。私は決心した。元の姿に戻ったらすぐに刹那さんを食べることにしよう、と。そして髪の毛や体を洗っている時に切実に思いました。やっぱり息子じゃなくて娘が良い、と…何故って、幾ら自分の息子とは言え、こんな美味しい思いをさせてたまるかっ!!あ、私が風呂に入れればいいだけですね。
『風さんさっきからなにを難しい顔してるの?』
湯船に浸かりながら刹那さんが不思議そうに私に尋ねてきた。
「ちょっと将来の家族設計を…」
『難しい顔をしたと思ったらにこにこしたり、かと思ったら怒った顔になったり…』
「刹那さんのことを考える時は頬が緩みっ放しですよ」
『も〜!!…私もだけど』
小さく呟いた声ははっきりと聞こえましたよ刹那さん。すれ違ったこともあったけれど、やはり二人、同じ気持ちの方が幸せも多く感じられる。
『ね、風さん』
「?、なんです?」
『私が風さんにキスしてみよっか』
何故!?何故いきなりキス!?刹那さんからキス?全裸で私を膝の上に乗せているのに、貴女は私を今この場で殺す気ですか!!
「な、何故…?」
『ほら、童話であるじゃん?王子様に掛けられた呪いがお姫様のキスで解けるって言うの』
「…そんなのありましたっけ?」
『…多分…』
つまり、刹那さんから私にキスをしたら薬の効果が切れて私が元の姿に戻るかも、と言うことだろうか。風呂場で元の姿に戻ったりしたら…きっと二人共湯あたりしそうですね…
『ものは試しに、ねっ』
「では…お願いし、」
します、と言い切る前に私の唇は刹那さんに塞がれた。そう言えば、初めてのキスは貴女からでしたね。唇が離れても特に変わったことは起こらない。ただ、私の心臓は破裂しそうな程高鳴っている。
『戻らないね…』
「…ですね…明日ヴェルデを締め上げ、」
また言い終わらないうちに、今度はザバーン、と音を立てて湯船の中のお湯が流れる。
『あ、』
見慣れた高さの視界、驚いた刹那さんの顔。自分の手や腕を見れば、よく見慣れた傷跡や大きさ。
戻った…?、そう思った時、刹那さんが湯船の中で勢いよく抱き着いてきた。
『戻った!!ヤバい私ってば凄い!!』
「あ、の…刹那さん…」
『なぁに?』
胸が当たってます
(覚悟はいいですか?)
「ここでは湯あたりするので部屋で…」
『え、風さんなんかヤる気満々…』
「嫌ですか?」
赤い顔をしながら首を横に振った彼女を抱き締める。
「夕飯よりも先に貴女を頂きます」
『えっち』
「私も男ですから」
勿論、夕飯の後も存分に頂きました。
翌朝、彼女のベッドの中で目覚め着替えようとした時に、服だけは元に戻っていなかったことに驚愕。背丈の変わらないリボーンに服を借りたのはいいけれど、着慣れないスーツにそわそわとしてしまい、刹那さんにホストみたいだ、と笑われた。
(せめて黒いスーツが良かったです…)
(それよりお前、昨夜刹那とヤってただろ)
(…リボーン…何故それを…)
(キスマークついてんぞ)