マフィアと忍者と
□南国果実
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お昼の時間がやって来た。
チャイムが鳴ると同時に草壁にお茶を淹れる様に命令、そして僕は刹那からの愛妻弁当を食べるべく包みを外す。
どうしよう、桜澱粉でハートマークとかやられてたらどうしよう。そんなんやられたらもう帰って刹那と一つになるしかないよ。
変に期待しながら蓋を開けたら至って普通でがっかりしたとか言ったら、もう作ってくれなくなりそうだ。
でも器用なもので卵焼がヒヨコの形をしていたり、ウインナーがタコやカニや兎になっていたり、人参が花になっていたり……何かもう職人だよ、板前だよコレ。
普通なのにやたら可愛いよこの弁当。女の子みたいって言うか幼稚園児が喜びそうな弁当だよ。
しかも中に入った太巻もヒヨコだよ、どんだけ器用なのあの娘。
あぁ、でも僕の為に作ってくれたんだよね。愛を感じる。やっぱり今夜は一つになるしかないね。
「おやおや…随分と可愛らしいお弁当ですね」
「可愛い妻が僕の為に作ってくれたんだから当然だよ
…………
何で君がここにいるの?六道 骸」
「ふぁい?」
「しかも何ナチュラルに卵焼き食べてくれちゃってるの?ねぇ、何食べちゃってるの?」
急に現われたと思ったら何で僕より先に食べてるの?お前自分のあるんだろ?て言うか何でいるの?もう何かよく解らないけど一つだけ確かに言える事がある。弁当に手を出すな。
「僕と君の仲でしょう?顔パスですよ」
「どんな仲?あらぬ誤解を招くからやめて欲しいんだけど。しかも顔パスとか許可した覚えないし、ちょっと見張りの風紀委員咬み殺してくるよ」
「お弁当はしっかり持っていくんですね」
当たり前だろ。僕がいない間に全部食べられたらたまんないよ。
他の奴に食べられて一口も食べられなかったなんて言ったら刹那が泣くでしょ。
弁当は食べられなかったけど刹那が食べたいとか言ったら、お腹を空かせてる恭弥の為なら幾らでも私を捧げるわとかなればいいのに。
「エロオヤジですか君は」
「うるさいな。人の心の中を勝手に読むな。そんな事になる前に殺されるよ」
「……鼻血…拭いて下さい…」
背後から僕の肩をポンと叩き、哀れむ様な目をしてハンカチを差し出す六道。
今日三度目の出血。僕、鼻血の出しすぎで死ぬかもしれない。
「……随分可愛いハンカチだね……」
「僕の趣味ですよ」
くま柄の可愛いハンカチにはご丁寧に「ムクロ」と刺繍が入っている。
ハンカチの可愛いくまは僕の鼻血によって血塗れになっていった。
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