風シリーズ
□悩む、進路
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「…で?、」
今日は月に一度のアルコバレーノ定例会議。ここ最近議題に取り上げられるのは風と刹那の事ばかり。あの堅物の風がまさか恋愛をするなどとは、と最初は皆面白がってはいたが、なんだかんだとからかいつつもアルコバレーノ達は嬉しそうだ。そして常々刹那もこの会議に出席させようと企んではいたがその度、風に阻止されてきた。だがついに刹那をこの定例会議に召喚することに成功した。オレが刹那に直談判したら二つ返事で会議への出席を快諾してくれた。風は刹那が会議に出席するのが嫌だったらしく、不機嫌極まりない。
「で?何故刹那さんがアルコバレーノ定例会議にでなければならないのか私に解るように説明して頂きたいのですが」
オレはどちらかと言えば感情を剥き出しにして怒鳴るタイプだが、風は静かに怒る。この男が感情を剥き出しにして怒る所等見た事がない。普段温厚な人間が怒るもの程恐ろしい事はない。特にこの男は刹那の事となると惚気るか怒るかのどちらかで、割合で言えば前者の方が圧倒的に多い。
「刹那」
『ん?』
「風が怒鳴る事なんてあるのか?」
オレは刹那に尋ねてみた。風と一緒にいる時間が最も多いであろう刹那なら一度くらい怒鳴った所くらい見た事があるだろう。
『あるよ。ヒバリ相手にしょっちゅう怒鳴ってる』
「お前相手には…怒鳴る訳ない、か」
『ちょっと前に怒鳴られた事が、』
「なにッ!?」
意外だ。意外すぎる。この男も怒鳴ったりするのか。長い付き合いだが今までそんな所見た事ないぞ(二回目)
「刹那さん、余計な事は言わないように」
『はーい』
「それで?刹那さんまで呼ぶ理由は?」
「どうって事ねぇ。進路指導だコラ」
「そうですか、進路指…進路指導?」
そうだ。今回の議題は刹那の卒業後の進路についての話だ。ここに集うアルコバレーノ達は言わば刹那をスカウトする為に集まっているのだ。ムダな集まりだがな。
「刹那も高校三年。そろそろ卒業後の進路を決めなきゃならねぇワケだコラ」
「ふむ…確かにそうですね。大学へ行く気はないみたいですし、だとするとやはり就職、と言う訳ですよね」
お前は父兄かなにかか?刹那の進路をお前が真剣に考えてどうする。
「それでだ。アルコバレーノが独自に集めた刹那の成績表がここにある」
『プライバシーの侵害!!』
「まぁ成績は悪くねぇな。並のちょっと上だ」
「運動神経はムダにいいね」
「ついでに笑顔も並だもんな」
『風さん。リボーンを殺っておしまい』
「解りました」
本当に刹那には忠実だなお前は。
「落ち着けコラ!!そういう訳で刹那、コムスビンに来い!!」
「バカ言ってんじゃねぇ。刹那はツナファミリーに入るって決まってんだ」
「ふざけるな!!カルカッサファミリーに来るに決まってるだろ!!」
「甘いよ。刹那はヴァリアーがもらうよ」
「私の研究を手伝ってもらう」
「あら、ジッリョネロに来てもらうに決まってるじゃない」
各々好きなように言っているがどれもムダだ。何故なら刹那の進路は既に決まっているからだ。
「勿論、刹那さんの進路は私の奥さん、ですよね?」
『あ"っ…』
「え、何ですか。今気付いたみたいなその顔…」
『いや、あのね…私、卒業後はボンゴレ門外顧問に…』
「え?」
「そういう事だ。刹那はオレと同じボンゴレ門外顧問に来る事が決まっている」
『そうか、風さんのお嫁さんか…』
悩む、進路
(だが刹那の進む路だ。好きなのを選べばいい)
『風さんのお嫁さん…門外顧問…』
「迷うんですか!?迷わず私を選んで下さい!!」
『でも18で結婚って早くない?』
「早くないですよ。全然早くありません」
「刹那がヴァリアーに入ったらボスから特別ボーナスが出るんだ。来て貰わないと困るよ、僕が」
『ザンザスからヴァリアーのボスの座を奪うのも面白そうだね』
(…刹那さんは私のお嫁さん、ですよね?)
(は、はい…)
(風、脅すのやめなよ)