木洩れ日

□五代目火影
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「ダメに決まってるだろうがぁあっ!!」


火影の執務室から轟いたその怒声が里中を揺らした。アカデミーで授業中の教師や生徒は机の下に隠れ、里を歩いている忍達は驚いて立ち止まり、猿飛アスマはくわえていた煙草を落とした。怒声は門にいる二人、イズモとコテツにも聞こえた。


「あーあ…」

「だから元居た場所に戻してこいって言ったのに…」


二人は互いに顔を見合わせると溜め息を吐く。何故か殴られたあとが見えるのは上忍によるいじめだ。いじめかっこわるい。





「綱手様、落ち着いてっ…」


騒ぎの元である火影の執務室では、付き人であるシズネが青筋を浮かび上がらせた五代目火影・綱手を背後から押さえている。そもそもの原因である刹那は耳を塞ぎ、執務室から里を見下ろす。


『綱手様、里中の人達が何事かとこっちを見てますけど』

「誰のせいだ!!だれの!!」


浮き上がった青筋が切れそうなくらい、綱手は怒っていた。そして怒りの原因となった二人の男、骸と白蘭を睨み付けると再び怒鳴り始めた。


「大体お前が任務から帰ってきたと思ったら異世界からきた男を二人も拾ってきたのが原因だろ!!それもその男共の面倒を見るから里に置けだと!?カカシ!!お前は刹那にどんな教育をしてきたんだ!!」


ほらやっぱり怒られるのは俺だ、と、カカシは肩を落とす。


『いいじゃないですか、面倒は私がちゃんと見ますし、面倒見切れなくなったら捨ててきますから

「お前にはそいつ等が犬かなにかに見えてるのか?視力検査が必要だな。私が直々に検査してやる」

『一人は人間だけど、ほら。この犬、真っ白で綺麗じゃないですか。みっちり躾て立派な忍犬にしてみせますよ』

「僕、犬?ねぇ刹那チャン、僕は犬なの?」


傍らに正座させた白蘭の頭をもふもふと刹那が撫でると、白蘭はなんとなく満足そうな顔をする。それを痛い人でも見るかのような目で骸は見やると、綱手に向かって話を始める。


「僕達、行く宛がないんです。帰れる方法が見つかるまで、里に置いて頂けたら嬉しいのですが…」

「若くて綺麗なボスは優しいから置いてくれるよね。あ、おばあちゃんなんだっけ?」

「誰がババアだぁあっ!!」


扉を破壊しながら白蘭が飛んでいった。どうやら地雷を踏んだらしい。


『だからふっ飛ばされるって言ったのに…』

「彼には学習能力がないんですよ」


顔を引きつらせながら骸が言う。ミルフィオーレファミリーを率いる白蘭を、ただの拳一発で伸ばしてしまうとは…恐ろしい人だ、だから怖い人だって言ったでしょ、と、こそこそと話す骸と刹那。


「まぁまぁ、綱手様。面倒は刹那にちゃんと見させますし、妙な真似をしたら俺達兄妹が責任持って始末させてもらいますから…」

「カカシ。お前は年頃の妹が男二人と一緒に暮らすことを認めるのか?」

「…え?やだな綱手様…なにを言って…」

「お前が刹那の拾ってきた男達を里に置いてくれ、と私に頼むってことはそう言うことだろう?面倒は刹那が見る、ならば必然的にこの男達は刹那の家に住むことになる」

「刹那、今すぐ捨ててきなさい!お兄ちゃんは男と一緒に暮らすなんて認めません!!以上」

『異議あり!』

「異議は認められません」

『じゃあこうしよう。骸さんは私が面倒見るから、白蘭さんはお兄ちゃんが面倒見てよ』

「あーあー、わかった。もういい、許可する」


兄妹の面倒なやりとりが始まるのを見越して綱手が折れる。



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