風シリーズ
□未だ見ぬ未来
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「こら待て!!」
刹那さんと一緒に商店街を歩いていたらよく聞き慣れた声がしたので、彼女と一緒に振り返った。見れば綱吉くんが子供を追い掛けている。あの子供は確かボヴィーノファミリーのランボと言う子でボンゴレの雷の守護者だ。
「あっ!姉さん!風さん!ランボ捕まえて!!」
私達に気付いた綱吉くんは捕縛要請を出してきた。そうは言われても理由もなく捕まえるのもどういうものか…困って刹那さんを見たら彼女は踵を返す。
『どうせランボがツナのおやつ取ったとかそんな理由だから無視ムシ』
「はぁ…いいんですか?」
『いつもの事』
歩き始めた刹那さんを追いながらもう一度振り返ると、このケーキはランボさんのだもんね、と言う言葉。それを聞いて成程刹那さんの言う通り、と苦笑い。そんな私を見て刹那さんは、この後どうなるか教えてあげようか、と笑いながら私に言った。
『ランボが転んで飛び出た10年バズーカに被弾して大人ランボ出現』
10年バズーカと言うと確か被弾した者は5分間だけ10年後の自分と入れ替われると言う…10年後、私と刹那さんはどうなっているだろう。そう思いながら彼女の顔をじっと見つめる。
『なぁに?』
「いえ…10年後も刹那さんと一緒だといいな、と」
『当たり前じゃん』
そう笑って言った彼女に私も笑い返す。それは10年後も私を愛してくれている、と言っているんですよね。
「姉さん危ない!!」
『え?』
一瞬。本当に一瞬だった。庇う時間もないくらい。綱吉くんの声に彼女が振り向くと、私の目の前は煙。
「どうしよう!!10年バズーカが姉さんに…あーもうっ、どうすんだよランボ!!」
「ラ、ランボさんのせいじゃないもんねっ」
「ち、ちょっと待って下さい。10年バズーカに被弾したと言う事は、10年後の刹那さんがこっちに来る、と言う事ですよね…?」
「そうでしたぁあッ!!」
もくもくと上がる煙に目を向けるとうっすらと人影が見える。少しずつ晴れていく煙の中から出て来たのは、今とさほど変わらない10年後の…
「刹那、さん…?」
『え、?』
名前を呼べば座り込んで俯いている顔を上げて私を見る彼女。すると10年後の彼女は今にも泣きそうな顔をする。
『…ん、』
「?」
『風っ…』
泣きそうな顔は泣き顔へと変わり、彼女は私に抱き着いて来る。待って下さい、風?彼女はいつも風さん、と呼ぶはず。それに何故私を見て泣くのですか?10年経っても私は貴女を泣かせてしまっているのですか?
『会いたかった、』
「え?どう言う…、?」
抱き着いてきた彼女を抱き締め返そうと背中に腕を回すと、手に生温い嫌な感触。私はこの感触をよく知っている。血、だ。
「刹那さん、怪我をしているんですか?」
『…大丈夫』
「なにを言って…こんな怪我をさせて10年後の私はなにをしているんですか!?」
苛立っても仕方ない事は解っている。だがどうにも納得出来ない。
『風、大丈夫』
「大丈夫じゃありません。もし貴女が死んだりしたら、」
『私は死なない。ちゃんとお守りがあるから』
「お、守り…?」
彼女は頷くと首に掛けられたチェーンを胸元から引き上げる。そのチェーンの先に繋がれていたものは、私のよく知っているものだった。
「アルコバレーノの…私の、おしゃぶり…」
『私は風に託されたこの赤いおしゃぶりを白蘭から守らなきゃならない。だから死ねない』
「ど、う言う…」
ぼんっ、と音と共に再び目の前は煙に包まれる。5分経ったようだ。肝心な事はなに一つ聞けなかった。そして煙の中から出て来たのは見慣れた姿の彼女だった。
『風さん!!』
5分前の未来の彼女と同じように泣きながら刹那さんが抱き着いて来る。小さな体は震えていて、私は彼女を抱き締め返しながら尋ねた。
「10年後でなにか怖い思いでもしましたか?」
『……』
「刹那さん?」
『…風さん、』
「はい」
『風さんは私が守るから…だから、』
ずっと側にいて、と彼女が不安そうに私を見上げる。その言葉に不安よりも嬉しさが込み上げて来た私は、私が思っている以上に彼女を愛しているみたいだ。
「当たり前です。刹那さんは私が守りますから…だから刹那さんも私の側にいて下さい」
未だ見ぬ未来
(10年後の世界に貴方はいなかった)
『大丈夫、未来は変えられる。まずはこの時代の白蘭って奴を始末してそれから…』
「刹那さん、誰ですかそれは。5分間未来で浮気ですか?許しませんよそんなの」
(大体その白蘭って人物の顔を知っているんですか?)
(……そう言えば知らない…)
(他の男なんかより私を見て下さい)
(見てるよ?風さんしか見えません。て言うか白蘭が女だったらどうするの?)
(男ですよ。私の超直感がそう言っています)