木洩れ日
□はじめまして
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木々を飛び移りながら移動する事数十分、前方に街らしきものが小さく見えると銀髪の忍は地へと降りる。
茫然とする二人は忍を見上げる、背丈からしてどうやら女らしい。
女は二人を仮面越しにしばらく見つめた後に口を開いた。
『怪我は…って、そっちの人はしているみたいね』
高めの、如何にも女性の声がそう言うと骸に顔を向ける。
骸は自身で応急処置として右目に巻き付けた布切れを手で覆う。
「これは先程の者達にやられた怪我ではありませんよ」
『あ、そうなの?』
「はい、ですが助かりました。この怪我で戦うのは少々厳しかったので…」
ありがとうございます、と骸はお礼を言った。
女は何も答えず溜め息を一つ吐く。
『何をしていたのかは知らないけど、この辺りは危険よ。あの辺り一帯に血の臭いが漂ってたわ。アナタ達一体何者?普通の人間じゃないみたいだけど…』
「何者って言うか君の方こそ何者?」
白蘭は女にそう聞き返す。
女から見れば自分達はさぞ怪しく見えるだろう。
だがそれはこちらも同じだった。
訳の解らない面で素顔を隠し、気配も感じさせずに二人の男を一瞬で葬り、その上大の大人の男を二人も引っ張りながら軽々と木々を渡っていた女の方が怪しい。
「白蘭、まずは助けて貰ったお礼が先ですよ」
「僕は助けてなんていった覚えはないよ」
骸が咎めるのも気にせず、白蘭は女は睨んだままだ。
その様子を見て骸は呆れた溜め息を吐く。
「すみません、この男少し頭が弱いので状況把握が出来ていないんですよ」
「まるで僕が頭悪いみたいな言い方やめてくれない?」
「事実でしょう?ここに来て確信しましたよ」
「うん、まぁ…別にいいけど…」
母親と子供の様なやり取りを見て、女は軽く吹き出した。
『ごめんなさい、確かに私の方が怪しいわね』
「あ、やっと気付いた?」
偉そうに言う白蘭の頭に骸は拳骨を落とす。
痛いと騒ぐ白蘭を見ながら女は楽しそうにクスクスと笑うと面に手を掛ける。
『私の名前は刹那、はたけ刹那よ』
ゆっくりと外された面の下の素顔に二人は驚いた。
長い銀髪に白い肌、少し眠そうな目をしているもののはっきりと整った顔立ち。
まさに今を盛りと咲き誇る花の様だと、後に白蘭は語っている。
「ほう…」
面の下にこれ程の美貌が潜んでいたとは、と骸は感嘆の声を漏らす。
「まさかこんな美人に助けられるとは…僕の運もまだ尽きてはいない様ですね」
『それはちょっと褒め過ぎ』
「本当の事ですよ。ねぇ白ら…白蘭?」
顔だけを白蘭へと向けた骸は、刹那を直視したまま固まる不審な白蘭に首を傾げた。
「どうかしましたか?」
骸がそう尋ねると白蘭は骸を突き飛ばし、刹那の両手をギュッと握り締める。
「ごめん…めっちゃ好みなんだけどどうすればいい?」
『そう言われても…』
真顔で尋ねて来る白蘭に刹那は困った様に笑う。
「ここはもしかしてアレ?恋に落ちなきゃいけない?つーか恋に落ちたいんだけど。僕、自分の存在理由が解ったよ」
『それは…良かったね…』
「気になる?僕の存在理由気になるよね?君に逢う為に産まれて来たんだよ」
「今すぐ堕ちなさい」
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