風シリーズ
□もう一度
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ばたばたと階段を駆け降りる音が台所にいる私とママンの耳に響く。
「あら、刹那ったらようやく出てきたのね」
さすがは母親だ、と私は感心する。この足音は刹那で間違いない。帰ってきてから部屋に引き籠もってばかりいたから、今度は外に出て暴れるつもりかしら。けど、私には誰が刹那の犠牲になろうと関係ないわ。
「おい、ビアンキ」
「!、」
振り向いたら愛するリボーンがにやにやとしながら手招きしている。なにか面白い事がありそうね、と、リボーンに誘われるまま玄関へ行き外を見る。そこには抱き締め合う恋人達の姿。
「もう仲直り?」
「みてぇだな」
長い間無言のまま抱き締め合ってたと思えば、刹那を抱き締めたまま風が口を開く。
「刹那さん、」
すみません、風がそう言うと刹那も同じ事を言った。ごめんなさい、と。
「寂しかったんですよね、」
『…うん…』
「不安だったんですよね、」
『うん…』
「泣かせてしまってすみません」
『…うんっ、』
最初から刹那の寂しい気持ち、不安な気持ちには気付いていただろうに何故取り除いてあげなかったのかしら。そう言えばザンザスとの件でもムダに吠えていたわね。無くしてから事の重大さに気付くなんてバカな男。そしてこの男の言葉は率直だ。そうやって刹那の不安を取り除いてあげられていたならこんな事にならなかったはずなのに。最強の7人にも出来ない事があるのね。
「素直に言葉が出過ぎるのも時として考えものだな」
言わなくていい事まで言っちまうからな、とリボーンが言う。
『風さん、私ね…』
風さんが好き。刹那がそう言う。刹那もまた自分の気持ちには素直で言葉も素直に出るタイプ。似た者同士なのね、この二人。
『疑ったりしてごめんなさい』
「…疑われるような態度でしたから…」
刹那はバカなのかしら。どう考えたってこの男に浮気が出来る度胸はないわよ。刹那は解ってないのね、自分がどれだけ愛されているのか。自分で言ってたでしょ、今までの男達とは違うって。
「刹那さん、不安な時は言って下さい。寂しい時は言って下さい。世界の果てにいてもすぐに会い行って貴女を抱き締めますから、」
『……』
「刹那さん?」
『ヒバリの言った通りだ…』
「え、雲雀恭弥?」
刹那、あんた本物のバカだわ。仲直りしてる今まさにこの瞬間に他の男の名前を出すなんて本物のバカだわ。ほら見なさい。風の笑顔が引きつってるわよ。仲直りするのに嫉妬させてどうするのよ。
「刹那さん。私と雲雀恭弥、どちらが好きですか?」
この男も本物のバカだわ。なんで仕事と私とどっちが大事なのよみたいな事聞いてるのよ。
『聞く必要なんかないよ。この先風さん以外の男は好きにならないって決めてるんだから』
「…っ」
この男にしてみたら最高の殺し文句ね。さぁどうするの、好きな女にそこまで言わせておいて貴方はなにも言わないなんて事はないわよね?
「私も…刹那さん以外の女性は愛せません」
それを聞いた刹那は頬を赤く染めると嬉しそうに彼に抱き着いた。
『同じ気持ち、』
「そうですね、同じ気持ちです。では刹那さん、」
もう一度
(私だけの刹那さんになってくれませんか?)
勿論、風さんだけの刹那です。刹那はそう答えた。
「あの二人、別れてたの?」
「俺も今知ったぞ。まぁいいんじゃねぇか?元サヤに収まったみてぇだし…お、」
私とリボーンに気付いているはずの風は、私達に見せつけるように刹那にキスをした。殺してやろうか、とリボーンが銃を構えた時、二階の窓から男が飛び降りてきた。
(なに人前でキスしてんの?)
(出ましたね雲雀恭弥。邪魔しないで下さい)
(するよ。刹那を離せ)
(離す訳ないでしょう?刹那さんは私の恋人ですから)
(フラれたんでしょ?)
(残念。仲直りしました。刹那さんから電話で大好きと言われて来ない訳ないでしょう?)
(…刹那に電話をかけるように言ったの、僕なんだけど)
(たまにはいい仕事しますね)
(咬み殺す!!)