マフィアと忍者と
□赤いおしゃぶり
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「あ、ありがとうございました…!!」
店長と思わしきおじさんが震える手でお釣を渡すと深々と頭を下げた。ほんの数分の間にスーパーの中で私が雲雀恭弥の奥さん、私の腕に抱えられた赤ん坊が雲雀恭弥の息子…と言う噂が広まっていた。自分で招いた事とは言え何か嫌。重い溜め息を吐きながら赤ん坊を抱えて店を出る。だって親子だと思われてるんだから置いてく訳にもいかんでしょーよ。
「何だか異様な雰囲気でしたが」
『誰のせいだ誰の』
「お嬢さんのせいでしょう?」
『………つーか君名前は?』
もう何か言い返せない。でも強いて言うなら私達のせいだと言いたい。今更ながら赤ん坊に名前を聞いてみるとにっこりと笑って教えてくれた。可愛い…とか思ってないんだからッ!!
「風、です」
『ふーん、風ね…じゃあ風、何の用?』
私に用があるんじゃないの?と聞くとあっさりと答える。
「いいえ。別に用はありませんでしたよ」
『……………』
このクソガキマジで一発拳骨くれてやろうか…
「たまたま買い物に入ったあの店で貴女に会ったので声を掛けただけですよ。リボーンから貴女の話は聞いています、うちは刹那」
やっぱりリボーンの知り合いか。でも私の情報漏れ過ぎなんだけど。まぁいいけどさ、忍者としてこれってどうなのよ。
『知ってて声掛けるなら別の場所が良かったよ』
あのスーパーにはもう行けないわ。色んな意味でもう行けないわ。
「リボーンからは可愛らしいお嬢さんだと聞いていましたが…」
『何が言いたいのかな?』
「言葉の悪さを除けば話に聞いていた以上に可愛いですね」
『風、アイス食べる?買ってあげよっか!?』
オンナの子なら可愛いって言われて悪い気はしないでしょ。もうアイスでもお菓子でも何でも買ってあげちゃうよお姉さん。近くのコンビニでアイスを買って公園のベンチで風と並んでアイスを食べる。コンビニにいた人達や公園にいた人達が私と風を見るなり顔を青くしたけど……アイスを食べながら私は風に聞いてみた。
『風さ、リボーンの知り合いって事はあれなの?アンブレラの呪いとか言うやつで赤ん坊になっちゃった系?』
「バイオハザードですか。アルコバレーノです」
『そうそれ。アルコバレーノってやつなの?』
リボーンから少しだけ話は聞いてるから知ってる。呪いで赤ん坊になってしまった事くらいしか聞いてないけど。多分ね、いや絶対ね、風って赤ん坊になる前は恭弥と同じ顔してたと思う。
『リボーンは最強のヒットマンらしいけど風は?』
「武闘家です」
『武闘…体術か…』
私、体術は得意じゃないんだよな〜とぼやいたら風は笑った。
「人には誰にでも得意不得意があります。気にする事ではありません」
『いや、知ってるだろうけど私忍者だし、体術が苦手だと戦う時厳しいんだよね』
「では稽古でもつけてあげましょうか。報酬は私が元の体に戻った時に貴女を頂きます」
『謹んでお断りさせて頂きます』
土下座で懇願した。顔も同じなら性格まで恭弥と同じかこの野郎。そんな私を見て風はまた笑う。
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