風シリーズ
□超直感
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『いいえ私は〜さそり座のおんぬぅあぁ〜♪』
それはそれは快晴の土曜日のことだった。我が姉、沢田刹那は自宅の庭でチビ達とヒバリさんを相手にリサイタルを開いている。俺はその様子を家の中から冷めた目で見ているだけ。
『お気のすっむっまっで〜わ〜らうがいいぅわぁあ〜♪』
でもさ、そのチョイスはどうかと思うよ。何故に演歌?姉さん自身は演歌の小節が得意だ、と言っているけど、得意なのは違う拳だと俺は言い切れる。そして姉さんは美川★一が異様に好きだ。何故かは解らないが彼(彼女?)がテレビに出ると食い付くように見ている。
「刹那。次、キューティーハニーね」
『あら、ナイスチョイスよヒバリ』
ヒバリさんからのリクエストに美★憲一の物真似で答える姉さん。姉さんはキューティーハニーが大好きだ。なんでも変身シーンで服が破れるのがエロくて良い、と大絶賛している。確かにあの変身シーンは思春期の男の子にはたまらない。何故か異様に興奮する。そしてヒバリさんもキューティーハニーが大好きだ。今度、並盛商店街であるイベントでキューティーハニーのキャラクターショーをやるとか寝ぼけたことを言うくらい大好きだ。
『ハニーフラーッシュ!!』
「随分ご機嫌ですね」
『ん?、ぎゃっ、風さん!?一体いつからそこに!?』
「さそり座の女の辺りからですが…」
『最初からじゃん…』
さすが姉さん、恥ずかしい所を彼氏にばっちり見られるなんてただ者じゃない。風さんはくすくすと笑いながら真っ赤になって俯く姉さんの顔を覗き込んで爽やかな顔をして言った。
「服は破れないんですか?」
風さん…まさかとは思うけど、貴方もキューティーハニーが好きなんですか。でもそこは姉さん、風さんの問い掛けに平気な顔をして返事をした。
『なら、風さんが破いてくれる?』
「おや、無理矢理なのが好きですか?」
『風さんになら何処でなにされても構わないよ』
「大胆ですね。では、ここで今から、」
「ストォオップ!!!」
止めるだろ。普通に止めるだろ。この二人は止める人間がいないと何処でも構わずとんでもないことを始めようとするんだから。俺が止めずに誰が止める。こういうのが風さんと姉さんの仲がなかなか進まない理由の一つ…いや、ひょっとしたら俺が知らないだけでもうそういう仲になっているかもしれない。風さんはやっぱり不満そうな顔で俺をじろり、と睨んだ。
「なんですか綱吉くん。刹那さんと私が愛し合うのは嫌なんですか?シスコンですか?」
「違いますよ!!別に風さんと姉さんがなにしようがいいですよ。ただ、人目のある所でやるなって言ってるんです。ねっ、ヒバリさん!!」
「僕は見えない所でも嫌だ」
ヒバリさんに振った俺が間違ってた。そう言えばこの人、姉さんに惚れてたんだよな。当の姉さんは風さんしか見えてなくてヒバリさんは眼中にないけど。
『所で風さん、どうしたの?』
そうだよ、風さんどうしたんだよ。連絡もせずに来るなんて珍しい。すると一体何時からいたのか、リボーンが機嫌悪そうに口を開いた。
「おい、いつまでいちゃついてんだ」
「これから仕事なので刹那さんに会いに来たんです。そのついでにリボーンを迎えに」
『リボーンと一緒なの?』
「はい。目的は刹那さんにいってらっしゃいのキスをして頂く為です。リボーンはおまけですよ」
かちゃり、とリボーンの銃が音を立てた。リボーンを怒らせると俺に皺寄せが来るからやめて欲しいんだけど。
「そう言う訳でしばらく留守にしますが浮気はしないように」
『…本当に行くの?』
「まぁ…仕事ですから、ね」
仕事、と言った風さんの言葉に俺は嫌な予感を覚える。風さんの服の袖口を掴む姉さんも俺と同じで嫌な予感を感じたんだと思う。俺は黙ったままリボーンを見る。リボーンも姉さんの様子が気になるのか、無言のまま二人を見ている。
『…ちゃんと帰って来る?』
「勿論です。帰って来たらすぐ会いに来ます」
だから待っていて下さいね、と言いながら、風さんは姉さんの前髪を掻き上げて額にキスをした。
「そろそろ行くぞ」
「はい。…では、いってきます」
『いってらっしゃい…』
いつも通り、優しい笑顔で手を振る風さん。それとは対照に不安気な顔で手を振る姉さん。
超直感
(風さんを止めろ、と頭の中で声が響くのに体が動かない)
『…嫌な予感がする、』
「……」
リボーンにど突かれる風さんの背中を見送りながら呟いた姉さんに俺は、大丈夫だよ、と言ってあげることが出来なかった。
(心配しなくても大丈夫だよ。あの中国人、殺しても死なないから)
(ヒバリ、あんた風さんをなんだと思ってるの?)
(仙人かなにかでしょ?)
(ひょっとして中国人は皆仙人だと思ってる?)
(………)
(図星か貴様)
(ヒバリさんって頭良さそうに見えてかなり頭悪いですよね)